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メンバーを増やしても思ったより成果が上がらない理由

Scrum Inc. Japan株式会社で人事をしています、庭屋です。
「HR Scrum Master」としてチームを良くしたいと考えている人の味方になりたいと思い発信をしています。
4月になり、新入社員が入ってきたこのタイミングで「チームの増員」に関してリーダーが注意することをお伝えします。

「チームのやりたいことが追いつかないから人を増やそう」

皆様の周りでも一度は聞いたことのあるセリフではないでしょうか。
ただ、実際にメンバーを増員しても劇的に改善していない・・・?なんてこともあるんじゃないでしょうか?
なぜ増員しても思った成果が出ないのか、どのようにチームの成果をあげるかを解説します。

メンバーを増やしても思ったより成果が上がらない3つの理由

「ブルックスの法則」というソフトウェア開発業では有名な法則があります。端的にいうと「遅れているソフトウェアプロジェクトへの要員追加は、プロジェクトをさらに遅らせるだけである」という内容です。この法則の成り立つ3つのポイントからソフトウェア以外のチームにも当てはまるのがわかると思います。
①:新たに投入された開発者(チームメンバー)が生産性の向上に貢献するまでには、時間がかかる。
→背景情報の共有には時間がかかります。この項目に関しては「短期的に」成果が出ないことを理解していれば認識違いはなくなるかと思います。

②:人員の投下は、チーム内のコミュニケーションコストを増大させる。
→単純作業をするチームには影響はありませんが、メンバー同士のコミュニケーションを必要とする業務の場合は「コミュニケーションパス」を認識する必要があります。コミュニケーションパスとは、人が集まることによる1対1のコミュニケーションの数を言います。n人のチームにおいて は(n)(n-1)/2 本存在します。nの2乗に比例するので、闇雲な増員がチームを複雑にさせることを理解することが必要です。

図1

③:タスクの分解可能性には限界がある。
→30人日の仕事は2人だと15日、3人だと10日で完了できるように思えるかもしれません。ただ、タスクの分解可能性に注意する必要があります。例えば妊娠→出産はおよそ10人月ですが人を追加しても完了日(出産)は早くなりません。人を追加することでどのようなタスクが早くなるか適切に認識しておく必要があります。

このように、「ブルックスの法則」を理解すると人を増員すればそれだけ効果が出る、という単純なものではないことが理解できたかと思います。

リリースの軽量化と優先順位

ではどうすれば良いのか?について自分の意見をお伝えします。
「タスクを軽量化」して「リソースを集中」することです。
・タスクの軽量化
長い時間検討に時間をかけたものが無駄になった、という経験は皆さんもあるのではないでしょうか?無駄な時間を費やしてしまう原因としては以下が考えられます。
- 担当者と決済者の認識が違うまま進んでいた
- 当初の計画とは状況が異なることがわかり要件が変更になった
このようなことが起こらないようにするには[MVP(Minimum Viable Product)]の概念を理解すると良いと考えています。長くなるので今回は説明を省きますが、簡単に説明すると「機能を理解できる最軽量な試作品」と理解いただくと大きな間違いはないと思います。最軽量な試作品を早く作っていくことにより、無駄な時間を費やすことなく少しづつプロジェクトを前進させることができます。
参考:開発におけるMVP(Minimum Viable Product)の3つのアンチパターン

・リソースの集中
以前こちらでも説明しておりますが改めて。
そもそも現状このようなリソース配分で業務を行っていないでしょうか?

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一定期間作業はしていますが、成果物はチームからは出ていません。
一方こちらの仕事の進め方はどうでしょう?

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下の図の方が「早くリリースできた分、価値を発揮できる期間が長い」という優れた部分があるのがわかります。全部大事!で同時並行するよりも優先順位をつけて対応してみましょう。
ブルックスの法則の「タスクの分解可能性」に注意が必要ですが、チームとしての活動効果は目に見えて変化するので単純に増員するよりも効果を感じるでしょう。個人ごとにタスクを振り分ける形で運営しているチームにおすすめの考え方です。

まとめ

・やりたいことが追いついてないからといってメンバーの増員をするのは必ずしも効果を得られるわけではない。
・チームの実行していることを理解して解決策を選定する必要がある
・タスクの軽量化、優先順位づけなど今のメンバー数でも高速化することができる

少しでも皆様のお役に立てられればいいなと思っております。



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