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オートバイのある風景13 卒業とCB750F

限定解除をして手に入れたナナハンだったが、その翌年に僕は事故を起こしてGPZを廃車にしてしまった。起こした、というより遭った、と言って良いくらいの事故ではあったけれど。

書いても読んでもあまり気持ちの良い話ではないので詳細は割愛するが、相当派手な怪我も負ってしまった。1月に事故に遭って、またバイクに乗れるようになったのがその年の11月頃だったのだから相当な怪我だったとご想像頂けるだろう。

さて、そこで僕がライムグリーンのGPZの次に選んだバイクはホンダのVFR750Fだった。
ここでピンと来た方は相当なマニアというか、かなりの好き物と言って良いと思う。そう、ウェイン-レイニーがGPZの次にAMAで駆ったマシンがVFRだったのである。
でも、いざ乗ってみるとどうもしっくり来ない。とても速いバイクなのだが面白くないのである。「彼女のVF」でも書いたように僕はV型4気筒なら360度クランクが好きなのだが、このVFRは180度クランクなのだ。
分かってはいたがこうも違うものかと思った。実際レイニーが乗ったVFRはワークス仕様の別物で、後のRC30に通ずる360度クランクだったとか…。

オートバイは趣味性の強い乗り物であるからして、こういった点は我慢できるものではなく、僕はあっさり乗り換えることにした。
とは言っても貧乏学生にもう資金的な余裕はない。下取り金額で買えるバイクを探したらCB750Fが出てきたというわけである。
馴染みのバイク屋では異動になったS店長に代わってY専務が指揮を取っていて、納車からものの2週間ほどでVFRを返しに来た僕を見て
「ほら見ろ、茶袋くんは直4じゃなきゃダメなんだって」
と大笑いしていたっけ。

そんな経緯で僕の元に来た直列4気筒のCB750FBだが、金色の裏コムスターホイールに黒エンジン、FCの赤白外装という妙な組み合わせの車体だった。
そこで車検証やフレームNo.を調べてみたら型式で言うとFB-Bということが分かった。ここから先は分かる人だけ分かればと思うが、FBのエンジンを黒く塗ったのではなく、FB-BつまりボルドールⅡの赤フレームを黒く塗り、FCの外装を載せたものだったのだ。
まあ、とにかくそこそこ格好良い仕様のバイクであったのは確かである。
早速ホイールを黒く塗装し、マフラーをバンス&ハインズのメッキメガホンに換えたら一丁上がりだ。

仕上がったCBで僕は早速大学の駐輪場に乗り付けた。

するとバイクに乗った学生に話しかけられた。僕から見たらずいぶん若く感じられる学生だった。
「渋いですね」
あはは、まーね、とは言わなかったけれど、すっかり気分も良くなりしばらく彼とおしゃべりをしていた。すると
「ライムグリーンのGPZの人って、卒業したんですかね?」
と言うので、
「それ、俺だ。事故で潰しちゃってさ」
「えー、そうだったんですか!」
と話はさらに続き
「あと、ずいぶん前だけど雑誌にも載ったメチャクチャいじったCBX400もいたらしいんですけど、聞いたことあります?」
と言うものだから、さらに調子に乗って
「あー、それも俺。まだ実家にあるよ」
なんて返したら、凄いですねーと尊敬されるどころか
「何年ここに通ってるんですか?」
と呆れられてしまった。

浪人と留年を経験して僕はもうじき25歳になろうとしていた。今思えばずいぶん「痛い」学生だったのかも知れない。
卒業を間近に控え、僕が駐輪場の伝説になり損ねた日のお話である。


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