薫
桜を食んで生きるものは、桜の花が散るのと一緒に消える。
金木犀の花が落ちるとき、それもまた何かが消失したことを意味するのでしょう。音無く、触れることもできずに。
金木犀の花を食む。
両手で頬を掴まれて、強引に引き寄せられるような可憐で不遜な、強い香り。
百合よりあどけなさの残る甘い香りが鼻に抜けて、夕日が染みた蜂蜜色が舌へ溶けだす。
そうしてその甘味が恍惚と、おもむろに咽へ流れていく感覚に忘我と眩暈を覚える。
法悦を飲み下すころ、夏を偲ぶような、草の青い香りが、微かに残る。
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