続・ストーリーは感情のジェットコースター

先日「ストーリーは6パターンしかない」という記事を書いたら様々なコメントをもらった。同じようにベストセラー小説を解析した「ベストセラーコード」では7パターンのストーリーが発見されている、という指摘を川合雅寛さんから頂いた。

さっそくこの本を読んだところ、先日紹介した6パターン理論とほぼ同じ分類だった。異なるのは抽象度だ。この本の解析が面白いのは、主人公の感情の揺れ動きのグラフを抽象度によって3つの段階で描いている。

この図は主人公の感情の高まりをグラフ化したものだけど、より細かく揺れ動いている灰色の線は、抽象度を低くした細かい感情の動きだ。反対に抽象度を高くしたグラフだと以下になる。同じ物語を3段階の抽象度で解析している。

ちなみにBDSMの意味はストーリー論とはあんまり関係ないが、この物語の男性の価値観を象徴している。この価値観とヒロインの価値観が融合すると感情が高ぶるが、拒否すれば感情は落ち着いて沈んでいく。物語は異なる価値観のせめぎあいだ。

そして上記の抽象度は、以前紹介した下の6パターンに比べたら若干細かい。前回の以下のグラフはちょっとだけ抽象度が高い。少しおおざっぱだ。

抽象度が高いとパターンは少なく集約される。なのでこの抽象度で解析するなら6パターンで、もうすこし細かく解析したものでは7パターンになってる。

具体的には上記の6番目の「笑い話」の最後の感情線を上に伸ばした以下が、「ベストセラーコード」では別物として7番目にカウントされている。ハリウッドの典型的なハッピーエンドだ。

つまりこの2つの説はかなり似通っている。抽象度が違うのが最も大きいと思う。あらためてこの「ベストセラーコード」を参考に7パターンでの分類をまとめてみた。

※まとめるために抽象度を少し高めています。

基本は感情が上下するジェットコースターで、どの時間を切り取るかによってストーリーが出来る。前回の記事と同様、悲しみが喜びを支えていることがよくわかる。

あとこの本で面白かったのは、ベストセラーの典型として登場する「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」が、なぜか日本だけあんまり話題にならなかったこと。

なぜだろう?

この本では小説をプロット(ストーリー)とトピックス(何を題材に書かれているか)に分けており、この本のトピックスが日本に合わなかったのかもしれない。

また、ウケるキャラクターの解析も面白かったけど興味ある方のみで。漫画の原作で習うんだけど、「主人公は主体的でなければいけない」という話を裏付けていた。

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