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イネ科は策士

図書館から借りてきた『世界史を大きく動かした植物』、
返却期限が近づいてきて焦っています。
ネット書店で改訂版らしき文庫版を注文しつつ、
気になるところはnoteに書いてしまおう!ということで、
今回はイネ科の話です。

過酷な環境で生き延びる

イネ科の植物は、乾燥した草原で発達しました。
動物たちが少ない植物を、先を争って食べる過酷な環境の中で、
生き残るために様々な工夫をしながら発達してきました。

単子葉植物

種から最初に出てくる子葉。
この子葉が、朝顔のようにふたばが出てくる植物を双子葉植物。
子葉が一枚のものが単子葉植物です。
イネ科は単子葉植物です。

双子葉植物は、茎の断面にリング状の形成層と呼ばれる部分があり、
茎を太くし、枝葉を広げ、大きくなるために役立っています。
ただその分、成長するのに時間がかかります。

一方、単子葉植物は、形成層をなくすことで、丈夫で複雑な枝分かれ構造をあきらめました。成長スピードを優先させ、平行な葉脈やひげ根といった直線構造を発達させました。

ケイ素を蓄える

イネ科は土壌のケイ素を吸収し、蓄えることで身を守っています。
固いケイ素によって倒れるのを防ぎ、動物や虫から食べられにくくしています。
ケイ素は土の中にたくさん存在し、しかも植物が栄養として利用することもないため、効率よく蓄えることができます。

地面すれすれに成長点がある

成長点とは、文字通り、茎や葉が伸びていく部分です。
通常、根や茎の先端にあり、活発に細胞分裂しながら枝や葉、根を増やします。
これに対してイネ科は地面すれすれに成長点があるため、上の部分を食べられても、成長は妨げられません。
先端から枝葉を繁らせることができないため、地面すれすれから葉の数を増やします。

葉が固くて栄養が少ない

イネ科の葉は固くて食べづらい上に、ほとんど栄養がありません。
そのため、生き物たちにとって、魅力ある食べ物にはなりません。

種の主成分は炭水化物

種子の中には、次世代の植物が育つための栄養分が詰まっています。
主な栄養分は植物の種類によって違い、イネは主にデンプン(デンプン種子)を、アブラナ、ダイズなどは脂肪(脂肪種子)を大量に蓄えます。
脂肪はエネルギー量が多いものの、種に脂肪を蓄えるには、もとの植物にも余裕が必要です。
ところが、イネ科にはその余裕がないため、光合成で得られる炭水化物をそのまま種に蓄え、エネルギーにします。
生活環境を考えれば、大型の植物と競争して大きくなる必要もないわけです。

徹底的に無駄を省き、効率重視で発達してきたのがイネ科なんですね。

参考文献:稲垣栄洋『世界史を大きく動かした植物』PHP研究所/2018年




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