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世界へ飛び出す人へ、たったひとつ。

今、世界は混乱の最中にあるが、
それでも旅をしたいと世界へ飛び出す人はいくらでもいるだろう。

私は、自分ですべての責任を負う覚悟があるのなら、それを否定しようとは思わない。
むしろ、こんな状況でなければ喜んで応援するくらいだ。

でも、そんな人たちへ、
ひとつだけ知っておいてほしいことがある。

それは、あなたが「日本人」だということ。

愛国心を持てとか、
文化の違いに気づけとか、
そういった話ではない。

あなたが日本語を話し、
日本人の顔を持っていることを
忘れないでいてほしいのだ。

去年の今頃、私は南米を一人旅した。
バックパックを背負い、4つの国を、2ヶ月かけてまわった。

大学でスペイン語を専攻しているので、言葉に不自由することはなかった。
道中で地元の人々と話すことにも慣れ、生意気にも、ほかの観光客よりは現地に馴染んでいるつもりでいた。
でもそれは、大きな勘違いだった。

ある日、チリ国内を高速バスで移動中、途中で寄ったバスターミナルのカフェで店員と話していた。
すると、1人の男性がこちらへ話しかけてきた。
私に何かを訴えかけていたのだが、訛りと滑舌がひどく聞き取れない。
諦めてどこかへ行く彼の背中を見ながら申し訳ないことをしたと思っていると、カフェの店員からこう言われた。

「あなた、誘拐されかけていたわよ」と。

ペルーのクスコで働く大学の先輩に会いに行ったとき。
2人で食事に行こうと通りに出ると、観光客向けのマッサージ店の店員がこちらへチラシを2枚差し出した。
先輩は慣れた様子でその客引きをかわしながら、苦笑いした。

「もう1年もここに住んでいるのに、毎日声をかけられるの」

たった2ヶ月で何がわかるのか。
そう思われるのももっともである。

でも、たった2ヶ月でさえ、
痛いくらい自覚させられたのだ。

私が「日本人」だということを。

日本人の顔を持ち、
日本語を話し、
そこに住む彼らとは、違うことを。

それは、
通りすがりに顔をジロジロ見られたり、
政治的批判の的になりやすかったり、
犯罪のターゲットにされやすかったり、
たとえ長く住んでも"よそ者"扱いをされたり、
いろんな形で現れる。

彼らの多くは、「日本人」というフィルター越しにしかあなたを認識できない。
そして、それを取り除くには
膨大な時間と努力が必要になる。

だからどうか、覚えていてほしい。

どんなに気の合う仲間ができようと、
誰かから親切にされようと、
その地での生活に慣れていようとも、
彼らにとってあなたは外人だ。

そして、外人のあなたを
犯罪の標的にしたり、軽蔑する人は
必ずいるということを。
それは誰のせいでもなく、仕方のないことだということを。

その意識を持つだけでも、
あなたの世界の見え方は変わるだろう。

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