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開業までの経緯⑤(物件探しなど) 

 開業のインタビューを読むと、物件探しが一番大変だったという話をよく目にしますが、Centerもご多分に漏れず物件探しには苦労しました。スペース+宿泊という建付けは決まっていたので、出来れば2階建て以上は欲しいし、床面積も広い方がいい。ということで、2019年頃から徐々に物件を探し始め、最終的に今のCenterの物件に出会ったのは2021年と、足掛け2年の道のりをご紹介します。


①インターネットで探す

 2019年当時は東京在住だったため、なかなか頻繁には栃木に足を運べず、インターネットを主に物件探しをしていました。情報サイトを常にチェックし、希望に合いそうな物件が出てきたらメールが届くサービスにも登録。気になった物件はいくつかありましたが、今になって振り返ると、物件というのは早い者勝ちの世界なので、そもそも良い物件は情報サイトには載らないし、情報サイトにいつまでも掲載されている物件は何らかの事情がある(=あまり売れない)物件が多いようでした。そんなことはつゆ知らず、情報サイトをハシゴしてはしょんぼりしていました。この時点ではまだ候補地は宇都宮。

②地元の不動産屋さんを訪ねる

 やはりインターネットでは埒が明かないということで、折を見て地元の不動産屋さんに足を運んでは直談判。大手から地元密着まで4-5件ほどは回ったでしょうか。条件に合う物件が出てきたら、メールや電話でお知らせしてもらっていましたが、なかなかピンとくる物件が出てこない。条件としては近からず遠からずなんだけど、思いっきり住宅街だったり、間取りがいまいちだったり、予算に見合わなかったり。断り続けているうちに、不動産屋さんにも申し訳なくなってきて、そのうち先方からの紹介も減り、段々と連絡も無くなっていきました。

③視点を変えてみる

 ①②を2年近く続けても候補が見つからず、宇都宮での物件探しが絶望的になってきたのと、子供の進学時期と補助金申請の都合で焦りを感じ始め、思い切って検索範囲を広げてみることにしました。まずはお隣の鹿沼市と栃木市でも見てみようかなと、情報サイトで検索してみると…「ん?もしかして、予算めちゃくちゃ下がるのでは??」。宇都宮との相場の差にびっくりしつつ、一気に物件探しに希望の光が差してきましたが、なにせ鹿沼市も栃木市も未訪問。どんな街かもよく分からなかったので、とりあえず行ってみようということでまずは目星をつけた物件を見に、初めて鹿沼に足を運んだのは2021年4月のこと。余談ですが、鹿沼がダメなら次は栃木市の嘉右衛門町の物件を見に行こうとしていました。

④鹿沼への初訪問

 初めて降り立った鹿沼はなんだか時間の流れがゆっくりで、高い建物が無く、宇都宮とも雰囲気がガラリと異なりとても新鮮に感じました。駅から歩いてみると、古い建物や商店が多く残っているのもポイントが高い。どうやら街を盛り上げようとしている先輩方もいるようだし、つい先日鹿沼のゲストハウスが拡張工事のため閉店したらしい。あとそういえば、よくライブをやっている本屋さんが鹿沼にあったような?と、栃木の知り合いに興文堂(※高橋朝さんというミュージシャンが運営していた伝説的書店で、3階がライブ会場となっていた。2020年12月に閉業。ジムオルークや坂田明、クリスチャン・コビなども出演)を紹介してもらったのも、今振り返ると大きな決め手のひとつだったと思います。興文堂の紹介が残っていたのでリンクを貼っておきます。

興文堂の3階「さんえふ」の様子(2021年4月)

⑤建築設計室わたなべとの奇跡の出会い

 そんなこんなで鹿沼に惹かれつつあった最中、当時住んでいた練馬にある店舗兼住居アパート『欅の音terrace』(本当に住民の皆さんには良くしていただきました。ナリワイというコンセプトも面白い!)に鹿沼の建築士が視察に来たという情報を偶然にも知人のFacebookで見かけました。これはもうコンタクトしてみるしかない!ということで、思い切ってメッセージを送信した相手が建築設計室わたなべの渡邉さんでした。鹿沼のまちづくりにも尽力されている渡邉さんは、突然のメッセージにも快く対応してくださり、鹿沼の候補物件を一緒に見に行きがてら、鹿沼の街を案内してくれることになりました。

たくさん遊んでもらった『はと工房。』(欅の音terrace102)さんの名物クリームソーダ

⑥街を歩いてみる

 結局、最初に見に行った候補物件はあまりにボロボロ過ぎて、敢えなく見送りとなりましたが、すっかり鹿沼を気に入った私たちは鹿沼に焦点を絞って物件探しをすることにしました。コロナ禍ということもあり頻繁には訪問が難しかったのですが、これは不要不急ではなく緊急必須の移動だということで、隙を見ては東京から鹿沼を訪れとにかく街を歩きました。並行して市役所にも相談しつつ、街の不動産屋さんや情報サイト、空き屋バンクもひたすらチェック。
 当時はコロナ禍で県外の一時保育利用はNGだったため、ベビーカーを押し幼児の手を引きながら、旧市街地を歩き回り、売物件があっては内見し、不動産の看板を見たら問い合わせ、空いてそうな物件があったら写真を撮って市役所の空き家対策係に相談。しかしながら、空き家に見えてもなんらかの事情で手放していない物件も多く、物件探しは迷宮入りしていきました

⑦以前見た物件を再考

 思いつく手は尽くし、もうどうすればいいのか…ということで、今までチェックしてきた物件を総ざらい。そこで、鹿沼まちあるきの際に渡邊さんに紹介してもらったものの、何となくここは無理かなと思ってスルーしていた物件について、あらためて考え直してみることにしました。「1Fはガレージだし、さすがにちょっと改装は無理だよな、デカすぎるし。でもなんか窓がカッコ良くて気になるよね」と話していたのが、実は現在のCenterの建物だったのです。灯台下暗しというかなんというか。

 ここぞという物件に出会った時は「ここだ!ここしかない!」みたいなビビビ感があるんだと思っていましたが、正直なところ、私は全然ピンと来ていなかったのでした。ただ、なんとなく良いな~とは感じていて、でもガレージだしなあ…ということで思考をシャットダウンしていた訳ですが、話し合いを重ねるうちに、もしかしたらガレージ感を活かしたら面白い空間が出来るのでは?と前向きに捉えるようになり、段々と「なんかもうここしかないんじゃないの!」と意気投合し、思い切って不動産屋さんに問い合わせすることになりました。以降、不動産屋さんとの交渉や契約などドラマチックなあれこれがありましたが、このあたりは軽く触れるに留めておきます。

 なんだか壮大なストーリーとなりましたが、本当に紆余曲折があったと思います。でもきっと店の数だけストーリーがあるに違いない。そして、もし今まさに店舗物件を探されている方がいらっしゃるようでしたら、「大丈夫、諦めなければそのうち決める(決まる)ことになりますよ」と声を掛けたい。
 ようやく物件決定までたどり着いたので、次回は改装の話など出来ればと思っています。続く。

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