看板

井上静香は不動産会社「ホームフレンズ」の若手営業マンだった。
ある日、静香は会社の同僚から飲み会に誘われた。しかし、その飲み会は罠だった。彼女は薬を盛られ、眠ってしまう。

目を覚ますと、静香は見知らぬ場所にいた。自分の身体が立っている看板に固定されている。看板のそれぞれの穴から顔、手、足を出している状態で、動けない。さらに、自分の身に黒の全身タイツを着せられていた。

「な、何これ…」彼女が見下ろした先には、大通りの交差点があった。辛うじて動かせる顔で自分が何の看板から顔と手と足を出したか確認した。それは家の形をしたデザインで、静香の顔が屋根部分、手足が家の横と下部分から出るようになっていた。
「ホームフレンズ」の看板だ。

それに気づいた時、彼女は恐怖と恥ずかしさで顔を真っ赤にした。「こんな恥ずかしいこと、私がやるわけないじゃない!」静香は叫んだ。
しかし、周りを見ると、車や歩行者が行き交い、自分の姿を見て驚いている。ただ、彼女には何もできず、看板でドタバタするだけだった。

そして、静香の下に「ホームフレンズ」の社名と電話番号が大きく書かれていることに気づいた。「なんなのこれ…」と思いながら、静香は泣きそうになっていた。

静香は恥ずかしい姿で居続けるしかなかった。道行く人々の視線を感じながら、恥ずかしさと怒り、不条理さでいっぱいだった。誰も彼女の窮状を理解せず、ただ見ているだけだった。

何人かの若者が彼女の方へと歩いてきた。「やばい、あれ可愛い!」と言って、彼らはスマホを取り出し、静香の姿を撮り始めた。

「やめてください!」と叫んでも、彼らは笑いながら撮影を続ける。絶望的な気持ちになりながら、静香はただ泣くしかなかった。

恥ずかしい姿をさらけ出され、人々に笑われ、撮影されるという苦痛は、静香にとって一生の傷となった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?