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【速報】「小型月着陸実証機(SLIM)」、ピンポイント着陸の技術実証を達成

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年1月25日、20日に月面に着陸した「小型月着陸実証機(SLIM)」について、「主ミッションである100m精度のピンポイント着陸の技術実証は達成できた」と発表した。

 ただ、着陸後の姿勢が計画とは異なっており、太陽電池による発電ができない状態にある。今後、太陽光の角度が変われば、復旧できる見込みがあるという。

 搭載していた超小型月面探査ローヴァー「LEV-1」と「LEV-2(SORA-Q)」についても、おおむね技術実証に成功した。

SLIMに搭載されていた超小型月面探査ローヴァーの「LEV-2(SORA-Q)」が撮影したSLIM
(C) JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学

 小型月着陸実証機(SLIM)はJAXAが開発した月探査機で、2023年9月7日に打ち上げられた。誤差100mの高精度着陸技術と、軽量な月・惑星探査機システムの技術の実証を目的としている。

 着陸には2024年1月20日の未明に行われ、高度50mまで正常に降下した。SLIMの大きな特徴である、画像を使った自律的な位置の推定、航法誘導制御は順調に機能し、着陸目標地点からのずれは10m程度以下、推定3~4m程度であったいう。

 JAXAは「詳細データ評価は継続する必要があるものの、SLIMの主ミッションであった100m精度のピンポイント着陸の技術実証は達成できたものと考えられます」と評価している。

 しかし、その後着陸に使うメインエンジン2基のうち、1基に異常が発生した。原因については調査中としたうえで、メインエンジン自体ではない何らかの外的要因によるものである可能性が高いという。

 その結果、着陸地点がずれ、さらに横方向の速度や姿勢などの接地条件が仕様範囲を超えていたことから、接地後に大きな姿勢変動が生じ、想定と異なる、倒立したような姿勢で月面に落ち着くこととなった。

 これにより、SLIMの目標のひとつでもあった二段階着陸の技術実証はできなかった。

 また、太陽電池が西を向いていたことで、太陽光が当たらず、電力が発生できなかった。バッテリーにより探査機との通信は確立されていたため、あらかじめ用意していた異常時対応手順が順次実施された。その結果、着陸降下中に探査機上で記録された各種データ、画像データについて、所定のものはすべて取り出すことができたという。

 唯一の科学観測機器として搭載していたマルチバンド分光カメラも正常に動作し、月面の画像が送られた。

マルチバンド分光カメラのスキャン撮像で得られた257枚の画像を繋ぎ合わせた画像(モザイク画像)
(C) JAXA、立命館大学、会津大学

 今後、月面における夕方になれば、太陽電池に太陽光が入射し、電力発生が回復して探査機運用を再開できる可能性があるという。

 プロジェクト・チームでは、月面上で日没となる2月1日までにSLIMの運用が再開できると想定して、準備を行っているという。すでに、着陸後は毎日数時間程度、SLIMとの通信確立を試みているとした。

 仮に電力が回復し、通信が再度確立でき、運用可能となった場合には、速やかにマルチバンド分光カメラの観測運用を再開し、科学観測を実施する予定としている。

 また、SLIMが着陸する直前には、搭載していた超小型月面探査ローヴァー「LEV-1」と「LEV-2(SORA-Q)」を放出した。

 このうちLEV-1は、月面に展開されたあと、計画していた跳躍移動や地上局との直接通信(変形型月面ロボット(LEV-2)データ送信含む試験電波データ伝送)を実施した。ただ、月面での画像の取得は、現時点で確認できていないという。

 またLEV-2(SORA-Q)は、収納状態の球体から走行形態へ変形できたこと、正常に月面で展開・駆動したことが確認された。さらに、搭載していたカメラにより、SLIMの撮影にも成功した。

トップ画像クレジット:JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学






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