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秘かに進むショック・ドクトリン「不要不急の種苗法改悪案」

「ショック・ドクトリン」とは、「惨事便乗型資本主義」や「火事場泥棒資本主義」ともいわれ、人々がショック状態や茫然自失状態から自分を取り戻し社会・生活を復興させる前に、過激なまでの市場原理主義を導入し、経済改革や利益追求に猛進することを意味する。

今まさにこの「ショック・ドクトリン」が「種苗法改正案」で実施されようとしているが、マスコミではほとんど取り上げられていない。
種苗法改正については、山田正彦 元農林水産大臣がかねてより警鐘を鳴らし続けてきたものである。


現在、感染症騒動の裏で国会に「種苗法改正案」が提出されている。
これは、農家が作物の一部を採って繰り返し育てる「自家増殖」を原則禁止し、農家に企業などから種や苗を買うよう強いる法案だ。

その種苗法改正案では、施行は2022年の予定だが、なぜか「農家の種とり禁止」の項目のみ2020年12月から施行されようとしており、八千品種余の国の登録品種が対象となる。


種子には2つの種類がある。

■F1種:自家採種ができないように品種改良されているため毎年企業から購入することが前提となっているもの。

■在来種・固定種:農家が伝統的に前年の収穫から一番良質な株の種を採取する自家増殖(自家採種)が可能なもの。

種苗法の改正により在来種・固定種の登録が可能になってしまえば、農家は先祖代々自家採種してきた種を使って作物を作っていたら、種を登録した企業からある日突然訴えられてる可能性があるのだ。

事実、カナダではモンサント社が自社の遺伝子組み換え作物を許可なく栽培していると農家を提訴したが、農家には全く覚えがないので調べてみると風に乗って遺伝子組み換え作物の花粉が農家の在来種と交雑していたことが判明した。農家には交雑を物理的に防ぐことが不可能であるにも関わらず、農家が敗訴しており、類似の訴訟が世界で500件以上も起こされた。


もともと種苗の開発は国や自治体の仕事で、「種苗は公共財産」という考えが農家には強かったが、2017年に制定された「農業競争力強化支援法」では、都道府県が持つ種苗の知見を多国籍企業も含めた民間に提供するよう求めている。
都道府県に優良な米や麦の生産や普及を義務付けた「主要農作物種子法」は2018年に廃止された。


東京大の鈴木宣弘教授(農業経済学)は「国内品種の海外流出を防ぐという大義は理解できる。しかし、日本でも世界的流れと同様に、多国籍企業が種苗を独占していく手段として悪用される危険がある」と指摘する。


バイオ企業トップ4
1位:独バイエル(モンサント買収)
2位:米コルテバ・アグリサイエンス(ダウデュポン分離)
3位:スイス・中国シンジェンタ(ケムチャイナ傘下)
4位:独BASF


「日本の種子(たね)を守る会」は、次のように主張している。(抜粋)
https://www.taneomamorukai.com/

自家増殖禁止、品種登録制度の全面化に対して

種苗を開発し品種登録可能なのは、投資額と開発時間などにより、主に公的機関か大企業が占めることが想定されます。その公的機関を縮小しその開発知見を民間に移管するとする農業競争力強化支援法の下では、特定多国籍企業による占有が危惧されます。
農水省は自家増殖禁止は世界のスタンダードであるかのように言いますが、米国でも EU でも主食などその国に重要な作物には例外として許可されており、今回の改正案のように例外なしで一律に許諾制にしてしまう国は世界のどこにもありません。


「遺伝子組み換え種子」栽培の規制と表示義務と「ゲノム編集」種子と苗に対して

ゲノム編集技術は明らかに人為的な遺伝子操作技術であり、遺伝子組み換え技術と別に分けてゲノム編集技術は安全に問題ないとする解釈は無理があります。遺伝子組み換えを規制し表示する法の原則に従い、ゲノム編集による種苗を同等に規制すべきです。
ゲノム編集技術の根幹を占める CRISPR-Cas9 にはその特許権を巡り、巨額な訴訟 が行われており、本格的に実用化する際には高額な特許料の支払いが必要で、その開発は結局、巨大企業に独占されることになります。これらの技術を優遇することは、中小規模の日本の農漁業者の競争力強化にも発展にも繋がりません。
生協組合員など消費者にとって、遺伝子組み換え食品の多くは明確な表示がある場合は忌避されています。そのため逆に表示を無くそうというのが開発企業の意図だと思われます。しかし世界各国とも規制及び表示の義務化は加速しています。日本だけが、ゲノム編集食品を自由化することで、こうした流れに孤立し海外輸出の阻害要因となることが想定されます。


アグリビジネスでは「F1種」「化学肥料」「農薬」の3点セットの販売を目的としており、ロイヤリティも要求される。
さらに、EUでは遺伝子組み換えやゲノム編集食品を認めていない。


国会に提出された「種苗法改正案」は、日本の種苗を特定多国籍企業による占有状態にし、一般農家を疲弊させると共に安全性に疑問の残る遺伝子組み換えやゲノム編集食品の実験のために日本人をモルモットにする可能性のある「改悪案」といえる。

これは、国民が困っているこの時期に急いで審議する内容ではない不要不急の法案である。

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