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ラッキンコーヒー 初の営業利益黒字

5月24日、中国コーヒーチェーンブランド大手のラッキンコーヒー(Luckin Coffee、以下ラッキン)が今年1-3月の決算を発表した。

売上高は24億元(約460億円)と前年同期比で90%増加、純利益は1,984万元(約3.8億円)と前年より黒字転換を果たした。そして、本業でいくら稼いだかを示す営業利益では初めて1,610万元(約3.1億円)と黒字化を達成した

同社はこの黒字化について店舗運営スキルと新商品戦略が支えになっていると示した。

粉飾決算による上場廃止、訴訟トラブルなどの窮地からようやく収益化にまで巻き返せたようだ。

ヒット商品開発やプロモーションに注力

中国のコーヒーチェーン市場ではスターバックス(以下スタバ)が絶対王者として君臨してきた。スタバの1-3月期決算では中国市場の売上高は49億元(約935億円)とラッキンの約2倍もあった。

しかし、前年同期比では14%減少と業績不振にあったスタバに対して、ラッキンは90%の増加と好調を見せていた。

同社は売上高増加の原因を以下の4つとしていた

・ラインナップの拡張

・店舗面積の拡大

・1カ月あたりの利用客数の増加

・商品の平均価格が上昇

ラッキンの事業戦略は明確であり、実際に成果も挙げていた。

去年4月に打ち出された「生椰拿铁」(ココナッツ・ラテ)が大ヒットしてからも、同社はラインナップの充実とヒット商品の開発に力を注いできた。

1-3月の間では34種類の新商品を打ち出しており、平均して1カ月で約10種類の新商品を打ち出したことになる。

4月には中国ココナッツミルク最大手の「椰树集团」(Coconut Palm)とコラボし、ココナッツミルクを細かい泡状にしてかぶせた斬新なラテ「椰云拿铁」を打ち出した。

▲ weiboより

発売から一週間で500万杯近くの売り上げを達成し、SNS上でも大きな話題を引き起こした。

また、店舗展開も続いており、今四半期では556店舗を出店し、同時期におけるスタバの97店舗よりも約6倍上回っていた。その結果、今年3月末の時点でラッキンの店舗数は6,580店舗と中国一を獲得した。

メイン収入源でもある直営店収入は17億元(約325億円)と前年同期比66%増加し、加盟店も5.5億元(約105億円)と前年同期比239%激増した。

1カ月あたりの利用客数を見てみると、前年同期比83%増加の1600万人となっていた。トレンドをしかと捉えた、ラッキンの迅速なプロモーション戦略が一因だと思われる。

中国では北京冬季五輪に出場したアイリーン・グー選手がスター扱いされていたが、同選手が金メダルを獲得するや否やラッキンはweibo上で祝電を送った。これによりユーザーからは称賛の声が上がり、大きな反響を呼んだ。まだ熱が冷めない1時間後には本人を起用した広告を公開し、入念で隙のないプロモーション活動を見せた。

ラッキンコーヒーの商品価格帯にも変化が起きていた。

現地メディアによると、去年からすでに段階的に値上げを行なっていることがわかった。昔では10元(約190円)近くが基本だったが、現在では20元(約380円)近くのものが多く、低価格帯を脱して中・高価格帯へと邁進していた。 

▲ ラッキン商品注文画面(チャイトピより撮影)

原材料価格の高騰による部分もあるが、一番の原因はやはり収益化に向けて価格戦略を調整したことにあると思われる。

再上場への期待

今年4月に、ラッキンは2.5億ドル(約320億円)の資金調達に成功した。収益化を達成した今、次のステップとして同社が再び上場することに期待が寄せられている。

しかし、そこで懸念されるのがコロナ感染拡大による影響である。ラッキンによると、1日あたりの臨時休業店舗数は700店舗から950店舗にまで増加していた。同社はコロナ禍がもたらす市場圧力により、近いうちは引き続き業務にマイナス影響が出るとの見方を示した。

また、今後については引き続きヒット商品の開発に注力し、他社との差別化に尽力していく姿勢だ。夏に向けて同社は最近「抓马西瓜拿铁」(スイカ・ラテ)を打ち出しており、フルーツとコーヒーのコラボを模索し続けていた。

まだまだコーヒーブームが終わらない中国市場で、ラッキンコーヒーがどのような成長を遂げていくのか、今後も注目していきたい。


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