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400年続くお家、100年育む木、天空のミカン畑。青木農園のこと。

 「みかん畑みにいきましょう!400年の歴史ある土地で、ぜったい阪口さん好きだと思いますよ」と言われ、お伺いした青木農園さん。見事にはハマりました。オレンジ色のダイヤのロマンと手間暇を聞いてくれ。


清水の山の上で400年続くお家

 静岡市清水しみず区。海のイメージが強いけど、実は山側に広く、茶畑やみかん農園がたくさん点在する地域。清水港から新東名高速を越え、急坂を登り続けるとたどり着く場所に青木農園さんがあります。

歴史のつまった大きなお家です。

 お座敷にご案内いただき・・

 青木農園さんのポンカンで作られたストレートジュースをいただく。みかんの味が濃い・・!酸味みもあるけど、甘い、とても。おいしっ..!と思わずグラスを2度見する。

お座敷の奥にはさらっと書画が掛けられている。ここは本物だ・・

 そしてお言葉に甘えて、ご自宅も見せていただく。こんな歴史ある生きたお屋敷を訪問することがないので、いちいち感動してしまった。

もちろん蔵がある。蔵の軒先に洗濯物が掛けられていて、「そうだよねぇ!」と感動してしまった。人が暮らしているとはそういうことだ。
そしてもちろん大きなダルマもある。
ダルマが好きなので、見かけると勝手に人様の商売繁盛を祈ってしまう。

 少なくとも400年前から先祖がこの土地に住んでいた、とのことで、屋敷や家人の方々の話す中にたくさんの歴史が詰まっている。100年前のことですら、「ちょっと昔にみかん作り始めてさぁ・・」という感じなのかも。

みかん、百年

 5代前の園主・青木平右衛門さんが和歌山からリアカーで持ち帰ったみかんの苗木を清水の山に植えたのが150年前。日当たり良好・温暖な清水の土地でみかんづくりが始まった。

 屋敷の前にある柑橘類の貯蔵庫を見せてもらう。

みかんの貯蔵庫内。今はシーズンオフなのでみかんはない。
みかんのサイズをはかるやつだ・・!

 100年前はみかんの生産者が少なく、みかんはその希少性と美味しさから「オレンジ色のダイヤ」と呼ばれ、非常に高値で取引されていたそう。冬の収穫期には、山の上から片側35kg・総計70kgのみかんを天秤棒で担ぎ下ろしてくる。一日に何往復もするのだ。人手が足りないので、収穫を終えた東北の米農家が出稼ぎにやってきた。それだけ儲かっていた時代があるらしい。

貯蔵庫は2階もある。

 冬には収穫したみかんがここにぎっしり詰められる。熟成して甘味を増してから出荷。

 貯蔵庫を見せてもらったあと、山を登る。百年樹のみかんの木を見るために・・

今回、青木農園ツアーに誘ってくれて峯尾さん(左)。
冒頭の「ぜったい阪口さん~」のセリフは峯尾さんが言ってくれた。
青木農園の16代園主・青木文優さん(右)と峯尾さんは、高校時代からの友人。
ともに高校球児として切磋琢磨した仲らしい。

 百年樹はけっこう標高の高い場所に植わっている。

清水の海と町が見える。

「え?!ここ?!」想像より大きくて驚いた。全貌が見えない。

今回、4名でお邪魔した。青木さん、峯尾さん以外のメンバーはみんな想定外のみかんの木の姿に戸惑っている。
百年樹の"中"に入れてもらう。風がはいらず、とても静かで落ち着く。

よじ登って収穫するらしい。

果樹がこうなるのか・・

 大きい大きいと驚いているのはなぜかというと、現代果樹の多くは人の背丈ほどの高さまでしか伸ばさない。収穫しやすい高さにとどめているらしい。そして樹齢もだいたい30年を超えない。それ以上はもう実がならない、もしくは味が落ちるそう。ただしこの百年樹は品種改良前の原種に近いためか、生命力がつよく百年をこえてもまだまだ夏みかんを実らせます。「最強の老剣士」キャラが好きなので、このエピソードだけでときめいてしまう・・
 ただし酸味が強いから、とマーマレードにして販売しています。このマーマレードのレシピはおばあちゃんが考案されたそう・・。いい・・。

百年樹の全貌。ちょっとしたビルサイズだ・・。

当代の青木農園

 オレンジ色のダイヤと言われていた柑橘類たちも、バブルの少し前に大暴落。青木農園も柑橘類以外の作物をつくるようになりました。そういえば清水のタケノコって銀座でも食べられているぐらい有名なんだった。

 「みかん大暴落しちゃったから色々やんなきゃね・・」と、竹林を見せてもらいました。

タケノコをとるための竹林(少し前の大雨で一部崩れてしまった。)
だんだん畑(果樹園)の名残りあり。
タケノコ収穫用のモノトラック。茶畑の斜面によく設置されていて、近くで見たかったものなので嬉しい。ちなみに300kgまでは余裕で登坂するらしい。

 そして現在の主力の柑橘農園はこちら。

作業効率のよい平地に広がるミカン畑

 山を切り開いて作られた"みかんだいら"だ。

少し上から眺めると、こんな感じ。谷あいを埋めて、平地が作られている。
青木農園さんのエリアはもう少し横にズレた場所。

 みかんだいら(近くの日本だいらにかこつけて私が勝手に呼んでるだけです..)で、現在作っている品種を説明してもらいます。ポンカンや甘夏、青島みかん…

これは・・なんだっけ・・たぶん、「青島みかん」と聞いた気がする・・

 土地のわずかな勾配で水はけが変わり、果樹の成長に差がでるので、その辺の小さな変化を見ながら、剪定したり肥料あげたり摘果したり・・。効率化されていてもやっぱり相手は自然環境なんだな、と当たり前の事実を体感させてもらう。

下草を綺麗に刈っているので、絨毯のようなクローバだけが残っている。下草処理しないと、虫や病気がでやすくなる。こういう細やかな手入れによって農薬の使用量も抑えられるんだな・・。

山頂で獣との闘いを垣間見る

 みかん平でスルガ甘夏を試食させてもらったあと、さらに標高を上げます。

清水の町が遠い。

 ほぼ山頂の畑では、茶畑をレモンに置き換え中。

「苗木もいいやつ選ばないと」と青木さん。
枯れかかった苗木を押し付けられそうになることもあるらしい。
レモンの花
レモン。はじめっから長細いんだな..お尻側はこのあと膨らんでくるのでしょう。
説明してくれる最中も、気になった葉っぱをチェックしたり、摘果したり。
ツマグロヒョウモンのオスかな。レモンは食草じゃないので、たぶん遊びにきただけ。
隣のさらに若い苗木はまだ覆いが掛けられています。

 政令市・静岡市の山中にも、シカはたくさん出る。シカよけにカバーをつけてないと、すぐに美味しい若葉を食べつくされてしまいます。ここまでの道のりでみかけたよその畑には、すべての葉っぱが食い尽くされてつまようじみたいになってる苗木がいくつもありました。
 柑橘類農家にとってさらに強敵なのが、イノシシ。1頭いたら年間で数トン分のみかんを食べてしまう。トラック数杯分なので、とんでもない量です。
 最近耳にする話題ですがほんとにここ数年、シカもイノシシも増えてきてるとのこと。町から遠い場所ほど耕作放棄地が増えていて、誰も手入れしない捨てられた農地には下草が茂る。獣にとっては身を隠せて果物が実った居心地のよい場所になり、山からでて廃農地に獣が住み着いてしまってるらしい。そこから近くの農地に遠征してくるので、たまったもんじゃない、と・・。
 手間暇かけてる様子を実地で垣間見た後に聞く獣害の話しは、文字面で知ったかしていた自分の心にぐさりと刺さりました。

「安定して美味しいみかんを作らなければ」

 たくさん広い農地を見せてもらった後、例の百年樹のマーマレードまでいただいてしまった。とても嬉しい。ここまでが、青木農園ツアーの第一幕。

苦味と甘みのバランスが最高。色もきれいなのはなんでだろう。

 
 そして後日、第二幕がありました。峯尾さんと青木農園さんのセミナー。

  事業承継をしてまだ数年。「いつでも美味しいみかんを安定して作れるようにならなければ」「もし自分の代になって、みかんが美味しくなくなったね、と言われたらどうしよう」と、青木さん。峯尾さんに相談して、栽培記録をとるアプリを二人三脚で作り上げていました。
 めちゃくちゃいいなぁ、と思ったのは、ほぼノンコーディング、既存の自分たちがよく知るサービスを組み合わせて、デジタルで圃場管理できる仕組みを作っていること。DIYのようなぬくもりあるチャレンジ。同じように模索している人間にとっては生々しく参考になる情報であり、少しITが得意な人達にとっては思わず自分のできそうなことを探して手伝いたくなる内容でした。質疑応答がすごくもりあがってました。
(セミナーの詳しい内容はセミナー参加者だけの特権ということで・・。きっと別の機会にも発表されるとおもいます。)

#推したい会社

 そもそも初対面の人間を農園に入れてくれる時点でとてもオープンな雰囲気だと察せられるのですが、農園やお家を案内いただいているときにお母様やお父様、従業員さんにもお会いしたけど、やはりみんな明るく気さくで素敵な方々でした。
 こうやってファンやサポーターが増えていくのか~と思いつつ、私もこの経験を忘れたくなくて、noteをごりごりと書いてしまいました。

 静岡、ほんと色んな場所や色んな人がいる。住めば住むほどにおもしろい土地です。

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今回、お世話になった青木農園さん

 青木農園さんのinstagram みかんや農園の写真だけじゃなくて、作業の解説がはいってて読み応えあって面白いです。

※追記
静岡市のふるさと納税返礼品に、青木農園さんのコンポートあるよ、と教えてもらいました。市外の人はぜひこれでお試しを…わたしは市民なのでたのめないんだけども…

※追記2(2024/1/7)
12月上旬に、青木農園さんのみかん狩りに参加してきました。衝撃的な美味しさです。実家へのお年賀に、追加発注もしてしまいました。みかん狩りのことを、友人と二人で運営している冊子 #ニューノーマルシズオカ 12月号に書いたので、ぜひご覧ください。P33です。


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