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ウイスキーのスモーキーフレーバーって?《ピート:前編》

■前回は

アイラモルトの特徴は、「スモーキーフレーバーの強さ」であり、その中でもアイラ島の南岸に並ぶ3つの蒸溜所「ラフロイグ」「ラガヴーリン」「アードベッグ」は、特にそのスモーキーフレーバーが強く、『キルダルトン3兄弟』として、ウイスキー愛好家にムチャクチャ愛されているというお話をしました。

香りのキツいもの、代表的なものでは「くさや」「ドリアン」などは、一度はまるとクセになりますが、アイラ島のキルダルトン3兄弟の強烈なスモーキーフレーバーも、同じ類だと思います。

では、燻製っぽい・煙っぽい味わいのウイスキーの『スモーキーフレーバー』とは、どこから来るのでしょうか?


■スモーキーフレーバーは、なぜつくのか?

スモーキーフレーバーは、呼んで字のごとく「煙の香り」です。

では、質問です。

《質問》
どうして「煙の香り」が、ウイスキーに着くのか?

《答え》
「煙の香りのする麦芽」を、原材料に使っているから!

シンプルな答えといえば、シンプルな答えです。

できあがったウイスキー原酒に、あとから燻製香を付けるのではなくて、最初からそういう香りのする「麦芽」を使うことで、そういう香りのウイスキーに仕上がります。

実は同じようなお話が、ビールにもあります。


■黒ビールはなぜ黒いのか?

コクのある黒ビールは、通常の黄金色のビールと、半々で割った「ハーフ&ハーフ」で楽しむ人も多いかと思います。

それでは、同じような質問です。

《質問》
どうして、黒ビールは、「黒い」のか?

《答え》
「黒色の麦芽」を原材料に使っているから!

ちなみに、黒ビールは「黒色の麦芽100%」でつくるわけではありません。

大部分は通常の麦芽を使い、少しの割合で「黒色の麦芽」をブレンドします。
この「黒色麦芽を少量だけブレンドする」だけでも、ビールには十分に黒い色味がつきます。


■なぜそんな変わった麦芽ができるのか?

「煙の香りのする麦芽」「黒色の麦芽」など、ちょっと変わっていますよね。

では、もう一つ質問です。

《質問》
なぜ「煙の香りのする麦芽」「黒色の麦芽」ができるのか?

《答え》
麦芽をつくる際の乾燥の工程で、
 「煙の香りがつくように」
 「黒色になるように」
麦芽をつくっているから!

ちょっとわかりづらいですよね。

それでは、全体の流れを把握するため「大麦麦芽=ちょっと芽が生えた大麦」の製造工程の概要をご紹介します。


■大麦と麦芽は違う!

以前にもお話ししましたが、お酒の世界では「(麦芽にしていない)大麦」と「麦芽」は明確に区別して考えます。

◇大麦 = BARLEY:バーレイ
  糖化酵素はない

◇麦芽 = MALT:モルト
  芽が生えた時に「糖化酵素」が誕生している

糖化酵素がないと、穀物からお酒(≒アルコール)をつくることができません。

そして、穀物からお酒とつくる場合に、使用する糖化酵素は主に2つあることも、以前にお話しました。(フルーツからお酒をつく場合は、フルーツがすでに糖分を含むので糖化工程は不要)

◇穀物のお酒の製造に用いられる糖化酵素

《西洋》
麦芽の糖化酵素(ウイスキー・ビールなど)

《東洋》
麹菌の糖化酵素(日本酒・焼酎・老酒・白酒など)

西洋で、穀物からお酒をつくる場合、麦芽は「デンプン質がお酒の原材料になる」というだけでなく、発芽したときに糖化酵素を誕生させているだけに「糖化材の役割(デンプンを糖に分解する役割)」も果たしている特別な存在なのです!

だから、例えば「コーンだけ」ではお酒はつくることができません。
コーンには、糖化酵素がないからです。

コーンをメインの原材料としてつくられる、バーボンウイスキーや、グレーンウイスキーにも必ず麦芽(モルト)を入れるのも、『糖化材の役割』を果たしてもらうためなのです!


■麦芽の製法(ざっくり編)

麦芽の製法をざっくり説明すると、

◇麦芽の製造工程
①    収獲された大麦の粒を「発芽」させる
②    「乾燥」させて発芽を止めて、保存性の高い『麦芽』にする

ざっくりは、この2つです。
(細かくはもっと色々な工程があります)

そして、「煙の香りのする麦芽」「黒色の麦芽」をつくる工程は、『乾燥』の工程です。


■黒色の麦芽は・・・

通常より強い温度で乾燥させると、麦芽が焦げて「黒色の麦芽」ができます。

通常より高い温度で麦芽を乾燥
  = いわばロースト(焙煎)
    → コーヒー豆のローストと一緒!

ただし、麦芽が焦げるまで温度を上げると、発芽でせっかくできた糖化酵素が死んでしまいます・・・

黒色麦芽、お前はもう死んでいる。

By 北斗の拳

そういう意味でも、黒色麦芽100%では、ビールはできないのです!


■煙の香りのする麦芽は・・・

それでは、乾燥工程(焙燥)でどうやったら「煙の香り」が麦芽につくのでしょうか?

次回に続きます!

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