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中国EC祭典「独身の日」が開始、着目すべき3つのトレンド

中国EC最大の祭典であり、国民的イベントとしても知られる独身の日(ダブルイレブン、双十一)が10月24日より予約販売を開始した。

中国EC最大手のアリババが創出したこのイベントは、今や14年目の開催となり、中国EC業界全体を巻き込む行事となっている。実際に去年の「独身の日」セールとそれに次ぐECイベント「618セール」の合計売上は、同年中国EC小売額の12%を占めたほどだ。

今年の独身の日は、記録をさらに塗り替えられるか。毎年恒例イベントの変化を現地メディアの報道を基に分析していく。


取引額は1兆元に迫るものの、伸び率は年々鈍化

▲独身の日と618セールの全体GMV(ライブコマースプラットフォームを除く)
(出典:星図)

2021年独身の日セール全体のGMV(取引額)は、9,520億元(約19兆円)。過去の伸び率から見ると、今年は少なくとも1兆元(約20兆円)は期待できそうだ

しかし、今年の618セールのGMV伸び率は前年比1%とかなり鈍化している。中国の経済減速や、コロナ規制による個人消費不振などの影響を受け、売上が低調となる可能性も十分にある。

そのため、世間の最大の関心は最終売上数字であるが、近年各プラットフォームはGMVの全面的な公開は控える動きを取っている。


プラットフォーム間の敷居を撤去

今回の独身の日の最も大きな変化は、各プラットフォームが積極的にプラットフォーム間の壁を取り払い、競合相手との連携やサービスを開放したことである。

かつての中国EC業界は、メーカー側が複数のプラットフォームに出店したくても、1つのプラットフォームでの出店を迫られるという、いわゆる「二者択一」の現象が存在していた。

それくらいプラットフォーム間の競争が熾烈で、独身の日セールも例外ではなく、プラットフォーム同士が張り合い、長らくメーカーを悩ませていたが、今回ついにその壁が取り払われることになったのだ。

▲タオバオのライブ配信にDouyinの有名ライバーが登場(筆者撮影)

その一例として、Douyin(Tik Tok中国版)の有名ライバー羅永浩がタオバオ(アリババ傘下)のライブコマースに登場。今後は、メーカーの出店やイベント参加、ライバーのプラットフォーム選びがもっと自由にできるようになると考えられる。

これは中国政府の独占規制強化への対策とも言えるが、GMVの成長鈍化が顕著となっている今、各プラットフォームが連携し、メーカーやライバーに複数のプラットフォームで展開してもらう必要がある、という側面が大きいだろう。


取引額より顧客ロイヤリティ向上に着目

プラットフォーム間に壁の隔たりがなくなり、EC全体の伸び率が鈍化している背景下、今ではGMV数字ではなく、ユーザー体験の向上に注力する動きが見られる

アリババは会員プロジェクトの「88VIP」に注力し、現在は2,500万人の会員が登録。一人当たりの年間消費額は5万7千元(約115万円)を超過している。

 また、コンサル会社のBAINが発表したレポートによると、顧客ロイヤリティの高いブランドの消費者がそのブランドを推薦する理由のうち、業界平均より多く見られた理由は:商品の質、商品種類と会員計画であるのに対し、消費者が商品価格を推薦する理由は業界平均を下回っている。

実際に、今回の独身の日は一定の割引率を保ってるが、消費者は14回目となるとそれに慣れており、あまりお得と感じないようだ。独身の日における高い割引率や値引き手法に対するメーカーの見方も変わっている。


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中国のEC業界は過去十数年の発展を経て世界の先頭を走っている。特に独身の日イベントはかつて驚愕的な売上を出し続け、中国消費者の消費力を検証する指標と見られてきた。

しかし、14年も過ぎたこの市場は、経済環境やプラットフォームの勢力など、様々な変化が起きている。今後も国民的なイベントとして継続されていくだろうが、この市場に身を置くプラットフォームとメーカーは、市場の変化に応じた対策が迫られる。

プラットフォーム側、そして出展側がどう対策を行うか、独身の日セールが続く11月後半まで最新情報を追っていく。

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