重力波と禅の公案とスティーブジョブス

2つのブラックホールが衝突した際の重力波が観測された…このニュースは興奮する人と「知らんわ」と思う人に二分されるだろうけど、関心を呼ばない原因の一つは、「重力波の何がすごいの?」と問われた科学者の多くが、「宇宙がもっと観測できます」といった、とても自分ごと化できない説明をしているからではないだろうか。

重力波の発見は電気の発見と同じようにどでかい事だ。電気も18世紀中ごろに科学的に観察されはじめたが、当時も「だからどうした?」という反応だった。日常生活に活かされはじめたのは100年以上あとの19世紀後半だ。

電気も観察からはじまり、発電できるようになってから一気に実用化が進んだ。重力波も観察ができたのだから、遠い未来で重力波を作れるようになれば、日常生活でも重力波を使ったツールが使われていてもおかしくない。

電気も電化製品が登場して初めてその価値が理解された。重力波も未来で重力製品が登場すれば見方は一変し「だからどうした?」と言われなくなる。

例えば大阪のおばちゃんがスーパーで買い物をしすぎた時に、重力波を使って買い物袋を一時的に軽くし、家に持ち帰る…そういった風景が普通になりかねない。そもそもおばちゃん自体が浮遊してスーパーに行くかもだけど。

そうなって身近になってはじめて、重力波って生活に欠かせないわね、ということになる。「宇宙がもっと観測できます」ではまだピンとこない。現在はAIが登場するSFの物語が急増しているが、今度は重力波をテーマにしたSFも増えるのではないだろうか。まずは雑誌「ムー」からかもしれないが。

電気が観察されるまで、さまざまな自然現象は謎だった。ベンジャミン・フランクリンが1752年、凧を揚げて雷が電気だと観測するまで、雷は謎だった。そして雷のように、原始的な観測は巨大なエネルギーを観測するところから始まる。重力波もブラックホールの衝突するくらいの巨大なエネルギーでないとまだ観測できない。しかしやがて微細な電波でも観測できるようになったように、重力波もどんどんと小さなモノでも観察できるようになり、そうすると雷の謎のように、さまざまな謎が解明されていくのだろう。

例えば現在、人間の感情が離れた場所にある量子に影響を与えることが観測されてる。なにかを媒介にして伝わっているはずだが、それがなんなのかは分かっていない。例えばそれを伝達しているのは重力波かもしれないのだ。

だからなんだと思うかもしれないが、例えばこのことを発展して、生物は重力波を利用して互いに感情を通信していた、という設定の物語も書ける。

これに関連して思い出したのは禅問答で最も有名な「隻手の公案」だ。両手を叩くと音がでる。では片手ではどうか?とう謎かけだが、これについて、スティーブ・ジョブスが愛読していた鈴木俊隆の「ビギナーズ・マインド」では、両手が鳴る前に、片手は既に鳴っているんだという記述があった。

例えばブラックホールが衝突して重力波が観察できたが、衝突しなくても、重力波はどこにでもある。小さすぎて見えないだけだ。ちなみに禅は無意識と意識の問題を扱っているので、両手は意識、片手は無意識の象徴だ。

意識ははっきり見えるが、その意識が発生するまえに、無意識はすでに存在している。両手が鳴る前に、片手は既に鳴っているというわけで、目立つ両手ではなく、片手(自分)を見つめなさいという警句が含まれている。

重力波の話も、ブラックホールの衝突だけではなく、我々を囲んでいる重力波、重力場を観察、コントロールできるようになったらなにができるか?に注目した方が面白い発想につながりそうだ。

また重力でいえば、気鋭の物理学者「リサ・ランドールのワープする宇宙 5次元時空の謎を解く」がめちゃくちゃ面白い。この世の中は3次元+時間の4次元ではなく、もう一次元ある5次元の世界だ、という説だ。

なんで5次元かというと、量子レベルの極小の世界では、量子がワープしているかのように見える現象が発生する。そしてそもそもワープとは、次元の違いから生じるものだからだ。

例えば映画の二次元のスクリーンでは、場面が大胆に転換し、ある女優が歩いていると次のカットでは(ワープして)別の場所にいるように映る。しかし女優は三次元を移動しているだけで、ワープなどしていない。

つまり、一つ上の次元で起こった現象は一つ下の世界ではワープしているように見える。そしてこの我々が生きている世界も、量子世界でワープしまくってるのなら、もう一つの次元がないと、ワープしている説明がつかないから、5次元なんだろうという話だ。

そしてここでも重力がキーワードになる。リサ・ランドールの説によると、5次元と4次元を行き来できるのは重力だけだという。そしてそれはなぜ重力波がなぜこんなに微小で観察しにくいのか、それが5次元から来ている力ではないか…と説が続く。特にオチはないけど、世界て本当に面白いよね。

■関連本
ビギナーズ・マインド
リサ・ランドールのワープする宇宙 5次元時空の謎を解く

ちなみに本文で触れた隻手の公案の説明は禅では邪道とされてます。それについては「丙丁童子来求火」という公案がわかりやすいですが、余談なので興味がある方だけがご覧ください。

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