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シェリーカスクと、シェリーカスク・フィニッシュの違い

■カスク・フィニッシュが流行っています!

カスク・フィニッシュ(CASK=樽、FINISH=最後の操作)とは、ウイスキー原酒を、木樽によって「通常の熟成」をさせた後で、短期間、別の木樽へ詰め替えて「仕上げの熟成」を施すことです。この「仕上げの熟成」で使った樽の個性を追加させることができます。

ラーメン二郎の「ヤサイマシマシ・ニンニク・アブラ・カラメ」ではないですが、ウイスキー原酒の味わいを、熟成の最終段階で様々にカスタマイズできますので、作り手としては、創造力を掻き立てられますし、商品のバリエーションが広がり、ウイスキーづくりの楽しみが広がります。
もちろんお客様も、色々な味わいのウイスキーを楽しめるようになります。そのため、最近では、カスク・フィニッシュさせた商品が数多く発売されています。

ちなみに、フィニッシュさせる樽としては、「スパニッシュ・オーク製のシェリー樽(一度、シェリー酒を仕込んだ樽)」が一番メジャーです。
他には、赤ワイン樽・ソーテルヌ樽(極甘口の貴腐ワイン樽)といった「ワイン樽」、ポートワイン樽・マデイラワイン樽・マルサラ樽といった「酒精強化ワイン樽」などもあります。
日本発祥の樽であるミズナラ樽でのフィニッシュも人気ですし、焼酎を熟成させた樽やビールを熟成させた樽、過去にはタバスコを熟成させた樽でフィニッシュさせた、なんて商品もあります。


■もともとはフィニッシュでなく、マリッジでした

1980年代以降、シングルモルトウイスキーが流行る前には、ウイスキーは、ほぼブレンディッド・ウイスキーしか流通していませんでした。
ブレンディッド・ウイスキーは、モルト・ウイスキー原酒(大麦原料)とグレーン・ウイスキー原酒(コーンなどが原料)をブレンドしてつくられます。
ただ、そのブレンドされたウイスキーは、すぐに製品として出荷されるわけでなく、ブレンドされた原酒をなじませるため、再び樽に詰めて、数か月から1~2年熟成させてから出荷されます。このブレンド後に、原酒をなじませるために木樽で熟成させることを『マリッジ(MARRIGE=結婚)』といいます。

マリッジでは、「ブレンドされた原酒の味をなじませる」ということが目的のため、追加の「味わい」がつかないように、プレーン樽が使われます。プレーンという単語の意味は「淡泊であっさりとしたさま。装飾のないさま。」です。プレーン樽とは、すでにウイスキー原酒の熟成のために何度か使われて(通常3回程度)、すでに木材の成分の多くが溶け出してしまっている樽のことです。


■樽のパイオニア グレンモーレンジィ

ブレンド後に、原酒をなじませるため「味を加えないよう」プレーン樽によるマリッジから、原酒に「新しい個性を加える」ためにシェリー樽やポートワイン樽によるフィニッシュへと、発想の転換をおこなったのが、グレンモーレンジィといわれています。
またスコッチ業界において、いち早くバーボン樽熟成を導入したともされ(現在、スコッチウイスキーは、バーボン樽熟成が一番多い)、グレンモーレンジィは「樽のパイオニア」と称されています。
※ カスク・フィニッシュについては、「ウッド・フィニッシュ」「ダブル・マチュアード」「後熟」など、本当に多くの言い回しがあります。

◇グレンモーレンジィ オフィシャルHP

ブランドストーリー | グレンモーレンジィ スペシャルサイト (mhdkk.com)


■シェリーカスクと、シェリーカスク・フィニッシュの違い

◇マッカラン シェリーオーク 12年

ザ・マッカラン シェリーオーク | ザ・マッカラン サントリーウイスキー (suntory.co.jp)
最初から最後まで、シェリー樽で熟成させます。
※ 1つの樽で最初から最後まで熟成させることを、フル・マチュレーションといいます。(FULL=すべて、MATURATION=熟成)
※ この商品は以前の「マッカラン12年」のことで、正式名称に「シェリーオーク」というワードが追加となっています。

◇グレンモーレンジィ ラサンタ12年 シェリーカスク・フィニッシュ

グレンモーレンジィラサンタ12年 | グレンモーレンジィ スペシャルサイト (mhdkk.com)
一般的なバーボン樽で熟成後、シェリー樽でフィニッシュさせる。
※ ラサンタとは、ゲール語で「暖かさ」「情熱」を意味。

グレンモーレンジィのように「シェリーカスク・フィニッシュ」と明記されていると、大変わかりやすいですが、ウイスキーの商品名には、わざわざ「フィニッシュ」と書かれていない場合が多いです。

◇バルヴェニー14年 カリビアンカスク

最初から最後までカリビアン・ラム樽で熟成されているわけでなく、まずはバーボン樽で熟成させてから、カリビアン・ラム樽でフィニッシュ。
バルヴェニー シングルモルトガイド サントリー (suntory.co.jp)

◇シーバスリーガル12年 ミズナラ

最初から最後までミズナラ樽で熟成されているわけでなく、「ミズナラ樽フィニッシュした原酒」をブレンド。
シーバスリーガル ミズナラ - Chivas Regal JP


■カスク・フィニッシュ 結論

カスク・フィニッシュという工程が発明され、普及し、ウイスキーの可能性やバリエーションが大きく広がりました。

ただ、例えば「シェリーカスク」と書かれた商品名からだけでは、
A「最初から最後まで、フル・マチュレーションで、シェリー樽で熟成された原酒のみを使っている」
B「商品化の前にフィニッシュとして、シェリー樽で後熟させている」
C「AやBの原酒が、ブレンドの中に含まれている」
といった点は、1つ1つの製品概要を、きちんと読み込まないとわからないです。

少しわかりずらく、1つ1つ確認しないといけないのは煩わしくはありますが、それが『ウイスキーの奥深さ』『楽しさ』であると思います!

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