ももんがあ

義母は野生動物でした

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義母は野生動物でした

最近の記事

南の方の人

2001年のことだった。結婚しよう。そう決めて、夫は義母に報告した。 「どこの、どんな人?」 と訪ねられ、夫はじらしつつ答えた。 「南の方の人」 日本は確かに韓国から見て南方ではある。 義母は、 「忠清道(チュンチョンド)の人か?」 と私たちがいる京畿道の、南隣の地域を挙げた。 「いや違う。もっと南」 「全羅道(チョンラド)の人か?」 と、義母はさらに南下した地域の名を挙げる。そして言った。 「まさか、光州(クヮンジュ)の人じゃないね?私は光州人は嫌だ!!」 光州は全羅南道の

    • 「日本人はお茶を飲む」って言われた...

      結婚して韓国に住み始めた頃。義母が家に来ると、私は緑茶や紅茶を淹れて出した。お客さんにはまずお茶を、というのが当然の習慣だと思っていた。 一回目、義母は「お茶か?」と珍しそうに言って飲んだ。日本から持ってきた自慢の静岡茶だった。 二回目の来訪には、アールグレイの紅茶を淹れた。美味しいお茶を出すのがもてなしだと思っていた。 三回目に、やや迷惑そうな顔で「もういいよ(됐어・テッソ)」と言われた。驚いて出すのをやめた。向こうを向いた義母は義姉に、 「日本人はお茶を飲む」 と言った。

      • 断言したのに・・・

        黒田福美氏は言った。 「韓国人にとって、言葉は相手を自分の思う通りに動かす手段なので、自分の言葉に責任があるという意識が薄い。」 それは本当だと思う。しかし、それにしても、義母はあまりに堂々と嘘をつく。感心するほどである。義母のセルフイメージは、「わがまま言っても、嘘をついても許される、幼女」なんじゃないだろうか。 義父母が自宅を改装して、その4階に住み始めてからのことだ。夫と長女とともに、義両親宅を訪問した。 4階に居住スペースが半分しか取れず、部屋が東西に一列に並んでい

        • 私は避けられている?

          義母の食の好みは保守的で、洋食は食べないわけではないが、あまり好まなかった。 ある時、私と夫で仁寺洞(インサドン)近くで食事しようとしたら、急に義母が合流することになった。夫は私に気を遣って、お袋も一緒に食べてもいいか?と聞いた。私はもちろんいいよと答えた。当初の予定はイタリアンだったが、 「お義母さんは洋食は好きじゃないだろうから」 と、以前に行ったことがある、手頃な値段の、モダンにアレンジされた韓定食の店を提案した。 韓国料理になかなか馴染めなかった私は、その日のイタリア

          外食が苦行

          義母と私と子供達とで外食した時のことだった。 注文した物が来てテーブルに並んだ。食べ始めて5分も経たないうちに、義母が言った。 「これ、食べないのか?」 義母が指しているのは真ん中に置かれた大皿のおかずで、まだあまり皆が箸をのばしていない。しかし皆が好きな物だから、 「食べていますよ」 と答えた。そのうち、各自が自分の前にある皿を空にして、大皿のおかずに取り掛かり始めた。しかし義母はまた言う。 「これ、食べないのか?」 「食べていますよ」 今、食べているところなのに、なぜそん

          義母には秘密の会 2

          義母には知らせず、三番目の子の一歳の祝いの会(ドルチャンチ)を、ごく内輪で開いた。 夫は、二番目の子の時、仕事関係の招待客に、義母のことで「大変だね」と言われた。本当に恥ずかしい思いをしたらしい。二度とそういう会に義母を呼ばない、と決意するに至った。ただ、義父までとばっちりを受けて出席ができなかったのは、気の毒に思う。夫もその点については悔いていた。 この顛末を書いていて、だんだんと記憶が蘇ってきた。義母が会場で何をしたかである。 昔は、自宅に親族や近所の人を招いてチャンチ

          義母には秘密の会 2

          義母には秘密の会

          韓国では、子供が満一歳になるとお祝いの会を開く。ドルチャンチといい、ドルは一歳、チャンチはお祝い会である。ビュッフェレストランを会場にし、司会者がお披露目を盛り上げた後は食事会、という流れだ。 上の二人の子の時は、ドルチャンチを行った。親類や友人を招き、来賓は数十人規模になる。呼ばれた側は、ビュッフェの食事代に色を付けたくらいの御祝儀を出すシステムだ。 私の親は日本にいるので呼ばなかったが、夫の両親はもちろん招待した。 二人目(息子)の時、終わってから夫は、私に愚痴をこぼした

          義母には秘密の会

          ㉗家にとんでもないものが 2

          ゴミ捨て場から物を持ってくるなと、義兄は何度も言っていたのだが、義母の行動は変わらなかった。 ある時、段ボール箱を拾って帰り、義兄には内緒で家に隠しておいた。中には小さな箱がいくつか入っていて、義母はうちでゆっくり中をあらためるつもりだった。 数日後に開けてみたところ、小さな箱の中身は全て、ただのゴミだった。しかし、この段ボール箱が義父母の家に厄災をもたらした。中にゴキブリが住み着いていて、それを知らずに家に持ち込んでしまったのである。ゴキブリは箱から家の中に移動し、卵を生み

          ㉗家にとんでもないものが 2

          ㉖家にとんでもない物が 1

          義父母と義兄(夫の兄)夫婦は、一時期一緒に住んでいた。 義父母の自宅を4階建てのこぢんまりしたアパートに建て直し、それを期に同居を始めた。自分達は最上階に住み、下の階は人に貸した。(各階に二戸ずつ。)店子を入れて保証金を預かり、それを建築費用の返済に回すという、韓国でよくある方法を採った。 ところが施工途中で、自分達が住む予定だった4階部分を、半分に削らなければならないことが判明した。密接している隣の建物への日照を確保するために、やむを得ない措置ということだった。しかし、建築

          ㉖家にとんでもない物が 1

          ㉕スプーンの共有をやめてほしいとお願いしてみた結果 2

          義母と、今義母と住んでくれている義姉、そして娘と一緒に、外に出かけたことがあった。 娘はまだベビーカーに乗っている時期だった。昼ご飯を食べようと、食堂に入った。大きな蒸しマンドゥ(餃子)が売りの店だった。注文すると、薄い水色のプラスチックの大皿に、10個ばかり載せられて出てきた。具を包んで皮の両端をくっつけ、丸くしたものだ。美味しそうに湯気を立てている。 義母は娘を隣に座らせようとしたが、義姉が気を利かせて自分が義母と座り、私と娘が隣になるようにしてくれた。 義母が真っ先に、

          ㉕スプーンの共有をやめてほしいとお願いしてみた結果 2

          ㉔スプーンの共有をやめてほしいとお願いしてみた結果 1

          2005年に娘が生まれた。その時、「ほぼ日刊イトイ新聞」に菌についての連載があり、「虫歯菌は唾液を介して親から子にうつる」「親が口で噛んで柔らかくした食べ物を与えたり、3歳まではスプーンや食器を共有したりしない方がいい」と知った。 離乳食を始めた時、自分では厳密にそれを守った。問題は義母だった。 「虫歯菌がうつらないよう、箸やスプーンを一緒に使わないでください」 と、頼んでみた。 「じゃあどうやるの」 「別々に使ってください。というか、一つの物を一緒に食べないでください」 「

          ㉔スプーンの共有をやめてほしいとお願いしてみた結果 1

          ㉓とにかく孫の口に食べ物を突っ込みたい義母との抗争 その2

          娘をベビーチェアに座らせて離乳食を食べさせようとすると、義母がやってきて、 「私がやる!」 と宣言する。気が進まない私は、 「いえ、私がやります」 と言うのだが、義母は聞き入れず皿とスプーンを私の手から奪う。心配で横で見ていると、義母は食べさせるスピードが早い。娘が飲み込む前に、次々にスプーンでお粥を口に入れていく。 「ゆっくり食べさせてください。一さじ口に入れたら、噛んで全部飲み込んでから、次をやってください」 そう言っても、例の「だーいじょうぶ(ケンチャナー)」の一言で済

          ㉓とにかく孫の口に食べ物を突っ込みたい義母との抗争 その2

          ㉒とにかく孫の口に食べ物を突っ込みたい義母との抗争

          長子(娘)は赤子の頃、やたらに食欲旺盛な子だった。満腹し、満足するまでは、ぎゃーっと泣き続ける。そのため、飲ませ、食べさせ、とやっていたら、ぱんぱんに太った。ひじと手首の間に、もう一つ深いくびれができた。太っているというと、「ふんわりして柔らかい」イメージが湧くが、娘の場合はみっちりと中身が詰まりすぎているのか、硬かった。 「子供の時から肥満だと、大人になっても肥満である確率が高い」と言われているらしい。これはまずいと、私は危機感を抱いた。 三度のご飯以外にはおやつは無しで、

          ㉒とにかく孫の口に食べ物を突っ込みたい義母との抗争

          ㉑共犯者になりたくない2

          花摘みの件があって少し後。義母がうちにやってくるなり、愚痴を言い出した。 道端にエゴマが葉を付けていた。誰のものでもない土地(というか、公道)に生えているものだから、葉っぱを採った(シソの葉に似ていて、それでご飯や肉を包んで食べる)。 すると人がやって来て、「何なさるんですか。私が育てているんですよ」と言って(義母が摘んだ葉っぱを)持って行った、と言う。 「道端で、自分の土地でもないのに、何が『私が育てている』だ。道に生えているものに、持ち主なんかあるか」 と、義母は怒ってい

          ㉑共犯者になりたくない2

          ⑳共犯者になりたくない

          義母は、うちに来る時によく何かを持ってきた。しかし夫は、 「何も持ってくるな」 と強く言っていた。その理由は、 ・賞味期限が切れている食べ物 ・義母が職場からくすねてきた物 ・どこかで勝手に折ってきた花 義母が持ってくる物がたいていこんなものだったからだ。 夫が何度言っても、義母は持ってくるのをやめようとしなかった。手柄を報告するように「〇〇持ってきた!」と見せ、「〇〇(夫)に見つからないように隠せ」と私に迫る。 もしそれに従って隠したら、発覚した場合、私と夫との間に諍いが起

          ⑳共犯者になりたくない

          ⑲義母の密かな狙い5 余談まで書いてすみません

          韓国のマンションには古着回収箱が置いてあって、住人が不要な服や靴を入れる。業者が週一回中身を買い取りに来る。売り上げはマンションのものになる。 だからそこに入れられた物はマンションに所有権があり、誰かが勝手に持っていってはいけないことになっている。 ある日の夜、私はマンション正門脇のゴミ収集所にゴミを出して、家に戻ろうとしていた。その時住んでいたマンションは、古着回収コンテナがゴミ収集所とは離れて独立していた。古着コンテナの辺りは、木立の下になっていて暗い。 そこに誰かのシル

          ⑲義母の密かな狙い5 余談まで書いてすみません