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なぜおじさんになると小鼻をヒクつかせるのか、ようやくこの歳になって分かった気がするので共有する

「こちらのまきを1㎏無料でお渡ししております。」

先週末、淡路島のとあるキャンプ場に行った。受付をすませると、どうやらその日限定の“プレゼント“企画をしていたようで、いくらあっても困らないまきを無料でくれるというではないか。

え!?そうなんだ。

相場で言うと150~200円くらいの代物しろものだが、控えめに見積もっても感激である。
本当は、腹から喜びたい。
ウェッヘッヘ~と悪代官の顔をして笑いたい。

しかし、日本社会は古くから「お金」をやたらと欲するような言動や、無料のものを欲しすぎるといやしいものであるとされてきた。

さすがにアラフォーおっさんが、
受付の美人のおネェさんの前で
露骨ろこつに我を忘れてヤッタ、ヤッタとよろこぶわけにはいかない。

「あ、ありがとうございます」
と感謝を示したが、
その後に口で爆発するはずだった‘’笑う‘’という感情は、行き場を失なってしまった。

無料にむさぼりつくキモいおっさんだと思われたくない。そんなしゃに構えたボクの本性が顔をだしてしまい、どことなくクールなキャンパーのキャラでいってしまった。

抑制よくせいされたこの感情。
いったいどこにもっていけばいいのだろうか。

人間には、そんな感情の着地点として、小鼻がある。すこし鼻の上の方において、小さく感情が爆発する。

これは「小鼻がふくらむ」という現象である。

無料と言われてから10秒くらいが経過したのだろうか。我慢の限界に達した感情が、やがてマニュアル通りに“小鼻をふくらませる“という動きをみせた。
そして脊髄反射的にヒクヒクと動いた。

ボクの小鼻が。

あ、そういえば。

そういえば25年くらい前のことだ。
当時、ボクは高校生だったが、
ある日、アラフィフだった親父が買いもの袋いっぱいにコップを買って、家に帰ってきた。

「これさあ、1個いくらだと思う?」

右手にパンパンに膨らんだ袋をもって突っ立ち、左手でテディベアのえがかれたコップを家族一同に見せながら質問してきた一家のあるじの顔は、

それはもう、
妙に嬉しそうだった。

10代だったボクはいったいナニが起こったんだ、と思った。

4人家族。
普通に暮らしてりゃあ、袋に入っているとみられる10個以上の新しいコップなんて、絶対にいるはずがない。数年すると姉貴もボクも大学に行き、この家からはいなくなる。

いや、今。
そもそも現時点だって不要だ。

むしろコップなんて、
やれ、結婚式の引き出物やら、
やれ、修学旅行の土産みやげやらで、
使わないまま箱入りした状態のものが食器棚の奥の方にいくつも眠っている。

なぜ我が家にこんな大量のコップがいるのだろうか。親戚しんせき一同が近々ちかぢか押し寄せてくるのだろうか。
ボクは頭に100個くらいのクエスチョンマークを浮かべながらも

「そうだな、1個500円くらいかな」

と答えた。
母親と姉貴は、自らで考える素振そぶりすらみせずにボクの価格予想にすり合わせて面倒臭そうに「500円」と言った。

「ハハハ。実はこれね。1個100円なわけよ」

正解を伝えたときの親父は、妙に嬉しそうだった。よくみると小鼻がふくらみ、ヒクヒクと動いていた。

世の中に100円均一がでてきたばかりの頃で、さらに流行を感じない‘’ど田舎‘’にある我が家にとって、コップが100円というのはたしかに衝撃的ではあった。

しかし、安いからと言って、妙に嬉しそうにしている。
なんなのか?
なぜ小鼻をふくらますのか?
この男は一体、何を言っているのか。
理解不能であった。

しかし40歳を過ぎた今、なんとなく理解しはじめた。というのは、‘’格安‘’のものを手に入れたり、‘’無料‘’でもらったりすると、それがちょっと嬉しい。

いや、かなり嬉しい。

「俺さあ、スマホほとんど使わないから、楽天モバイルで月額0円やねん」

いったい何度言ってきただろうか。

部下に貧乏なのか?
と心配されるほどに言ってきた。
取引先との雑談でも言ってきた。
何度言ったか分からないけど、もちろんセットで小鼻もふくらんでいた。

あの日、親父の小鼻がふくらんだように、25年の時をへて、そのDNAは子に受け継がれ、無料や格安のものを人に自慢するとき、ボクの小鼻もふくらんでいるわけだ。
そして漏れなく小鼻はヒクつく。

ヒクヒクと。

人間というのは、年をとるほど感情と抑制の板ばさみになっていくが、
それを象徴するのが小鼻という部位であり、爆笑のかわりに小鼻をヒクつかせる習性しゅうせいなのだ。

こんなツイートがバズってた

チェロ奏者の玉川克さんが、依頼主からノーギャラでの演奏を希望されたことに対して、その非常識さをこのような形でつぶやいた。

依頼主はYESをもらって小鼻をふくらませたかった気持ちはわかるが、
そもそもこれで生計をたてているプロ相手に、なんと言って交渉をしたのだろうか。
赤の他人、ましてやその世界では有名のプロ相手に、さすがに直球勝負したとは思えない。

ギャラは出ないんですが、、、のその先。
ボクにはそれが気になって仕方がない。

‘’フォロワー数3万人のボクの動画で公開しますから‘’

‘’お昼と夜は豪華な食事をご用意いたしますから‘’

こんなことを言って交渉したのであろうか。それであれば、そこにメリットを感じないプロからすると失礼極まりない話であろう。

そういえば、ボクのことをnoteの師としたい、そして愛してやまない

‘’すみよ‘’さん

という、バンクーバーで中高生向けに国際交流サークルを運営するnoterさんがいるが、先々月同様の記事を書かれていたのを思い出した。

これを読むとカナダ人と日本人の無形のサービスへの価値観の違いがよくわかる。
チップ文化のない日本人はやっぱり無形サービスへの評価は低い傾向にある。

すみよさんご自身も、日本人の参加希望者から、
‘’オンライン国際交流サークルに参加するのは、お金はかかりますか?‘’
と、小鼻をふくらませながら、そしてヒクヒクさせながら聞かれることがたまにあるようだ。

ボクのことを愛してやまないという時点で、やや偏屈へんくつでゲテモノ好きで変態であるという最低限の想定は出来るが、

それは置いといて、

多感な時期である中高生が日本にいながら毎日、留学体験ができる仕組みをつくって運用してんだぜ、この人。

って、少し考えたらその価値がわかりそうなことなのに、利用する側は「ダメもとで聞いてみよう」という感覚におちいってしまうのであろう。

もちろんボクは、プロに‘’無報酬で依頼するなんぞ非常識だ〜!‘’とは思うが…

一方でプロには、
即時報酬ほうしゅうを求めるプロと、
未来の報酬ほうしゅうを期待するプロが
混在している事実がある。

だから残念だけど、
‘’プロに無償で仕事を依頼する人‘’は、
いなくはならない。

きっと。
と、いうかもっと拍車がかかる。

これで生計を立てたいと思ってはいても、まだまだ修行中のひよっこで、
‘’タダでいいので仕事をください!‘’
と頭を下げて回るプロは少なくないし、

売れているプロであっても
‘’インフルエンサーに広めてもらうことで将来的にもっとプラスになる‘’
と判断して、無償で仕事を受けるケースだって珍しくない。

そうすれば、‘’プロ‘’の報酬や価値はそれだけ下がってしまうが、
プロ自身、気まぐれや経験値、売名、宣伝で自分の‘’商品‘’をタダで配ることって、今の時代では日常となった。

玉川克さんに異論する気は毛頭ないが、
物販であろうとそういう場面はある。
冒頭に話した‘’無料のまき‘’だって、もちろんスポンサーの‘’QRコード‘’がデカデカとついていたし、

極端な例で言うとYou Tuberのヒカルさんが「タダでラーメン食べさせてください。撮影しますから」と言えば、ほぼ100%のラーメン店主は喜んでOKするであろう。

ビジネスの形が変わったのだ。

で、あるから、タダでもらえる可能性がある以上、「条件をつけてダメもとで頼んでみよう」と思う人がいるのも理解はできる。

依頼者にとって大事なのは
‘’自分の要望を叶えてくれるかどうか‘’
であって、その人が「プロ」を自認しているかどうか、どうやってカネ儲けをするかは関係ない。

他人事のように「そんなやつは非常識だー」と叫んでいるボクであっても

無料でくれるというまきにわざわざお金を払うことはないし、

同じくらいの能力で、
「きちんと報酬を要求する人」と
「無報酬でもいいからやりたい人」
がいたら、小鼻をふくらませて、そして漏れなくヒクつかせながら後者の方を選んじゃうと思うし。

プロが無報酬の依頼をされることは寂しいが、イヤなら断るしかない。

ビジネスの形が一昔前と激変し、
即時報酬ほうしゅうを求めるプロと、未来の報酬ほうしゅうを期待するプロが混在する以上、「プロに無償で仕事を依頼する」人はきっと、いなくはならない。

もっというとプロじゃなくても素人でもある程度できる人がいる分野
‘’プロレベルの素人‘’や‘’プロよりうまい素人‘’がゴロゴロいる分野において、無償依頼の問題は必ずついてくる。

そうなると結局、無形サービスの正しい価格は「市場」が決める、というのが正解となる。

だからプロは依頼されてリターンに納得がいかない、条件が合わないのであれば、交渉するか断るという、一段階面倒なプロセスが入る時代に突入したと言えるのだろうね。

まあでも考え方を変えるのであれば、
ちょっとした依頼や、親密なあいだからでも、面倒なプロセス抜きでしっかりと報酬を払ってくれる人を、よりいっそう大切にすればいい、という考えもでてくる。

note有料化のように。

そう。有料化。
ボクのnoteもいよいよ有料化にし………

で、でもな、3800文字も書いていながら2000文字を小鼻の雑談に費やすようなボクが有料にするなんて、遠い世界の話だ、って改めて無謀な話だって気づいた。

これからも無料記事を
鼻をふくらませて、ヒクつかせながら鼻息荒く読んでいただけたら、

そりゃもうとても感激っす。

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