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iQIYIからみる中国長編動画サイトの苦境と挽回策

百度傘下の動画大手iQIYI(爱奇艺)が窮地に陥っている。

創業から11年、iQIYIは未だ黒字化できず、2018年に上場してから現在までの赤字は約300億元(約5,300億円)。さらに今年に入り、株価は約80%下落し、11月には管理層を含む社員20%~40%のリストラが報道され、業界を騒然とさせた。


会員料金の値上げを決断

現在、iQIYIの主な収入源は、広告と会員料金である。しかし、近年中国の経済減速および広告市場の不振により、iQIYIの広告事業もマイナスに影響。2018~2020年の広告収入は、それぞれ93億元、82億元、68億元と年々減少している。

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また、2018~2020年の会員料金による収入は、それぞれ106億元、104億元、164億元で、会員料金による収入は伸びているが、有料会員数の成長は停滞している状態だ。

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グラフの有料会員数推移を見ると、2021年7~9月期は、1億360万人で前年比1.1%減少。それでも2019年から有料会員数は1億人を突破しているが、その後のユーザー成長の鈍化はグラフを見ると明らかである。

そこでiQIYIは今月、会員料金の値上げを発表し、元の月額25元から30元(約510円)と、約20%の値上げを実施。去年の11月に創業してから初めての値上げを実施し、そして今回と、これで合計2回の値上げとなった。



Netflixとの比較

iQIYIは「中国版Netflix」と呼ばれていたが、Netflixの売上規模やコンテンツ、有料会員数と比べると、差はまだまだ大きい

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2020年Netflixの売上はiQIYIの5倍となっており、Netflixの世界的展開と異なり、iQIYIの主な市場は中国のみであるものの、両社の差は明らかである。
中国は14億人を持つ巨大市場ではあるが、有料会員数に関してもNetflixの半分しかない状態だ。

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また、会員料金を見てみると、Netflixは今まで5回の値上げを実施しており、現在はiQIYI月額料金の2.9倍である。しかし、中国消費者のコンテンツ課金率はまだ低い水準にあるため、今回の2回目の値上げによってユーザーの不満を買い、会員解約に繋がるケースも多いようだ。

プラン

Netflixの3つの料金プランは、機能やサービスをきちんと3つの格段に分けている。しかし、iQIYIの料金プランは2つあるものの、ダイヤモンドVIPと黄金VIPの区別はテレビで4K画質の動画を視聴できるかどうかの違いだけだ。

また、両社ともコンテンツ製作に注力しているが、イカゲームなど世界的な超人気ドラマの製作に成功したNetflixと比べると、iQIYIは中国の動画業界では上位的な存在だが、世界的に見ると、人気作品をまだ排出できていない状況にある。その上、近年中国政府のエンタメ規制強化を受け、得意であったアイドル育成番組の製作も中止となり、苦しい状態が続いている。

このようなことからも、中国の長編動画市場の発達は、米国と比べ、まだまだ未成熟と言えるだろう。


ショートムービーからの脅威

近年、douyin(中国版Tik Tok)をはじめとするショート動画サイトは中国だけでなく、世界中からも脚光を浴びた。これにより、人々も従来の横向きの動画から縦向きの動画の視聴に慣れてきたようだ。こういった変化は長編動画サイトにとって悲報と言えるだろう。

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2021年10月のアクティブユーザー数は、douyinがiQIYI、テンセントビデオ、youkuなどの長編動画サイトを超過。KuaishouもiQIYI との差を縮めてきている。

また、ショートムービーアプリでは、iQIYIなどのサイトからドラマや映画の名シーンを編集してアップされた内容が多く見られる。忙しい現代人も、ショートムービーアプリでドラマを見ることを好む傾向にあり、iQIYIとってかなりの痛手となった。

しかし、最近になり中国のネットコンテンツ協会がこれを著作権侵害にあたるとして、ドラマの編集を禁止。iQIYIにとって唯一の朗報となった。


まとめ

中国では、「1,000元の服なら迷わず買うけど、20元の動画サイト会員費は絶対に支払いたくない」というネタが流行している。会員料金は他国と比べると、まだまだ安い方だが、消費者のコンテンツ課金の習慣はまだ浸透していないようだ。

長編動画サイトは以前、赤字を出し続けても、ユーザー数だけは伸び続けていたが、今はユーザー成長の鈍化とショート動画による脅威の二重のプレッシャーをかけられている。今後、生き延びるために、有料会員の増加、もしくは既存の有料会員に引き続き良質なコンテンツとサービスを提供することでの料金の値上げ、この2択という窮地をどう乗り切るか注目だ。

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