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【インタビュー】中国ゲームの日本進出における戦略変化

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2017年から「荒野行動」をはじめ、中国発のモバイルゲームが日本市場で存在感を高めている。その後もmiHoYoや三七互娯など、中国ゲーム会社の日本市場進出が相次ぎ、高クオリティや大きなスケールといった特徴から日本ユーザーの獲得に成功。

日本の大手ゲーム会社はコンシューマーゲーム領域で強いものの、モバイルゲームへの事業展開は世界より遅れており、これは中国モバイルゲームが日本市場に進出するチャンスであった。

実際に中国のスマホゲームをプレイした日本ユーザーは、日本のゲームは保守的なのに比べ、中国ゲームはスケールが大きいという印象を受けている。

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▲日本の2022年上半期モバイルゲーム収益ランキング
(出典:Sensor Tower)(赤枠は中国発のゲーム)

ランキングを見てみると、日本の2022年上半期モバイルゲーム売上トップ100のうち、中国発のゲームは31本。トップ5は依然として日本のゲームが鎮座しているが、6位の「原神」、9位の「荒野行動」、10位の「放置少女」はいずれも中国発のゲームとなっている。

この現象を深堀りすべく、中国会社の視点から見た日本のモバイルゲーム市場や、中国ゲームの日本進出戦略などについて、筆者はネットイースやmiHoYo、および中国大手ゲーム会社の海外進出にマーケティングサービスを提供しているYoudao Adsにインタビューを行った。


■日本進出における戦略の変化

・5年前に比べ競争が激化

2017年の「荒野行動」リリースから5年が経った現在、日本モバイルゲーム市場の競争が激化。中国ゲーム業界は、今や2,000万元(約4億円)以上の予算がないと、日本市場で成果を出すことは難しいと言われている。

「日本市場は世界から見ても、顧客獲得費用が最も高い国の一つである。さらに、その顧客獲得費用は今も高騰しており、日本進出する中国ゲーム会社にとって、CPIが高まり、伝統な広告施策では限られた予算で成果を出すことは難しい。」(Youdao Ads)

「また、アップルのプライバシーポリシーの変更は、従来のデジタル広告に大きな影響を与えた。粗放型の広告施策は効果が急落し、高精度のマーケティング施策と運営の重要性が高まっている。」(Youdao Ads)


・ローカライズの重要性が上昇

中国ゲームが日本でヒットする理由は、日本文化と似通った部分が多いからと言われているが、中国市場と日本市場とでは人気の中国発ゲームは異なっている。

文化的な共通点はもちろんあるが、それ以前に中国のゲーム開発とマーケティングチームが日本文化やユーザーの研究に注力し、それに基づいたゲーム開発とマーケティング施策が成功に至った最大の理由だと考えられる。

中国国内のゲームを日本語に翻訳するだけではなく、日本ユーザーの嗜好性、課金習慣、よく利用するメディアなどを研究し、ゲームの仕組みからUI・UXまで、総合的なローカライズ展開に取り込んでいる。

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▲日本ユーザーと中国ユーザーの比較(Youdao Adsより)

「日本では、戦艦や三国志、少女系、アイドル関連の題材が受け入れられ、ユーザーは高精度の3Dや美術を求める。課金習慣の面では、中国のユーザーは競技目的が多く、自分が強くなるために課金する一方、日本のユーザーは好きなキャラクターのために課金する。しかし、日本では課金誘導の仕組みに抵抗が強い。」(Youdao Ads)

「中国のユーザーはゲーム関連情報を取得するために利用している媒体が多様化しているが、日本のユーザーは主にYouTube、Twitter、INS、Twitchを利用しており、近年ではTik Tokも人気となっている。」(Youdao Ads)

「我々のチームのうち、8割以上のメンバーは日本を含める海外市場でのマーケティング経験を持っている。さらに、日本のMCN会社と連携してプロモーションを展開するなど、現地の会社との協業も積極的に行っている。」(Youdao Ads)

・KOLマーケティングとIP連動が主流に

中国のEC業界でよく利用されるKOLマーケティングは、日本のゲーム市場でも活用されている。従来のデジタル広告施策では有限な予算で効果を出しにくいという背景もあり、インフルエンサーを利用したマーケティングの優位性が高まっているようだ。

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