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JAXAの「小型月着陸実証機(SLIM)」、今後復旧の可能性 着陸時や月面のデータ取得は完了

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年1月22日、月面着陸に成功した「小型月着陸実証機(SLIM)」の状況について明らかにした。

 SLIMは1月20日、月面に着陸した直後、太陽電池の発電ができない問題が発生した。プロジェクト・チームによると、着陸後、電源をOFFにするまでの間にさまざまなデータの送信を完了できたという。また、今後太陽電池に太陽光が当たり、復旧できる可能性もあるとしている。

 SLIMは、月への高精度着陸技術と、軽量な月惑星探査機システムを実現する技術の実証を目指したミッションである。

 昨年9月7日に、H-IIAロケット47号機で種子島宇宙センターから打ち上げられ、今年1月20日0時20分、月面への着陸に成功した。

 しかし着陸後、なんらかの問題により、太陽電池の発電が確認できない状況に陥った。

 しばらくは内蔵されたバッテリーの充電を使って稼働していたものの、残量が12%になった時点で、運用チームはバッテリーを切り離す処置を取っ。これは、今後の復旧運用時に、過放電で機能喪失したバッテリーにより再起動が阻害される事態を避けるために、あらかじめ想定していた手順だった。

 これにより、20日の2時57分に、SLIMの電源はOFFとなった。

 プロジェクト・チームによると、電源をOFFにするまでの間に、月面への着陸降下中や月面で取得した技術データや画像データの地上への送信を完了することができたとし、現在、そのデータの詳細な解析を行っているという。

 さらに、テレメトリー・データによれば、SLIMの太陽電池は西を向いていることから、今後月面で太陽光が西から当たるようになれば、発電できるようになる可能性があるという。SLIMは太陽電池からの電力のみで動作することが可能なつくりになっており、プロジェクト・チームでは現在復旧へ向けて準備を進めているとしている。

 SLIMは機体の背中にあたる一面にのみ太陽電池を装備している。本来、SLIMは機首を北に、太陽電池をやや東の上空に向けた姿勢で着陸することになっており、また着陸した日は月の朝方ーー太陽光がやや東から差す時期だったため、問題なく発電できるはずだった。これは、機体のサイズや質量などに制約がある中で、発電量を最大化するための工夫でもあった。

 もし、SLIMがなんらかの理由で、太陽電池を西に向けた体勢で着陸していた場合、現時点では太陽光はまったく当たらないため、発電することはできない。しかし、今週中頃以降は、月の西側から太陽光が当たるようになるため、復旧のチャンスがある。

 プロジェクト・チームはまた、SLIMの状況や現段階での成果について、今週中に会見で発表する予定としている。

 プロジェクト・チームは「たくさんのデータが取得できたことを確認し、ほっとするとともにワクワクしはじめています」とし、また「着陸後の姿勢は計画どおりにはいきませんでしたが、たくさんの成果が出せるかもしれず、着陸に成功できたことを嬉しく思っています」と語っている。

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