就活女子にとって「いい会社」とは。
3月、私は学生を卒業する。
思えば、今年は「学生さん」と呼ばれ続けた一年だった。
そんななか、私を「人間」として扱ってくれた企業から、社会人の一歩を踏み出すことに決めた。
○就活は恋愛、説明会は婚活パーティ
2015年、3月1日。
その日からわたしは「就活女子」となり、世の中のすべての企業が「貴社」になった。
まるで3分おきに席替えして自己紹介する婚活パーティのように慌ただしく、様々な「貴社」に会いに行った。
中にはじっくりお見合いやデートをしてくれる物好きな「貴社」がいて、かと思えばバッサリ振られてしまうこともあった。これは本物の恋愛と同じだ。
大学の女友達との話題はいつしか就活の話ばかりになった。
お互いに探り合い、言える範囲で近況や経験談などを代わりばんこに話すことも増えた。これも恋愛と同じである。
そこでよく話題にのぼるのが、「いい会社って何?」ということである。
いい会社。
なんと甘美で、不明瞭な言葉だろうか。
わたしはこれを、「理想の恋人」と同じようなものだと考えている。
誰もがそれを追い求めるが、それが何か答えられる人は少ない。
さらに、わたしにとっていい会社は、
あなたにとっていい会社とは限らない。このことが、より事態を複雑にしているのだろう。
それを踏まえたうえで、
就活を終えた女学生として、
いまのわたしにとっての「いい会社」を考えてみることにする。
○「女性」と「男性」と「人間」
女性が就活することが普通の世の中になって、どれくらい経つのだろうか。
「不慣れなもので…」と言える時期はとうに過ぎているはずなのに、
まだ女性をもてあます企業がいることを
就活を通してはじめて知った。
私の友人は、とある企業の最終面接のときにこう質問されたという。
「仕事と結婚、どちらを取りますか」
嘘だろう、と思った。
付き合って一週間の彼女から「私と仕事どっちが大事なの!」と詰め寄られるくらいの愚問だ。
ただ、その友人は、「仕事です」と答えるほかなかった。
私が某企業の説明会に行ったとき、1人の女子就活生が育休産休制度についての質問をした。
説明会ではよく見る光景だ。
すると、人事担当の人が一通り制度の説明をしたあと、こう付け加えた。
「ま、うちの会社は女性だからといって特別扱いはしませんけどね。
男性とまったく同じように働いてもらいますよ。」
彼の声からは、
明らかな軽蔑が感じられた。
その言葉の裏側にある、
「女だからって特別扱いしてもらえると思うなよ」
という気持ちが、
はっきり見えてしまっていた。
そのあと、わたしはとうとう、
その会社へエントリーシートを送る気になれなかった。
わたしは、「女性」として特別扱いをしてほしいのではない。
「男性」と同じになりたいわけでもない。
ただ、女という性をもつ1人の「人間」として、仕事に関わっていきたいだけなのだ。
○ やっぱり、会社と社員は…
そういえば、わたしが就職活動をしていくなかで「いい会社だなぁ」と思った企業は、
わたし自身を見てくれていた。
「女性」というフィルター越しでなく、
「男性」と比較するでもなく、
「人間」としてのわたしを知ろうとしてくれた。
履歴書のなかのわたしではなく、
目の前にいるわたしの目を見て、じっくりと話を聞いてくれた。
だからわたしも、できるだけ素直な気持ちを伝えることができた。
こういった会社は、
きっと普段から社員に対してもかくあるのだろう。
社員を見つめ、良いところも悪いところも知ったうえで、
個人の能力を最大限生かそうとする。
当たり前のことだが、
これが出来ている企業は少ない。
そしてそういった企業で働く人は、
決まって笑顔である。
卵が先か、鶏が先か。
さて。
これがわたしの思う「いい会社」…と締めようと思ったとき、
気づいたことがある。
これだって恋愛に、
「理想の恋人」に求めることと同じではないか、と。
そうだとしたら、わたしの婚活は
最高のハッピーエンドで、ハッピースタートだ。
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