私物


あぁまた割れている。


1ヶ月前に貼り替えたばかりなのに。


その前は2週間も持たなかった。


ずっと手に持っていたりポケットに入れていれば割れることはないけれどバッグにいれているといつの間にか端の方から割れている。


これを放っておくとどんどん広がっていくんだよなぁ。

また貼り替えか。





私のスマホの画面にはガラス製の保護フィルムが

貼られている。

どうしたわけかかなりの頻度で割れる。

バッグの中に入れた時だけ。


なぜだろう雑な扱いなどしないのに。



もしかして




いやまさか



私のバッグに限ってそんなはずは…




疑いたくなかった。



みんな良い子達だ


みんな私の為に頑張ってくれている。



しかしそのたったひとつの疑念は



貼り替えた3日後に


確信へと変わった。




また割れたのか。


これはもう確実に






バッグの中でイジメが起きている




スマホは比較的新参者だ。

ただ入れ替わりがないというわけではない。

寒くなればタンブラーが入るし、そのタンブラーだって一種類ではない。

メガネが入る日もあれば、筆記用具が入る日もある。



いつものメンバーといえば


スマホ、化粧ポーチ、財布、キーケース、

薬などを入れる小物入れ、ハンカチ。

おおよそこの6名がどのバッグにも移動させる事が

決まっているスタメンだ。


割れた頻度や状況を考えると

スマホを除く

この5名が怪しい。



まず1番初めに

この中で母的役割を果たしているハンカチに

問いただしてみることにした


私『最近、バッグの中で変わったことは?』


ハンカチ『変わったこと?特に無いわ!』


私『誰かと誰かが仲悪いだとか。』


ハンカチ『そうねぇ…ところであなた昨日

アタシの事洗ってないわよね?』


私『だって昨日使ってないし』


ハンカチ『やぁねぇ!毎日洗って頂戴!

あなただって毎日お風呂入るでしょう!!』


諦めた。



次の聴取は化粧ポーチと小物入れにした。


私『元気?みんなと仲良くやってる?』


ポーチ達『うん!やってるよね!仲良いよね!』


私『そうか。それはよかった。』


化粧ポーチ『でもさぁ最近ちょっと気になる

事があるんだよね、、』


私『え!なになに?』


小物入れ『わかるー。。最近ちょっとさ

いつのかわかんないお薬入ってて嫌なんだよね』


化粧ポーチ『そうそう、私なんか半年も使用期限切れてるコンタクトとかさ、粉々のファンデーションまみれ』


小物入れ『えー!それ嫌だー!くしゃみ止まらないのはそれが理由なんじゃない?!』


化粧ポーチ『わぁそうかもー。。』


私『ごめんって。』




次はキーケースに聞く。


私『キーケースさん、最近どうですか?』


キーケース『まぁまぁだよ』



私『嫌なこととか、雰囲気悪いなぁなんてこと

感じたりしない?』


キーケース『ないよ。ワタシの事は長く使ってくれてるしな、もう古株だよな。新しい子達もみんな良い子だ』


私『そう、、なんだ。よかった!これからも

宜しくね。』


キーケース『こちらこそ。

それよりさ、いつまでこの鍵つけてるつもりなんだ?』


私『え。あ、あぁ返してなかったのか!』


キーケース『別れてだいぶ経つんじゃないか?

鍵を持ってたってしょうがないだろう。

私にはこの鍵だけが重く感じる。早く外してくれ。

いつまでも同じ男を思いつ…』


私『わかった!ごめん、外します!!外しました!』





スマホ以外のあとの1人、

財布に聞く事にする



私の財布は金具部分に少し尖りがある。


平等に見ようと思っていてもおそらくこれが

原因なんじゃないかと疑ってしまっていた。



私『よ!元気?』


財布『あぁ。』


私『最近どう?』


財布『別に。』


私『なんか嫌だなぁなんて思う事ある?』


財布『ない。』


私『この人苦手だなぁとかさ、、』


財布『なにが聞きたい』


私『いや、なんかさ。バッグ中のみんなが

気になっちゃってさ。』


財布『そう。』


あまりに進まないので核心をついてみることにした。


私『スマホの事はどう思う?』


財布『別に。』


私『そっ、、か。』


財布『ただ』


私『ただ?!』


財布『いつもすぐ貼り替えられてたり。

いろんなカバーつけられたりしてすげぇなぁって。』


あ、やっぱり。ちょっとした格差を感じさせてしまっていたのかもしれない。それで面白くなくて、、


私『そうだよね。スマホばっかりって

思っちゃったよね。』


財布『まぁ、、そうだな。』



私『ごめん。。

でもね!みんな私にとっては大事だし、みんな大好きなんだよ!みんなの事、沢山悩んでこれ!!って決めたものだけを迎え入れててね。だけどね。だからね。もうスマホを傷つけるのはやめてほしい!!みんな仲良しでいてほしいっっっ!!!!!』



言いながら泣いてしまった。

つい感情的になってしまった。


この思いは財布に伝わっただろうか。





財布『は?』


ビクッとした…

伝わらなかったのか…

涙がさらに溢れてくる。


財布『いやいや、何言ってんの』


私『だから!みんな仲良く…』



財布『スマホ、お前自分で話せ。』


私『え…?』



スマホ『あ…なんか…ごめんなさぃ。あの…いやなんか…私みんなと仲良しです。みんな優しいし、みんなすぐ受け入れてくれました。』


私『でも画面が…』


スマホ『あ…すみません。。言いにくいんですけど…

いつもバッグの中ぐっちゃぐちゃで私硬いんでぶつか

るとすぐヒビが入っちゃうんです…この前はタンブラー

さんとあたまごっつんって…』


私『そうだったの?!』


財布『そうだよ!また貼り替えだなってみんなで

笑ってたんだぜ。

タンブラーの奴も角が少し欠けてるぞ!

あとお前、レシートの枚数の方が

札より多いのどうにかしろ!』



だらしなさが露呈してみんなの不満が

沢山出てきたけど、

私のバッグの中がみんな仲良しで

それでも私から離れないでいてくれることに

ありがとうの気持ちでいっぱいになったとさ。


1番不満爆発寸前であろうバッグ本人の話は

綺麗にしてから聞くことにしよう。













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