『himitsu』音楽用ジャケットのデザイン録
2022年の8月、ユメノマの中島様からイラスト製作のご相談をいただき、お請けしました。改めて有難うございます。
ユメノマさんでのお仕事は3回目となるのですが、参加なさってる方々が凄すぎて、毎回吐血しそうな気持ちになるんですよね……。私そろそろ運を使い果たしてるんじゃないか?と思うくらい贅沢です。
私が過去に、ほかのクライアント様からご依頼いただいて作成した物は、
・音声作品用
・小説のPV(映像)用
・ロゴ
計3種類です。今回の音楽用ジャケットも役割は「表紙」部分。似てますが、同じ思考で描くわけにはいきません。
整頓しながら描いては進む
初めはボツ前提で、無意味なイラストを描く所からスタートしました。感覚の筆ならしみたいなものです。
市松模様が脳裏に浮かび、線を引いたらピンク色で塗り潰し。
アパート→マンション→小部屋→何かが住んでる→四角い部屋と連想してウサギのキャラクターを描き加え、ワンシーンを並べているみたいな感じにするのはどうだろうかと閃きました。
でも、それだけでは面白くない。遠くから見ると四角い飴玉(さくまドロップのよう)に映るのは?
何から始めよう?
誰の視点?
立体が良いのか?
何を表現したい?
遊びゴコロがあるジャケットも面白いのでは?
機能するジャケットって何だろう。
振り返れば、ヒントを探してる私の思考がそのままイラストに表れてました。
次に、仕事の進め方と方法についても考えます。
送ってくださった音楽を聴いたり、絵やイラスト、文章を見てから感性の海へ意識を潜らせ、書き起こし……描き起こしを行う。これはセラピストが使うグラウンディング、瞑想、透視をミックスした私ならではのスキルです。
感性の海で拾った原石は理論の名前が付いた研磨剤を使い、形にしていきます。
材料を増やしたいとき、必要であれば、既にある物から情報を書き出す「言葉出し」を使うことも。
しかし、今回お請けしたのはアルバムのジャケット。シングルバージョンは配信済み。そちらでは、ほかの方々がお描きになった素敵イラストが存在します。
参考にと、ユメノマさんがこれまでにリリースした曲のジャケットも見たら、メインが植物、動物、人、が、多いかなと思いました。
アート作品で、線の書き込み量が多め。色は黒、青、緑が多い印象でした。
次に、ライターの視点で考えてみます。
次は「王道が安心するのでは?」と浮かび、描き手の個性をPRした絵柄は除外。無個性なイラストを描いてみました。
※下記は、本来ならもっとちゃんとした物がいいラフをたくさん載せてます。そのまんまですみません……!!!
スイーツの写真をジャケットにしているアルバムは、検索するとまぁまぁ出ます。
問題があるとすれば、ケーキと灯り。『mugen』のシングル版と被ってしまう所です。あまり得策ではないかもと勝手に想像しました。
ちなみにユメノマさんの、別タイトルのジャケットを見比べていたら、A様とB様、とある生き物が被ってましたが、彼らは彼らで、私は私。何が悪いというわけではありません。
話は戻り。
横から見る、斜めの角度から見る。
デザインにも構図があるとわかり、兎に角、描き出しました。
次は……。キーワードをもとに、季節感をアピールするのはどうか?
スピッツは『渚』『楓』、B'zは『いつかのメリークリスマス』、globeは『DEPARTURES』など、その季節に合う曲をリリースしてます。
私の〆切は確か10月の頭。時期を考え、ハロウィンを連想したラフも描きました。
ラフにデフォルメが多いのは、私のイラストにおける強みとは何かを考えたからです。note内では「かえるのエルくん」がその代表。過去にマスコットキャラクターデザインの公募で入選した経験もあり、下手に新しい絵柄で挑まないほうがいいと思いました。
あと、ユメノマさんの作品内で被らない。
此方は↓メインを真ん中に置き、空白を大きめに。
はたまたロゴのような物にする?
ゲームのキャラクターみたいなイラストも考えました。親しみやすさ、無難さ、押さえたい部分です。
この曲を誰に教えたいのか?誰に聴いて欲しい?
アレンジ版や原曲をお作りになったミュージシャンさんたちにファンは居ると思います、確実に。
私はユメノマさんの、参加なさってる皆さんのファンを一人でも増やしたい。知らない人にも聴いて貰いたい、知って欲しいです。
曲を聴いて貰うため、ジャケットの役目とは何か?を考えました。メインは曲です。ジャケットは曲を聴いて貰うためのキッカケづくりであって、私の作品や絵柄が主役ではありません。
※某有名イラストレーターさんに失礼な話。
勘違いのないデザインにせねばと意識しました。
次は、過去に撮った写真のなかに使える素材はないか?noteに投稿した物(私の写真マガジン)から探しました。
しかし、です。早い段階で「駄目だ、ボツ」と思いました。写真から伝えたいことや機能が何も伝わってこない、表現したいことが見えなかったのです。素材を使ってもみましたが、曲のイメージと一致しませんでした。
下記の2点もそんな所です。
TSUTAYAとGEO(平惣)に足を運び、ジャケットを見て回りましたが、絵柄や塗りのクオリティレベルを1週間2週間で追い付こうとするのは無理ですし、流行りを真似できても、それなら別のイラストレーターさんにお願いしたほうが圧倒的に良いですよね。技術や知名度がより上の人は、いくらでも居ます。
たくさんの人にはできなくて、誰にでもできることをする。
新しいことを試すのは、いまではない。試すなら一部の細部。
デフォルメがやはり向いてると感じました。ごちゃっとさせてみた物が此方です。
縮小すると見え難いのですが、楽しい、仲良し、嬉しい、ポジティブ変換など、感情をテーマにしました。
しかし、また「違う」と感じて、デザインを学ばねばと振り出しへ。
デザインといえば、私が知るデザイナーさんはALOHA DESIGNの木ノ下さんが真っ先に浮かびます。木ノ下さんはセンスの塊ですから、参考にするなんてまず無理な話。そもそも経験値があまりにも違いすぎます。
TwitterのTLに流れてくる理想の写真、イラスト、眺めました。主に海外の人が投稿した物です。自作ファンタジー小説の想像を掻き立ててくれる写真はないか、コミカライズやゲーム化したときどなたに描いていただきたいか、普段からアンテナを張ってフォローしてましたので、急いで探すことにはまったくなりませんでした。
ですが、やはり此処でも……。参考にはなっても、見よう見まねで良いのか再び疑問が湧いてきました。可愛いや綺麗は存在するのにです。構図を真似できても所詮は上澄み。デザインを学んだことにはならないと感じました。
回帰しながら進む
私は原点に帰るとき、いつもゲームが先に来ます。企画、レビュー、画面デザイン、ターゲット設定、連想、プレゼン、映像の見せ方、心理学の応用など、たくさんのことを専門学生時代に学びました。
今回は任天堂のゲーム制作をしていたクリエイターさん、任天堂のゲームが好きなコンセプトアーティストさんのツイートをメインに拝読しよう!と、決意。
正直、
「今頃になって任天堂」
私自身が一番驚いてます。
学生だった当時、ゲーム業界での就職を考えたとき、任天堂には全然関心を持っていませんでした。作りたいのは『ペルソナ』『幻想水滸伝』でしたから、作風が異なるんですよね。現在、Twitterに登録して5年目でしたか、になりますが、ジャケット製作するときになって、初めて大きな関心を持ちました。人間わからないものです。
任天堂の良い所は、ターゲット層が広い所。ゲームオタクより、ゲーム以外にも興味をたくさん持ってる人が就職しやすいという話を聞いたことがあります。
キャラが小さくて可愛い、見て楽しい。そこはやはり任天堂が強い。マリオ、カービィ、ピクミン、ポケモン、長く愛されてます。デフォルメの雰囲気や基礎を学ぶなら、任天堂のゲームやデザインを勉強材料にして間違いないと思いました。
◆濱村さんのツイート
特に、頭のなかをコンパクトに整理したいとき、大変助かったです。
……「え?仕様書だよね?」と、思いますか?
◆屋久木さん
任天堂のゲームが好きなクリエイターさん。私は屋久木さんのイラストを見て、塗り方のレベルを少しでも上げねばと思うようになりました。
◆此処から先は、任天堂とは関係ありません。
精神面で刺激を受けた言葉は、
自戒せねばと感じたのが。
共感した言葉は、
年齢問わず、先を歩いてる人の言葉は参考になりますし、自信が持てなくなったり不安を感じたとき自分の考えてることや思いの答え合わせをするのにも助かります。
デザインの役割とは?
カマタさんのツイートに出会い、デザインとは何か?基本を学ぶのもありますが、自分で考えるチカラを身に付ける大切さがわかってためになりました!
励みにもなりました。
そんなこんなで気持ちがぐつぐつ煮えて、焦りつつ冷静に、基本から考え直すことができました。
色の効果、与える印象、考えるチカラを伸ばす。でも結局、途中で「描き続けても途方がない」と思い、此方のラフ↓に決めました。
正式に決定したのが此方↓のイラストです。
昨年リリースした『秘密』のパラレル版。水も太陽も、みんな登場しました。
気を付けたり意識したポイントは
・3
→黄金数の奇数。3人を線で結ぶと三角形になる。太陽を除いた水、地面、風の渦、3人を入れても三角形。
・左に居る女の子の横で、たんぽぽが飛んでいる。敢えて目立ちにくくした。
・動線。
・キャラクターの線を茶色にすることで、やわらかめの印象を与える。黒線はくっきりするが、キツくなるから。
・書き込み量を減らす。シンプルを目指した。
・ゲームのパッケージっぽい。
・字を入れても心配ない配色。
アートをしなかった、デザインをした。これが私の結論です。
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