せんとれ

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最近の記事

機材おじさんとベランダ菜園

ベランダ菜園を初めて一年が経過した。 街並みにあるアパートなどを眺めていると、ベランダに設置したプランターでいろんな植物を育てている人がいる。 だいたい観葉植物であることが多いが、中には野菜を育てている人もいる。 私もその一人で、現在はベランダでミニトマトやらネギやら、イチゴやらを育てている。 そもそもなぜ機材おじさんが野菜を育てることになったのか? それには深い理由がある。 深い深い理由が。 すなわち、お金がないからである。 機材おじさんなどをやっていると、貯金

    • 底辺Pの初音ミク #2 〜アングラカタログ編〜

      まず、当時のニコ動の話をしよう。 かつてのニコ動には、今のようなトップページがなく、開けば24時間集計の総合ランキングがまず表示される作りになっていた。 ニコ動内でボーカロイドブームが盛り上がるにつれ、総合ランキングにも少しずつボーカロイドの楽曲が見られるようになってきた。 ニコ動の一般ユーザーは基本的に総合ランキングしか見ないので、総合ランキングに載る曲と載らない曲では、再生数やマイリスト数において大きな差が開くようになっていた。 山が高くなれば、深海はさらに深くなる。

      • 機材おじさん密室事件

        神瀬三蔵(かんぜさんぞう)は絶体絶命の状況にいた。 彼は有名なヴィンテージシンセサイザーコレクターである。 今、彼は自宅の地下に建築したスタジオの中、高価なシンセに囲まれながら呆然と立ち尽くしていた。 その中でも一際目立つのは壁一面を覆い尽くすMueg(ミューグ)のモジュラーシンセサイザーのシステムである。 この価格だけでも1000万円は下らないであろう。 スタジオの出入口は分厚い防音扉で閉じられている。 レコーディングスタジオなどで見かけるような鉄製の頑丈な扉である。

        • 底辺Pの初音ミク #1

          かつてわたしはボカロP(ボーカロイド・プロデューサー)であった。 ボカロPといっても、中高生の間で爆発的に流行ったり、カラオケでオタクっぽい子たちがよく歌っているようなボーカロイドの曲を作るPではない。 そう言った上澄ではなくて、わたしはほとんど聴かれることのないような曲ばかり作っている、深海に潜むボカロPであった。 当時、そういうボカロPはたくさんいた(今でもいるだろうが)。 彼らは自分のことを「底辺P」と自嘲していたものだった。 ともあれ、始まりから話そう。 ボ

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          機材おじさんと野草食

          野食ハンターをご存知だろうか? 「野食ハンマープライス」というブログや、「野食ハンター茸本朗ch」というYouTubeをやられている茸本朗氏のことである。 氏は長年にわたり、野で採れる野草や釣りで外道扱いされる魚達、あるいは亀や蛇などの爬虫類やバッタや芋虫などの昆虫類に至るまで、実際に食べてそのおいしさ、あるいはときにはまずさや危険性まで体当たりで伝えておられる、偉大な方である。 氏の活動の一部を思い出せるだけ書いてみると: 人間には消化できない脂肪を含む魚(バラムツ

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          モジュラー演奏部たきおん! (通称: もえぶた)

          *この物語はフィクションです。 *既存の実在・非実在の人物とは無関係ですので悪しからず。 「にゃっはろー、わたし、社梅(やしろうめ)!」 「百舌鳥螺(もずら)高校2年生で、いまはモジュラー演奏部の部長をやってます!」 「ここにあるモジュラーシンセサイザーを使って演奏するのがわたしの役目!」 寂寥とした部室に、音量抑え気味の独り言が反響した。 百舌鳥螺高校モジュラー演奏部はかつては全国大会ベスト8まで行った歴史ある部である。 しかしいまやその面影はなく、部員は社梅ただ一

          モジュラー演奏部たきおん! (通称: もえぶた)

          機材おじさんの異世界転生

          そんなわけで、異世界なのであった。 おそらくトラックに轢かれたかなんかしたのであろうと思うが、そこらへんの記憶は曖昧だ。 まあそこらへんはなんでも良い。 ここはよくあるテンプレ的な中世ファンタジーの世界のようだった。 それはまあ良かろう。 問題は、ここではマシンライブができないと言うことだ。 マシンライブとは主に電子楽器を用いた音楽演奏のライブのことである。 しかし、残念ながらこの世界には電子機器どころか、電気すら発明されていないようだ。 しばらく調べたところ、どう

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          機材おじさん vs AI

          みなさんやってますか、AI? 最近は書店などに行っても、やれ ChatGPT やら Copilot やら、LLM(Large Language Model)型AIの情報が氾濫しまくって、川沿いの住人は床下浸水で大変になっている頃合いかと存じます。 じゃあお前はどうなん、とういうと、川からちょっと離れた場所に住んで、たまに川のせせらぎを感じに散歩に行く程度の間柄であります。 現状のLLM型AIが使えないかと言うと、そんなことはなくて、全然使えると思います。 たとえば、自

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          理想の機材とは

          なぜ人は機材を買うのか。 それは頭の中にある理想の状態に近づけるためである。 では、理想の状態が得られれば、機材を買う必要はなくなるのか? 観測した限りでは、そのような状態になっている人はいない。 新製品が発表されれば、盛り上がるだけ盛り上がって、同好の士と語り合ったり、楽器屋さんに試奏しに行ったり、魔が刺して買ってしまうことがあるだろう。 しかし、少し使ってみると、その機材はあなたの思っている想定とは異なる挙動をする。 それは当然のことで、そもそもその機材を設計したの

          理想の機材とは