鬼を使って子どもに言うことを聞かせることの是非

SNSの育児・教育系アカウントなどでよく「鬼を使って子どもの行動をコントロールすることはいけません。」
と言われることがあります。
でも、私は別に鬼使ってもいいと思っています。その理由をお話ししたいと思います。

まず、鬼を使ってはいけないとされている理由としてよく言われるものは以下の4つでしょうか。
①子どもにとって鬼は本当に怖いもので、恐怖を与えて脅しで子どもをコントロールすると心理的トラウマになる。
②自分も脅しを使って人をコントロールするようになる。
③鬼がいないとわかる年頃になれば効果が無くなるし、親が嘘をついて自分をコントロールしようとしていた事実で親子関係に不信感が生じる。
④子どもが問題行動をとる心理や背景にきちんと向き合わず、手っ取り早く楽な方法をとるのがいただけない。

そして、以下はそれぞれに対する私の考えです。

①恐怖で脅して子どもをコントロールすることによるトラウマといいますが、「歯を磨かないと虫歯になるよ」とか、「早く服を着ないと風邪をひいてしまって病院にいくよ」なども、おなじく恐怖で脅して行動をコントロールしているのだけれど、それは鬼ほどトラウマだの恐怖によるコントロールだなどと言われることはあまりないですよね。両者はどう違うのでしょう。
鬼は嘘だからダメであり、虫歯や病院は事実を論理的に伝えているのだからよいと言うことでしょうか。
鬼は本当は居ないからこそ、事故や犯罪、虐待などのように実際にその恐怖を体感できません。あくまで子どもの想像の中でしか存在できない。子どもが想像できる範囲のレベルの恐怖なのです。それが、後々まで深刻な影響を与えるトラウマになるでしょうか?私はそうは思いません。
②自分も脅しを使って人をコントロールするようになる、ですが、これは鬼に関係なく、どの子どもも成長過程で必ずやると思います。「意地悪するなら仲間に入れてあげない!」「おもちゃ貸してくれないなら一緒に遊ばない!」などなど。これで子どもは駆け引きを学び、人が嫌がることはしない、悪いことをすると自分に返ってくる、ということを学ぶのだと思います。だから、鬼を使ったから脅すようになるとか、脅すようになったらダメ、というのは安直かなと思いました。
また、鬼を信じなくなるような年齢で、いわゆるいじめやカツアゲなど、許容できない範囲で脅して相手に言うことを聞かせる場合もありますが、これは鬼以上に深刻な別の問題があると思います。
③鬼がいなくなるとわかる年頃に効かなくなる、嘘をついてきた親との信頼関係に影響が及ぶ、についてはどうでしょう。
鬼がいないとわかる年頃になれば、理解力が高まるので話し合いで解決できる、もしくは自分がどう行動すべきかを自分で判断できるので、鬼なんか使う必要がなくなります。また、親との信頼関係ですが、これは程度問題で、信頼関係にヒビが入るのはよほど重大な嘘に限定されると思います。子どもとの約束を破るための嘘、子どもを陥れる嘘などです。鬼は、子どもの問題行動を改めさせるため(つまりは子どものための嘘)であり、それが嘘だとわかる年齢になれば、親が自分のために嘘をついているのか、親自身の保身や楽のためにしている嘘なのか区別できると思います。そもそも、他の面で信頼関係を築けていれば、実は鬼が嘘だった、脅しを使って騙された!ということをそこまで深刻に捉える子どもも少ないと思いますけどね。私もそうです。
④手っ取り早く楽に子どもを動かすのがいただけない、という理論。確かに、子どもの顔もみず、手っ取り早いし時間の無駄だからと何でもかんでも鬼を出すのはよくないと思います。あくまで、手を尽くしてもダメな時、正攻法じゃ効かない時に使うものだと思っています。ただし、これは親が楽をすることを否定する趣旨ではなく、子どもの問題行動の根本原因に関心を向けなくなることが問題だからです。
基本的に、鬼を使っている親のほとんどは、子どもに言葉で説明し、あの手この手を尽くしている、あるいは仕事や家事育児、ワンオペなどで疲弊し、子どもの機嫌を取る余裕がない場合が多いかと思います。子どもは時に、一度機嫌を損ねると本人も訳がわからないままに全てを否定したくなって収拾がつかなくなることがあり、そういう時にはどんなに論理的に正しい説明をしたり、本人の機嫌を取るためのあらゆる手段を用いたりしても、子どもが「それでもイヤなの!」「虫歯になってもいいもん!」「明日朝起きれなくてもいいもん!」などと言ってお手上げ状態になります。こういう時に、時間と体力に余裕がない人は、根比べして2人とも疲弊してイライラするより、鬼を出して一瞬で片付ける方がはるかに平和です。(もちろん、根比べや、イライラを子どもと共有し、共に耐えて乗り越えることも重要な体験ではありますので、何でもかんでも摩擦や衝突を避ければいいというわけではなく、親子で共に不快感情を抱える練習も必要です。)
そして、そもそも鬼を使ってでもやめさせたい、あるいはやらせたい行動というのは、子どもにとって望ましい行動を取らせることが目的ですよね。そうであれば、少しでも早くその行動をとらせることが親にも子にも利益になるわけで、①〜③で説明したとおり、鬼を使うことに大きな問題がないのであれば、いち早く望ましい状態にさせることにそれほど問題を感じないです。

長くなりましたが、鬼のこと、そこまで深刻にならずに、無理ない範囲で子育てをしたらいいと思います。
ただし、子どもが言うことを聞かない根本原因に目を向ける姿勢だけは常に維持すべきです。子どもが怖がる姿が面白いとか、子どもをコントロールできる快感を理由に、鬼を使うことがないように。

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