全身タイツ・顔出し着ぐるみストーリー 「忘年会」

石川千里 23歳、とある会社で働く新人社員だ。

12月のある日、会社の忘年会が開催された。
その中で、今年から始まった新たなイベント、営業成績最下位の新入社員罰ゲームの時間が訪れた。
今年の最下位は千里だった。
営業成績最下位、その結果が彼女に恥ずかしい役割をもたらしたのだ。

上司の大河内は言う「石川さんには、白の全身タイツを着て、我々が出した指令をこなして貰います!」
会場が盛り上がる。

彼女は身を縮めながらも、白の全身タイツを着せられた。そして箱から出てくる紙に書かれた指令を一つ一つこなしていくことになった。

最初の指令は「変顔」だった。千里は苦笑しながら、大きく目を見開き、寄り目をし、精一杯に舌を出す顔を作った。周囲からは一斉に笑い声が上がった。

続く指令は「顔面パンスト」だった。
彼女は一瞬固まったが、必死になってパンストを頭からかぶった。
顔が歪む中、千里は周囲からの笑いに耐える。瞳はパンスト越しに透けて見え、口元は苦笑いに歪んでいた。

「さすが石川さん、我々を楽しませてくれるね!」と大河内が笑いながら叫んだ。
「これも仕事の一環ですから。」と千里は言った。その答えに周囲は更に大笑いした。

その夜、千里は恥ずかしさに耐えながらも、一つひとつの指令をこなしていく彼女の姿は、何とも滑稽な一幕だった。

忘年会はまだ終わらない。千里がタイツ姿のままで箱から引き続き指令を引くことになった。
次の指令は「会社の商品に関する顔出し着ぐるみを着て忘年会を過ごす」だった。千里は困惑した表情を浮かべながら、箱から大きな着ぐるみを取り出した。それは会社が扱う健康食品「スーパーミネラル」のパッケージデザインを模したものだった。
巨大な薬の瓶を模した着ぐるみを着ると、周囲からは爆笑が湧き起こった。

全身タイツに続き、今度は顔出し着ぐるみ。さらに指令は続き「2週間その格好で会社に来る」と書いてあった。周囲からは驚きの声が起きた。
千里の顔は紅潮し、恥ずかしさで目を閉じた。

その後も忘年会は続いたが千里はあまりの恥ずかしさ故にそれ以降の記憶は無かった。

そして翌日から、彼女は2週間全身タイツ姿で会社に通った。
同僚たちは当初は大笑いしていたが、次第にその姿にも慣れ、笑いはなくなった。そして千里は、その姿で真剣に仕事をこなすことになった。
しかし営業成績は逆に下がり、彼女はますます窮地に立たされた。

最終日、千里は全身タイツ姿で会議室に入った。「よくやったな、千里。これも試練だ。」と大河内はほほ笑んだが、彼女の心情を察することはなかった。
罰ゲームは終わったが、千里にとってその影響は大きかった。彼女は深く溜息をつきながら、これからどうやって立ち直るべきかを考え始めた。失意の中、彼女の新入社員としての初年度は幕を閉じた。




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