茶埜子尋子

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花葬乙女

海辺の会食には 白いワンピースで リボンをほどいて 生贄になれないのが 苦しいの 数奇な運命に 指を刺されながら ギラギラ光る 無数の単眼を とめどなく浴びて 死んでしまいたい 支配されてもいい 血しぶきを丁寧に 舐めあげてゆく うっとりするような 殺気に慄いたら どうかここへ おいでください 身体の奥が あつくなるような わたしはあなたを 心待ちにしています 背中のお下げは 乙女のしるし もっと もっと ジンジンさせて 茶

    • 痛いの痛いの

      痛いの痛いの とんでいけ 絡まった針金を ぐるぐるって メリーゴーランドにしたら 逆夢のはじまり こんどの夜は 指を切って 愉しかったら 裂いてあげよう 面白いの見たさに 見失って ピエロになったのは どっち? 深い淵に はまってしまって もがいてるのは どっち? 痛いの痛いの とんでいけ 見えないフリしてる あいつに トンデイケ 茶埜子尋子

      • 航海薄明

        青と赤が はじめて繋がる時間に ひんやりしたおでこを きみの頬にくっつけてみる この朝とおなじように 少しだけかなしい この気持ちはきみのもの? ちょっぴりも動かないで 心だけを繋いで 紫になる 艶めいた肌に 痕をつけたら 終わってしまうんだ 薄暗いままで 陽の光も見えないままで だから声はきこえない きみとぼくの この世界への代償 だから世界は美しい きみのぼくの この世界への代償 地平線の下でふたり 十字架をにぎりしめて 茶埜

        • ユラユラの詩

          ちぎれた糸を 雲の切れ間に 紡いでゆくような そんな生命になりたい ユラユラ とっくに解けている腕に 繋がれたくて 星を眺めた 淡くひかる 小さな星は きみの喘ぎを孕んで ユラユラ 何も奪うことはなかったのに 大きな力に 解き放たれて 震えている ふたつの星は 雨の温もりをふくんで ぼくらこれから こんなことに 慣れていかなくちゃいけないのかな ぼくは大丈夫 君が無事なら ユラユラ まだ生きていたい ユラユラ 生

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        • 詩集
          61本
        • エッセイ集
          16本
        • 不思議な体験談
          5本
        • 言葉のおもちゃ箱
          3本
        • 心の詩
          2本

        記事

          夜窓の詩

          元いた場所に 帰ろう 虚宿行きの列車に乗ろう 窓を開けて ぼくに身を任せて 瞳をとじれば 満天の星々が迎えにきているよ ようやく君に見せることができる 銀河へつづく夜を 車掌さんも お客さんも いないんだ ぼくときみだけ 風と星だけ それだけで宇宙はできる ポッペンを割ったような 弾ける音がぼくらを包みながら 遠い遠い夜へ 元いた場所に帰ろう あたりまえだった宇宙へ 茶埜子尋子

          朝霧の詩

          本当にきみは きれいな色でできている 髪も 瞳も なにもかも だから今もこうやって ぼくに夢を見させつづけているんだろう ひんやりした世界で やさしく囲って 夢のような 現実のなかで 夢をみている 残酷なきみ 美しいきみ ぼくの好きなきみ 茶埜子尋子

          玉響の詩

          殺しにくる 見境のない 仕草で 見とれている 直刃のような 眼差し 重ねられた羽衣 屍は山河ですすいで 手折られた精霊 流れ星のような美しさで 首元で揺れる 銀色の勾玉 しんと森へ響いて 青く光る 蟲らの声よ 茶埜子尋子

          トビウオの詩

          目の前を 飛び交ってゆくのは 気高く有りつづけた 先人の火の玉 パシャン パシャン 幾千の意志が 海にはじけて 空に散る 手を振って サヨナラ告げた日 手を握って 愛を伝えた日 手を震わせて まだ見ぬ未来へ手紙を書いた日 重ねた日々の端くれを 繋ぎ合わせて 日ノ本の旗になる 歪んだ空へ 虹色の鱗を散りばめて 太陽は昇るよ 新しい国に 茶埜子尋子

          トビウオの詩

          薔薇色の夢

          美しい香りにかこまれている 平凡なわたし いつかはこんな花々に囲まれていたい ガーデニングをして ニワトリや子馬や 動物たちにかこまれて くらしたい ここにはたくさんの人が 薔薇を見るため 訪れているけれど いつかはひとりで 噴水近くのベンチで このエッセイをかいている 風が強い日。 ここまで飛沫が飛んでくる 頬や唇にひんやりしては 消えてゆく 果てしない夢を 平凡な日々に 調和しているような 優しさの雨 黄色い薔薇や 紫の薔薇 やっぱりひとりでは 勿体ない わた

          薔薇色の夢

          きみの哲学と浮き雲

          きみの哲学が好きだ やさしい水のような 冷たくも熱くもなく その時の気分だけを 満たすものではないこと おだやかな波のように 果てしなく広がる海に 抗うことなく 美しい音楽を伝えていること いつかきみと話してみたい カチコチと 時の音が揺する 浮き雲のうえで レコードは何をかけようか 最近聞いてる音楽を 君にきかせてあげたい まだ誰も知らない j-popを 胡座をかいて 関係のない世界のことを 口遊もう 茶埜子尋子

          きみの哲学と浮き雲

          静寂島の詩

          よーい、 音はなにも かなしいね 波の音もきこえないよ 勇ましい漁船も おんぼろバスも この島では 穏やかな気持ちの 一欠片のよう 汚れたねこの おもてなし きみを幸せにはできないのに かなしいね そう口にしたぼくの声だけ はっきりと聞こえて 茶埜子尋子

          泡沫の詩

          きみの背中をひらいて そうすれば空は見えるだろうか 繋がれてしまえばよかった きみの小指に ささやかに佇む残響が 首すじを切り裂いてゆく 泡のような 霧よりも薄い ぼくときみ 僕らを囲むものも 何もないんだよ さわやかな音とともに弾けても 宇宙よりも細やかな何かへ 空よりもひろい何かへ 飛び交いながら 変わってゆくよ 茶埜子尋子

          追憶の詩

          オルゴールの音色のように 穏やかな気持ち ふたたび巻き戻すことはない これっきりの時間 戻れると信じていたの 潤んだあの子が見つめてたから レクイエムはあの子のために ずっと待っていたのね 神さまからもらった手紙を にぎりしめて これからどんな幸せが待ち伏せても この詩を忘れないから 緩やかにゆるやかに 沈んでゆこう 茶埜子尋子

          蒼穹の詩

          約束でもないのに 逃れられないように 赤い雨がふる 番って 果てて 美しい時のままだけの わたしたちでいられるように 自ら縛っているようなもの 囚われているのは わたしたちではなく この空なのです ぽこぽこと浮き出る骨 不穏な手ざわりが 心地がいいこと きみの背中をひらいたらば そうすれば 空は見えるだろうか まだ見ぬ 蒼穹を 茶埜子尋子

          虎の目の詩

          静かな夜の おそろしい森 音も立てずに 抉っていく 白い牙を汚した温い血は 丁寧にきみの夢に したたっていく 木々に染みこんでいく 行き場のない声 愚かなひとね それも含めて 食事というの やがておもむろに 立ち上がった 歪んだ影を見つめて まだ何も 終わっていないのに 茶埜子尋子

          夜の価値

          夜の方が素敵な言葉たちが 表に出てきていることが多い 私の詩の大半は夜にかいたものが多いような気がする 覚えてないけど ふわふわ浮いて踊ってる言葉が 脳の中を駆け巡ったり、 目の前を横切ったり、 それをつかまえては 苦しくないように整列させて、 言葉たちが穏やかに自由にいれることに気を遣いながら、 詩をつくりだす 夜の不思議 きっと宇宙にいちばん近い時間 そう思わざるをえない わたしには からだの奥のひんやりしたとこに 吸い寄せられる感覚 それでも重たくなくて