ひっそり福徳(ジャルジャル)

この場を借りて文章の練習です。

ひっそり福徳(ジャルジャル)

この場を借りて文章の練習です。

最近の記事

スーパーマーケットにて。

おばあさんと同じタイミングでレジについた。 僕はカゴに商品を5点。 おばあさんはジャムの瓶だけを持っていた。 「お先にどうぞ」と言うと、 おばあさんは「若いんだからお先にどうぞ。やることいっぱいあるでしょ。私は暇だから」と素敵な言葉をかけてくれた。 とはいえ、僕の商品は5点、おばあさんはジャムの瓶のみ。 「いやいや、どうぞどうぞ」と、手を動かして、半ば強引におばあさんをレジにうながした。 おばあさんは「ありがとう」とレジへ。 そして店員さんに「これさっき買ったんだ

    • 1週間で婚約した人

      27才まで恋愛をしたことがない人が、出会って1週間の異性と婚約をした。 周囲から「1週間でなにがわかるんだ。焦りすぎ。もっと慎重になれ」と言われた。 僕はこう思うんだ。 27年間、誰に対しても恋心を感じなかった人が、ついに恋心を感じたのだから、27年間分の出会いだと。

      • 朝食バイキング

        止まらない。 朝食バイキングは止まらない。 めちゃくちゃ食べれちゃう。 腹いっぱいなのに、おかわりしちゃう。 「朝食バイキングは永遠に食べれる」とか、言ってしまう。 話は少しだけ変わるが、 美味しい食べ物に出会ったとき、 「一生、食べれる」とか 「永遠に食べれる」とか、 言ってみたりする。 「一生、食べれる」は正しい。 「永遠に食べれる」は変。 自分の人生が終わったあとも、食べれるってことだから。 つまり、一生、と、永遠、は永遠の方が長いってこと。 よって、「永遠に

        • 食パンの耳

          食パンが好きです。 食パンの耳。 スライスされた1枚の食パンのときは〈食パンの耳〉というけど、 一斤のときは〈食パンの耳〉っていうのかな? 全面が〈食パンの耳〉なわけで。 なんか別の言い方がありそう。 僕なら〈寝袋〉かな。 〈食パンの寝袋〉、なんかいいね。

          自分の顔を見て、自分を知る

          夏休み、地下鉄の駅のホームでクラスメイトの佐名田さんと会った。偶然に。 「夕方からどこに行くの?」と聞かれたから「家に帰るだけ」と答えた。 「どこに行くの?」と聞くと「私も家に帰るだけ」と答えてくれた。 お互い「どこに行ってたの?」とは聞かない。そんなことで、僕は僕らの距離感を知った。 と同時に「塾に行ってた」と言うことによって、大学受験の話題にならざるを得ないから敬遠した、とも考えた。この駅の近くにはたくさんの塾があるからきっと佐名田さんも塾帰りだとは思った。 ホームにはそ

          自分の顔を見て、自分を知る

          アナタの前で汗をかきたくないの。

          おはようございます。 今日は暑いですね。 朝、鏡の前でどれだけ自分をキレイにしても、玄関を出た1分後には汗だくですね。 それを防ぐために、手持ち扇風機が流行っていますね。 こんな僕でも井戸端会議をするのですが、 近所のおば様から聞いた話、 そのおば様は普段メガネをかけているですが、その日は裸眼で歩いていたらしいです。 「私、この前、都心に行ったのよ。そしたらね、たくさんの人がソフトクリームを食べながら歩いてるのよ。だから、どこかのソフトクリームが流行ってるのかしら? って。

          アナタの前で汗をかきたくないの。

          青さが嫌だった

          青春くそったれ。 風で制服のスカートが揺れた。揺れるな。 たくさんの教科書。 制定カバンが持ちにくい。そのせいで余計に重たい。 静かな一時間目。 うるさくなる三時間目。 注意する先生。 騒いでいた生徒たちが言葉なしで目を合わせて舌を出した。 青春くそったれ。 廊下の壁に身を任せながら話す女子二人。 青春くそったれ。 眠気の午後。授業が終わればチャイムと共に消えゆく。 強い足音は部活動に向かう人が奏でる。 青春くそったれ。 重たい足音は私が発する。 渡り廊下で話す男女。 青春く

          おもしろい女友達

          エミはおもしろい。 居酒屋テーブルに並んだ料理の数々。 「おれ、もずく酢、注文しようかな」 「いいんじゃない。あっ、夏目くん。海藻ってハゲ予防にいいらしいよ」 彼女とは数年来の友人。 こうして数えきれないほど会っている。 「そうなんだ。じゃ、たくさん注文しよう。10コくらい」 「じゃ、もずくズだね」 「複数形にするなよ」 理解していることを強調するように指摘した。 しかし、ふざけたあとのウイニングランは不要と言わんばかりの彼女は平然と会話を進める。 「現状、頭皮はどんな感じな

          なんか違う

          私の名前は〈水鳥川 京佳〉です。 〈みどりがわ きょうか〉と読みます。 あと一歩って感じ。なんか違う。 どこがどう違う? と聞かれても困るけど、なんか違うことはわかります。 名は体を表す。と、よく言ったものです。 まさに名は体を表し、私はずっとなんか違う。 幼稚園。 私は、とあるアニメのお姫様に憧れました。 サンタさんからのプレゼントは、そのお姫様と同じドレスでした。 「わたしもおひめさまになれる!」と興奮して、手を強く丸めた感触は今でも覚えています。 すぐに着替える

          そんなことをされたら困る

          日曜日、大きめの公園に誘われた。 アナタは意味もなく鉄棒にぶら下がる。 足が地面につかないように曲げる膝。皮膚が突っ張っている。 「今日、思ってるより、暑いなー」 険しい顔つきでパタゴニアのナイロンジャケットを脱いだ。 無地の白いTシャツはやや大きめ。 腰に巻き付けるナイロンジャケット。 Tシャツの上から縛りつけた。 結び目を強調するように。 細まるウエストが幼さを膨らませる。 そしてまた両手を突き上げ、宙ぶらりんになった。 そんなことをされたら困る。 私には恋人がいるから。

          そんなことをされたら困る

          じょうろ不安定な〈デンジャーな日〉

          じょうろが不安定。 ベランダに出て植木鉢に水をあげた。 アイビーは簡単に育つ。枯れない。強い。 私は弱い。 空っぽになったじょうろを室外機の上に置いた。いつもの置き場所なのに、じょうろがグラグラと不安定。 じょうろ不安定。 じょうろが不安定な日は、ムカつく日。 個人的に〈デンジャーな日〉って名付けている。 一ヶ月に五日間くらいある。五日連続ってわけではない。 きっかけはない。 ただムカつく。 何故かムカつく。 厳密に、「ムカつく」って言葉と、私の感情は合致していない。 会社

          じょうろ不安定な〈デンジャーな日〉

          君と過ごせない夜に

          君と過ごせない夜。 眠りにつく前に何気ないことを思い出す。 真っ暗な部屋。 目を開ける。 浮かび上がる天井はスクリーン代わり。 待ち合わせでてこずった僕ら。それぞれの位置を電話で確認。お互いが向かい合い、中間地点で落ち合う作戦。一向に出会えない僕ら。それもそのはずイチョウ並木の大通りの反対側を歩いていた。 ようやく合流。馬鹿みたいに笑った、ほんの10秒。すぐに違う話で盛り上がって手を繋いだ。 ホットコーヒーを買って、公園のベンチへ。 ダウンジャンパーを着させられている雑種

          君と過ごせない夜に

          作られた笑顔

          男たちは新人バイトの笑顔に夢中になった。 彼女は目を細めて、口は閉じたままで口角をあげる。それにより目尻と近付く口角。 これが新人バイトの笑顔。 「新人バイトの子の笑顔が可愛すぎるぅ」 「次のバイトの飲み会で絶対にあの子の隣に座って、あのスマイルを間近で見てやる」 「彼氏いるのかなー? あの笑顔は誰かのモノ?」 「店長が定期的に開催する飲み会ダルかったけど、今回ばかりはオレ、あの子に負けないくらいの可愛い笑顔になっちゃうよぅ」 一方、僕は無関心。 それは彼女の笑顔が作られた

          恋の教訓

          「自分の心配しろよ」 え? また言われた。 初めて恋人ができたのは大学2年。相手は1つ下の新入生。 昼休みはいつも一緒に食堂へ。 食券を買う前に席取りのためにカバンだけを置き「ちゃんと財布持った?」、何を注文するか迷っている彼に「野菜も食べなきゃ」、食べる前に「手洗った?」、食事中に「最近、揚げ物ばっかりだから明日はダメだよ」、食後に「ちゃんと歯を磨くんだよ。じゃまた放課後ね」、放課後に正門で待ち合わせをして彼が友達と遊びに行くと言うと「うん、楽しんできてね、夜遅くなりすぎ

          出会い

          無料マッチングアプリに登録した次の日にメッセージが届いた。 〈今から会いませんか?〉 何度かメッセージのやり取りをして、荒川の河川敷で会うことになった。 定食屋に並ぶ昼休みのサラリーマンを横目に、無断で借りた母の自転車を走らせ、指定のベンチに向かうと、すでに彼女はいた。 長い黒髪をセンター分けして左右の耳にかけている。耳まで届かない髪の毛が何本か、目の前で風に揺られていた。それに焦点を合わさずに、遠くを見つめている。 おでこの白さと髪の色が対照的。まるでその配色と合わせたよう

          こんなオレとあんなマヨ

          「この3ヶ月、無意味だった」 あのときの声はまだ耳に残っている。 オレが浮気をしたらしい。した覚えはなかった。 誰から聞いたのか、マヨはオレが女と歩いていたと疑った。その日偶然オレは友達とオールをしていた。 「ねぇ、あのオールしてた日、本当は何してた? こっちは知ってるんだから正直に言って」 ワンルームの部屋がいつも以上に狭く感じた。 本当に何もわからなかったオレは平然と、 「オールしてたよ」と言った。 それでも淡々と質問をぶつけてきた。 毅然とした態度を失わないオレに、

          こんなオレとあんなマヨ