思春期少年の一人称恋愛【短編】

画像1 【1日目】女性が目の前で長い髪の毛を後ろで束ねる姿、僕は好きだ。隠れていた耳が見える。色っぽい。胸の奥で青と赤のガスが点火するのを感じた。先生は僕の目を見ておかしそうにくすくすっと笑い、ナポリタンのように頬が赤いと言った。
画像2 【2日目】先生は夏が好きだと話す。左手でお箸を持った僕は「暑いでしょう?」と尋ねた。先生は煮浸しの梅を赤いお箸の先でほぐし、酸味を広げながら「薄着っていいと思わない?」と、今日は僕の目を見ず、静かに微笑んで、そう言った。「からかわないでくださいよ」と、僕はちょっとだけ怒った風に返す。先生は何も言わなかった。お互いにドキドキしているみたいな空気が流れる。
画像3 【3日目】食パンを買うか躊躇った。ふたりでこんなに食べれるわけがない。と思ったが、先生の言ったとおり美味しくて、翌日を待たずに透明の袋だけが残った。
画像4 【4日目】塾へ行く前に玄関先で「抱き締めさせてください」と告白したら、僕の世界は体温で広がった。勉強は捗らなかったが、休憩時間中に食べた菓子パンは美味しかった。
画像5 【5日目】今日の晩ごはんは僕が作った。鶏もも肉のほうが柔らかくて美味しいとわかっていたが、生憎、胸肉のほうが安い。負けた。それでも先生は喜んで食べてくれる。僕にとっては先生の笑顔が生き甲斐だ。
画像6 【8日目】ふたりで、初めてデートをした。

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