底辺Pの初音ミク #2 〜アングラカタログ編〜

まず、当時のニコ動の話をしよう。

かつてのニコ動には、今のようなトップページがなく、開けば24時間集計の総合ランキングがまず表示される作りになっていた。
ニコ動内でボーカロイドブームが盛り上がるにつれ、総合ランキングにも少しずつボーカロイドの楽曲が見られるようになってきた。
ニコ動の一般ユーザーは基本的に総合ランキングしか見ないので、総合ランキングに載る曲と載らない曲では、再生数やマイリスト数において大きな差が開くようになっていた。

山が高くなれば、深海はさらに深くなる。

ボカロPとして活動を始めたものの、再生数はせいぜい数百止まり、マイリス数も二桁行けば良い方というようなP達が大量に発生し始めた時期でもある。
その当時、「聴き専」というボカロ曲ジャンキー達がおり、ランキングに飽き足らず、毎日のようにボーカロイドタグを検索してはそのような埋もれP達の楽曲を紹介していたが、それでも深海のボカロP達がランキングに載るようなことは夢のまた夢であった。

そういった深海生物達に光を当てる探査艇が、しんかい6500ならぬ「VOCALOID・アンダーグラウンド・カタログ」(通称: アングラカタログ)という一連の動画であった。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm2770654

アングラカタログPart1は、再生数1万以下のボカロPを紹介することをコンセプトに、2008年3月に投稿された動画である。
投稿したのは「アドメニ母ゆーこナリキリん」という謎のユーザーだった。

後にその謎のユーザーはPart1のアングラカタログ内で紹介された「ヒッキーP」自身であることが明かされ、ある種の自作自演であることが分かったりしたが、しかしこの動画の影響力は深海に住う魑魅魍魎達には非常に大きいものであった。
さらにはPart1の動画内で「誰か第二弾も作ってくださいw」との提示がなされたことで、別のユーザーによりPart2以降が投稿される運びとなった。
(今見返すとPart1で紹介された面々はアングラボカロ界の大御所とでも呼べる方々ばかりである。前回エッセイで取り上げた「こんぺいとうP」もPart1で紹介された)

その後もアングラカタログは投稿者を変えながら、2017年投稿のPart38まで続いていたようである。

アングラカタログに取り上げられることは、ランキングなど望むべくもない深海のボカロP達にとっての希望であった。
そうして、深海に蠢く怪生物であった自分にも、アングラカタログで紹介される時が来た。

それがアングラカタログのPart9だ。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm4652168

私も当時は深海生物達を探査する一人の聴き専(まあ作ってもいるが・・・)であったので、当然アングラカタログの投稿は毎度追っており、紹介された時はとても嬉しかった。
Part9の投稿者は初代投稿者の「アドメニ母ゆーこナリキリん」つまり、ヒッキーPである。

そんなわけで、彼にはとても感謝している。
初めてリアルでお会いしたボカロPも彼だったのではないかと思う。

アンカタに取り上げられたおかげで、同じようにアンカタに取り上げられたボカロPの皆さんとも仲良くしてもらえる機会が増えた。
この時期はとても楽しかった。社会人になってから、社内の人間以外との付き合いがめっきり絶えた自分にとっては、もしかすると二度目の青春のようなものだったかもしれない。

今でもこの時期に作った友人達と時折飲み会のようなことをすることがある。
もし、そういった出会いがなかったとしたら、私が今でも音楽に関わることをやっているかどうかは怪しいところである。

特に親しかったのは、アンカタPart2投稿者の「山田水穂」(sansuiP)率いるサークル、「雑音部」の部員達だ。
後に私自身も、雑音部の部員として楽曲提供を行うことになるのであるが、そこらへんの話はまた気が向いた時にしたい。

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本日の怪文書でしたー。

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