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「シノアリス」というゲームを語る

どうも、死に急ぐ生命の果実です。

今回はいつもの #ソシャゲの話をしよう 。 とは趣向を変えて。
いつもはソシャゲの運営やシステムについて掘り下げて、「こうあるべき」という話を主にしているのですが。
今回は普段遊んでいるタイトルについて、サービス終了の報が届いたので、思い出をしたためようと筆を取った次第です。

今回の題材は、株式会社ポケラボ・株式会社スクウェア・エニックスからリリースされている「シノアリス」というタイトルを取り上げようと思います。

ざっくり以下のような内容でお話していきたいと思います。


シノアリスの概要

シノアリス公式より

概要はサクッと公式サイトとWikipediaから。

https://sinoalice.jp/

『SINoALICE -シノアリス-』は、スクウェア・エニックスとポケラボが共同で企画・運営をしているスマートフォン向けゲームアプリ。
キャッチコピーは「それは最悪の『物語』」。

ヨコオタロウが原作およびクリエイティブディレクターを担当する。
キャラクターデザインはジノ、音楽は岡部啓一とMONACAが担当している。
物語は「ライブラリ」と呼ばれる世界を舞台に、「キャラクターズ」と呼ばれる登場人物たちが自身の作者を蘇らせるために他のキャラクターズと殺し合うという内容になっている。

wikipedia より

シノアリスと筆者

シノアリス。
知ってる人は知ってるが、知らない人は当然知らない。
名作かと言われれば答えに困るが、駄作かと言えば別にそうでもない。
ソシャゲの歴史の中にちゃんと爪痕を残せた方のタイトルだと、個人的には感じています。
まぁ、そんなことよりまずは思い出話から入りましょう。

最初に出会ったのはリリース当初でした。
仲間内で「新しいタイトルがスクエニ&ポケラボから出たよ」ということで、とりあえず落としました。
最初の印象はあまりよくなかったように記憶しています。

シノアリス ゲーム画面

悪印象というか、「なんだこれは」に近かったような印象。
岡本太郎作品に触れたような気持ちでした。

理由は明白。
あの人形どものせいです。

あの人形ども ことギシンとアンキ

思えば、最初から奴らの押しは強かったように思います。
まぁ、そのあたりはナビゲーターとしてちゃんと印象がよかったと解釈することもできるし、ちょっとクセが強かったとも思えます。
今となっては愛すべきキャラクターに成長したのは嬉しいですね。

で。その時はシノアリスは続けませんでした。
とりあえず切りました。

再会して再開するのはその数年後です。

またある時、仲間内で「我々は他社のソシャゲについて、もっと調査や観測をしなければならないのではないか」という流れが生まれました。
その時の調査対象として選ばれたのがシノアリスです。
シノアリスを候補に入れたのは筆者です。理由は「なんとなく」。

当時としては、キャラ数は抑え目なものの、その分キャラの描写をしっかりと行うほうに振り切っていたし、ゲーム内容もGvGをメインの軸に据えているのも珍しかったですね。
自分の知識や経験としては、そのあたりのコンテンツにあまり触れていなかったので、観測対象としてはよいチョイスであったと思います。

それをきっかけに、現在まで年単位でしっかりと遊び続けていました。

よいと思う点も、悪いと思う点も、いろいろ吸収できたと思います。
いちユーザーとしても、なかなかに楽しめました。

そんなシノアリス生活を振り返りながら、それぞれの項目についてさらっと触れてみようと思います。

シノアリスのよい点

キャラクターの描写、物語、世界観。
これらは当時のソシャゲと比較しても、かなりよいユーザー体験だったと思います。
ヨコヲタロウ氏や開発陣や運営の独特のノリには好き嫌いあったと思うし、それは一般ウケを狙ったものではなかったかもしれない……が、今となってはそれもひとつの持ち味です。

人形どものインパクトのハードルを乗り越えれば、ゴシックでミステリアスな雰囲気と、魅力的なキャラクターが織りなす世界観にどっぷりとつかることができて、それなりに楽しい体験です。
キャラクターもそれぞれちゃんとカッコイイ・カワイイ・魅力的・個性的で、全く文句なし。

設定集よりアリス

まずキャラクターの見た目がよい。
そしてさらにシナリオもよい。見せ方もよい。
ミステリアスな導入から、早々にキャラクターの持つコンプレックスと相対することを余儀なくされ、なぜそうなるに至ったか、そして何を解決として戦っていくのか、物語の縦軸が早いうちに明示される。

先への訴求という点も含め、ストーリーの見せ方として非常に秀逸であると感じました。

さらに、キャラクターたちは相互に関わり合い、時には協力し、時には敵対する。
相互関係が描かれるのはもちろんよいし、それによってキャラクターの性格や心情や譲れない気持ちを描写しているのがとてもよかったと思います。
ことメインストーリーの展開としては、巧さと構成センスが光りました。

わかっていてもなかなかできないことを、しっかりとやってのけているところが好印象です。
(そのあたり、キャラクターや世界観設定の担当者がちゃんと発言力を持っていないと難しいのです)

で。
キャラクターの内面描写や魅力が担保されているので、イベントストーリーでヘンテコな展開になっても許せる。全然許せる。
基本の描写をしっかりやっているから、不条理展開やコミカルな外伝があっても、描写の軸が揺らがない限り許せるし、それがキャラクターの側面を見せるという点で機能している。

あと、物語におけるキャラクターの立ち位置として、人形どもとくるみ割り人形とドロシーは非常によく機能していたと思います。

この衣装を水着と言い張り夏に出してくる心の強さ

なにをやっても許されるギャグ担当のキャラクターを据えておくことの重要さを、身をもって理解させられました。
あいつら便利すぎる。よくも悪くも運用にコツはいりますが、真面目一辺倒だといろいろ詰むのです。
このあたり、やはりシナリオ担当のセンスを感じますね……。

で。
キャラクター数を抑え、魅力をアピールしていれば、当然キャラクターにファンもつきます。
故に、人気投票やピックアップガチャなどの展開も、ちゃんとユーザーから待ち望まれ、ちゃんと受け入れられる。
そのあたりの横展開への繋げ方も非常に巧かったように感じます。
もっとも、その分後から入ったキャラクターの不遇さが若干目立ちますが……それは不人気・不遇キャラクターとして糧にしてたので、それはそれでよかったのかな。

というわけで、よいところをまとめてみましょう。

  • キャラクターの描写に対して計画的にしっかりと力を入れることで、それ自体がコンテンツに対して唯一無二の魅力にっている

  • ひとつのイベントの描写自体が少なくて短くても、相互に補完し合うため描写が不足している感はない。

  • 丁寧なキャラクター描写で生まれた魅力を、求めるユーザーに対してちゃんと横展開で繋げてきている

ソシャゲのストーリーはこうあるべきという、ある種の完成形かもしれません。

以前、ソシャゲはストーリーを語るのに向いていないという話を書きました。

それへ対してのひとつのアンサーの形なのかもしれません。

このあたり、今後のソシャゲといわずキャラクターコンテンツ全般に対して言えることなので、シノアリスから得た知見として、自分の中で糧にしていきたいと思います。

シノアリスのアレなところ

さて。
よいところだけでもいいのですが、反面教師としての悪いところにも触れておきたいと思います。
コンテンツの展開でいえば巧かったと思いますが、ゲームやビジネスとしてみた場合、少し課題が残るなー……と思うのも事実です。
いくつかありますが、それぞれ触れていきたいと思います。

ゲームとして

シンプルに「なにをやるのが最適解なのかわからん」というところ。
基本的には、強い武器を使って相手を殴る or 適切なサポートを行うが正解だと思っていますが、最適解がわからん&最適解をしたという手ごたえがないのは、ちょっと課題として残ると思います。

「今、自分は強いのか弱いのか」「今、自分はグッドなプレイをしたのかどうか」。これらが実感できないと、より強くなりたい、強い武器がほしいという向上心に繋がりません。

さらに、負けたとしても、それがなぜ負けたのかわからない。もっと言えば、負けたデメリットもわからない。(そもそもないのかもしれない)
「最適解の手ごたえがない」から「負けても悔しくないし、勝っても嬉しくない」。なので、向上心に繋がらない。
強くなりたいという向上心が生まれなければ、ガチャでの購買意欲につながりません。

今思えば、筆者はキャラクターやジョブ目当てでガチャを引くことはあっても、強い武器を求めてガチャを引いたことはあまりありませんでした。
筆者にはファンアイテムとしてのジョブしか認識できていなかったのです。
(ここに関しては、そこまで積極的にやりこんでない自分が悪いだけの可能性は当然ありますが)

コロシアムというGvG

これが、メインコンテンツであるコロシアムと相性が悪かったなぁと感じます。
(重ねていうが、自分がエンジョイ勢なので実感できてない可能性はもちろん多分にあります)

メインコンテンツがGvGというのは、昨今としてはわりと珍しいですね。
一日一回のチーム戦があり、そこに対してインゲームやガチャで最善を尽くして準備する……という立て付けはよいと思います。
が。
どうすれば貢献できるのかがわからないと、特に初心者には厳しいものがあるなー……と思ってしまいます。

筆者は最終的には、弱いなりに祈祷ジョブで仲間の回復に努めました。
回復ならプラスになることは確実で、あって悪いものではないだろうという考えの下のことです。
もっとも、それすら正解だったかどうかもわかりませんが……。

シノアリスに限らず、GvGは結局のところ「自分が弱くても勝つときは勝し、自分が強くても負けるときは負ける」と、グループの強さや熟練度の要因の方が勝敗に強く出てしまいます。
それが前述した、「自分が強いのか弱いのかわからん」に拍車をかける形になります。
しかも、強くなろうとあがくも、どうしていいかわからないという無限ループ。

さらに、石を貯めてガチャに挑もうとするが、結局どれを引けばいいのかわからない。
ピックアップなのかオススメなのか、それとも実は復刻が強いのか…などなどで迷った結果、引くに引けない。

ゲームから繋がる弱点がガチャにも影響し、それが売り上げに繋がらない遠因になったのかな…とも邪推してしまいます。

まとめると

  • バトルでの立ち回りの最適解がわかりづらい

  • ゆえに、勝っても嬉しくないし負けても悔しくない

  • なにが敗因なのかわからないので向上心に繋がらない

  • 強くなろうとあがいても、ガチャで何を引けばいいかわからない

もちろん、しっかりと内容を熟知してちゃんと強くなるプレイヤーも一定数いたとは思いますが。
新規のプレイヤーやエンジョイ勢に対して、この「わかりやすさ」がちょっと難しかったのかな、アプローチが薄かったのかな、とは感じてしまいます。

可処分時間に対するスタンス

そうそう。
プレイヤーの可処分時間に対してのアプローチが不遇だったのも触れておかねばなりませんね。

昔は「いかにしてプレイヤーを拘束し時間を使わせるか」がトレンドだったのに対し、現在は「いかにプレイヤーの手間を煩わせず、コンテンツに残ってもらうか」が主流です。

シノアリスは、この時代の流れによる変化をもろに食らってしまった不遇さはあると思います。

クエストの攻略に一定の時間がかかり、結果はそんなに大差ないのにスキップはできない。裏で走らせておくこともできない。
その消化にかかる時間、スマホを使えなくなるのは正直痛かったなーと思います。

最近であればスキップ機能が充実したり、まとめて消化できたりするコンテンツも多いですが、おそらく何かしらの事情でそれはできなかったのでしょう。(課金ユーザーの特典でスキップ回数が増えたりとか、そのあたりが絡んでいそうな気はします。

ここは時代が悪かった、としか言いようはないでしょう。

まとめ

数あるソシャゲの中でも、長期間しっかりと稼働し、一定のファンもつき、ストーリーも完結し、惜しまれつつのサービス終了……。
愛されていたコンテンツであることは間違いないと思います。

グレーテルちゃんともう会えないかと思うと胸が苦しくなります。

グレーテルちゃん。ヤンデレはいいぞ。

ソシャゲである以上、サ終は逃れようのない事象です。
課題は、その次に繋げていけるかどうか。

シノアリスには、コンテンツの完成度やファンや認知度など、その下地が十分に作られていると感じます。

今後、しれっとキャラクターと世界観と物語とあの人形どもをひっさげて、新たなコンテンツとして復活してほしいな……と思う次第です。
(というか、十中八九やるだろうな…とは思っている。そうでなければ、ただ終わらせるにはもったいなさ過ぎる)。

コンテンツのいちファンとして、それを切望します。

幾分か長くなりましたが、本日僕から言いたいことは以上です。

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