マストドン(Mastodon)とサピエンス全史が描く幸福論

いま話題のマストドン(Mastodon)のインスタンス(サーバ)がボコボコ立ち上がるのを見て「ああ、この感覚なつかしい。インターネットだ」とコメントしている人がちらほらいてほっこりした。とてもフリーダムな感覚。

だって新卒が社会の洗礼をうけていく一方で、ドイツの24歳が開発したアプリケーションを日本の22歳の学生がサーバに組み込み、またたくまに世界一の登録数のインスタンスとなるなんて自由じゃないですか。

そんな出来事はネット黎明期によくあったんだけど、いつのまにか段々と見なくなった。戦国時代も時が経つにつれて大国に収斂していくように、バラバラにくだけたものはやがて大きなものにまとまっていく。

けれでもMastodonは分散型で「バラバラになろう!」という明快な方向性をもっているのが素晴らしい。Mastodonがどうなるかはわからないが、ブロックチェーンも含め、分散していくのは今後大きな流れになるどん。

なぜか?

ちょっと回り道になるけど、最近だと話題の本「サピエンス全史」がヒントになる。

この本はざっくりいうと、「なぜ科学が進歩しても幸福にならないのか?」というのをテーマに、その原因が「農耕文化のせいだった」という驚くべき解答をもってきている。

実はどんな業界でも、我々の多くは農業をやっている。例えばIT業界でも、今でいえばアドプラットフォームという畑をせっせと耕すのが熱い仕事だ。つまり成果物は違えど、その考え方は次のような農業的な思考なのだ。

・たくさんの人が同じ場所に集まり
・組織的な体制で畑をたがやし
・できるだけ恒久的に作物を得る

うん?素晴らしいんじゃない?

いや実に素晴らしいんだけど、次のようなおまけがついてくる。

・たくさんの人が同じ場所に集まり → 通勤地獄
・組織的な体制で畑をたがやし → 上司と社内の人間関係で悩む
・できるだけ恒久的に作物を得る → バカになって奴隷化

めっちゃざっくりいうと、農業的思考は「集団であつまった方がいいよ」という考えかたなので、「集団でのストレス」は避けようがない。

いわば生活と幸福のパラドックスなわけだが、いつまでそんなジレンマにおちいっとるねん?アホちゃう?という壮大なツッコミが「サピエンス全史」の面白いところだ。

余談だが、結婚においてよく言われる「旦那はATMとして離さず置いておきたいが、近寄られるとうっとおしい」「旦那元気で留守がいい」というのも典型的な農業的思考だ。

さて、話はもどる。

こういった思想的な背景もありつつ、いいかげん分散化のテクノロジーも進化してきたし、「もうちょっとバラバラになってもいいんじゃね?」という考えのうねりがやって来ている。

実際にリモートワークをする技術は揃ってきているし、一人でできることも多くなっている。

「だから一人になろう!」

ってのは極端。多くの人はそこまで強くない。ドストエスフキーの「罪と罰」の大審問官にめっちゃ怒られる。説明めんどいのでぐぐってみて。

そこで出てきたのがゆるやかなつながりであり、いい意味でのフィルターバブル(ネット上だと似た考えの人が集まる)であり、マストドンでいえば連邦制(自分が所属するサーバはあるが、他のサーバともつながれる)だ。

つまり農業的思考の「みんな一緒」と狩猟的思考の「一人で狩る」を混ぜ合わせ、「一緒のままバラバラになろう」という、先ほどの生活と幸福のパラドックスを、矛盾そのままに抱えて生きていこう、ってのが課題になる。

そしてその矛盾を、テクノロジーで支えていこう。じゃあどうやるのか?ってのがこれからのフェーズで、分散化というか「もっとバラバラになる技術」が今後どんどん出てくる。それよってはじめて、

「なぜ科学が進歩しても幸福にならないのか?」

という問いへの解答が出せるようになっていく。

だからマストドンってもう終わってるよね、というのではなく、どうなるかわからないけど試みとしては面白いじゃないですか!と思ってる。

とここまで言う以上、自分もやってみようということで、この週末にプログラマーの志水さんの力を借りて、マストドンのインスタンスを立ち上げてみた。感謝。ご当地サイト「chakuwiki」を10年運営してるのでその延長で。

chakudon - ご当地のマストドン
https://don.chakuriki.net/

私のマストドンのプロフィールはこちらで、当然違うインスタンスの方でもリモートフォローできるので歓迎してます。

谷口マサト@chakudon
https://don.chakuriki.net/@chakudon

いやーしかし、マストドンをみて久しぶりに戦後日本を代表するプロデューサー「小谷正一」の名文句、

いつだって時代は過渡期だし、キャンパスは真っ白なんだよ

を思い出した。この言葉は1970年頃、小谷の部下が「小谷さんが活躍した戦後がうらやましい。あの頃はなんでもできたのに、今はもう全部できあがってて、何も新しいことなんてできない」と言ったことに対する答えだ。

なにはともあれ、1996年。アメリカの空手修行から帰ってきて、ヌンチャクしか持ってなかった24歳の時の気持ちを思い出しただけでもマストドンには感謝。

※追記。続編書きました。

マストドン(Mastodon)のインスタンスは人数よりもテーマで選んだ方がいい理由

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

読んでくれてありがとう!

ありがとー
19

京都式カメラ|谷口マサト

和や京都の写真をつれづれに。マンガ原作者&LINE社チーフプロデューサー。著書『バカ日本地図』等7冊。企画 http://bit.ly/2fGEhN8 Voicy http://bit.ly/2Fzrr0h ※このnoteへの執筆ご相談はfacebookでメッセージください。

【ライブラリ】notes

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。