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2021年中国流行語トップ10!! (YYDS、我emo了、元宇宙など)

中国では、日本の年度流行語大賞と同じように、新語や流行語が発表された。しかし、語学雑誌や検索エンジン会社などから別々に発表されたものが複数あり、それぞれの内容も選出基準も異なる。

チャイトピは語学文学雑誌「咬文嚼字」と国家言語資源監測研究センター、そして中国検索エンジン大手の「Sogou(捜狗)」が選んだ流行語を元に、中国人スタッフにアンケートを取り、チャイトピ独自の考察を加えた上で流行語トップ10を選出しました。その意味と流行った理由、背景などについて詳しくご紹介したいと思います。


まずはこの3社の選出基準と発表した内容について少しご紹介します。

【咬文嚼字】

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「咬文嚼字」は1995年に創刊された語学・文学雑誌。2008年から年間十大流行語を毎年発表するようになった。内容の特徴として選出された流行語のうち、半分が政治・政策関連の単語となっている。

プロパガンダに関する「百年未有之大变局」・「小康」・「赶考」から始まり、少子化対策の中国版ゆとり教育政策「双減」、CO2削減の「碳达峰,碳中和」などがランクイン。

【国家言語資源監測研究センター】

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同センターは中国教育部の言語・文字の情報管理部門より設立され、中国語の影響力を高めることを目的としており、中国語に対する分析なども行なっている。内容としては政策・社会現象・娯楽・トレンドの単語・フレーズをバランスよく選んでいる印象を受ける。

「觉醒年代」、「强国有我」のようなプロパガンダ系もあれば、「躺平」のような社会現象に関するものもあり、さらに「我看不懂,但我大受震撼」などネットで交流する際によく使われフレーズもある。

【Sogou】

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中国検索エンジン市場で2番目と称されるSogou、同社の中国語入力ツールも一二を争うほど人気である。

今回は同社がネットユーザーから今年よく使ったと思う流行語を募集し、その中から流行語トップ10を選出した。ネットで交流する際に遊びとして使われるネットスラングがほとんどである。


3社の中からチャイトピはアンケート結果をもとに、以下の流行語をご紹介する。

YYDS(永遠の神)

YYDSは中国語で「永远的神(Yong Yuan De Shen)」の発音表記(ピンイン)の頭文字を繋いだ略語。直訳すると永遠の神という意味で、凄い人物や出来事を褒め讃える時に使われ、様々な場面で見かける。

元々はe-スポーツ関連でよく使われていた単語。あるゲーム実況者が実況中に思わず口から出たこの単語が流行り出し、いつからかYYDSと略され、e-スポーツに止まらず自分の好きなアイドルなどを褒める際でも使われるようになった。

我emo了(落ち込むこと) 

今年の後半、突然SNS上で現れたフレーズ「我emo了」、意味としては「元気をなくした」、「意気消沈」、「憂鬱だ」などになる。

このemoは日本語のエモいと似ており、どちらも感情を表す際に使われるネットスラングだが、エモいと違いemoは主に「我emo了」のように、ネガティブな感情を表す場合で使われることが多い。由来については、内面的な情緒や悲痛を基調としたロックの形態の一つであるエモ(emotional music)から来ているという説がある。

社交牛逼症(超社交的)

極度な人見知りや、他人と関わることが怖い人などを指す際に使われる「社交恐惧症(対人恐怖症)」の対義語として生まれた言葉。相手にどう思われているのかを全く気にせず、例え初対面の人でも馴れ馴れしく話す強靭なメンタルがある人を形容する際によく使われる。

さらに、Douyin(中国版TikTok)上では社交牛逼症関連の動画再生数が20億を超えており、人気を見せている。

绝绝子(ヤバい)

中国語で何かに対してそれがあまりにすごいことであると表現する際に使われる単語、「绝了」からさらに変形してできた単語。素晴らしいことだけでなく、ひどいことや個人的に衝撃を受けて驚愕した時などでも使える。

流行の原因については色々あるが、まとめると元々は中国版5ちゃんねる「貼吧」で最初に使われていたのが、バラエティ番組でファンの人たちにも使われたことで広く知られ流行り始めたようだ。

破防(ガードブレイク)

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▲ 中国動画サイト「bilibili」の2021年度ベスト弾幕「破防了」

元々はゲームで相手の防御を壊し、無効化することを指す用語だったが、今ではネット上である出来事によって心の防御を破られてしまい、感情を大きく揺さぶられた様を表す際に使われている。

使用場面は広く、感動的な出来事に心を打たれた時や、相手に心の痛いところを突かれて泣きそうになる時にも「我破防了(もうダメだ、泣きそう)」というようなニュアンスで使われる。

また、ゲーム実況などで相手を煽る際に、「平常心をなくしている」というような攻撃的なニュアンスで使われる場面もあるようだ。

元宇宙(メタバース)

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日本と中国でも話題の言葉、メタバース。起源を辿ると、ニール・スティーブンソンが1992年に書いたサイバーパンク小説、「スノウ・クラッシュ」に初めて登場した造語となっている。サイバー空間上で人工的に作られた、現実世界と平行した世界を指す。

今年7月にフェイスブック社のマーク・ザッカーバーグが2025年に向けて、同社をメタバース会社にシフトすると表明し、ブームを巻き起こした。そのブームに乗り遅れまいと、中国でも多くの企業がメタバース事業の展開を急ぎ出した。

IT企業大手のテンセントや競合のNetEase(網易)、EC企業大手のアリババグループがこぞってメタバース関連の商標登録を大量に申請した。検索エンジン最大手のバイドゥは近日、メタバースのアプリ「希壌」を公開し、発表会も希壌内で行うと表明。さらにメタバース関連と思われるゲーム会社の株が急騰し、市場からの注目を集めた。

そうした企業の動向によってメタバースはどんどん知れ渡っていき、ネットではその実現についての議論が多く見られる。

野性消费(ワイルドな消費)

今年7月、中国河南省で洪水災害が発生した際に、ある中国スポーツウェア企業が赤字経営であるにも関わらず、5000万元(約9億元)相当の物資を寄付したことがトレンドとなり、ネットユーザーの愛国心に火がついた。

そうして同社の商品を爆買いする消費者が、同社より「理性ある消費をお願いします」と言われた際に「野性消費をする」と言い返したことが起因。

意味としては何にも縛られずに、自由に、感情のままに消費することを指す。中でも落ちぶれている企業への愛がこもった支援として、衝動買いするような場面を表すのに使われている。

躺平(寝そべり)

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  躺平とは競争しない、過度な努力をしない「寝そべりの状態」になるという意味で使われる単語。受験、就職と競争に満ちあふれている社会で生きる若者たちが、そのプレッシャーとストレスに耐えかねて白旗を挙げたことが背景にある。

中国版5ちゃんねる「貼吧」で、あるユーザーが「躺平は正義だ」とする自身の躺平生活と躺平哲学の文章を投稿したことが発端とされている。躺平の流行に対して「無気力、ネガティブ」と批判する人もいるものの、内巻(インボリューション)問題が深刻な中国では、こうした「寝そべり主義」は多くの人たちの共感を呼んだ。

少子高齢化が進む中国では、これらに対して当局は警戒の姿勢を見せ、政府メディアが批判的な文章をいくつも公開したほどである。

鸡娃(ひよこ)

鸡娃も躺平同様、競争社会が背景にある。「给孩子打鸡血(子供に向上心・闘争心をつける)」という意味のフレーズから来ており、自分の子供が他の子に負けないように、親が子にいくつもの習いごとをやらせ、ひたすら闘争心をかき立てる行為を指す単語。

そこには「スタートラインで負けるわけにはいかない」という共通概念が中国の保護者の間で深く根づいていることが背景にあり、社会現象にもなった。

双减 (宿題減と塾通い減)

工作记录

上記の鸡娃が示す残酷な競争社会が出生率低下の理由の一つと思われ、深刻化する少子高齢化の状況を打開のために、政府は、ついに行き過ぎた教育環境に対して厳格に取り締まる「双减政策」を今年9月に実施。

義務教育段階での宿題の量を削減、関連の学習塾も非営利化の方向で改革を進めた。それによって倒産する企業や農業・ECなどと他分野へ事業転換を図る企業、社会人向け教育事業に集中する企業が出るなど市場は大きな打撃を受け、世間を騒がせた。

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