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【南大沢土木構造物めぐり】No.61 中山地区の谷戸を歩く

八王子市 中山地区。丘の上の北野台団地から、急坂を下った谷底にある平地。耕地と住宅地が混在するこの地区。ニュータウンの中とは異なり、昔ながらの谷戸の雰囲気を残しつつ、少しずつ進化したその街を歩きました。

スタート地点は、絹の道の回で紹介した、道了堂の脇にある、鑓水給水所から。絹の道は、この地域ではちょっと有名な歴史の道です。過去のレポートはこちらを参照ください。今回はこの絹の道から一歩脇を歩く散策です。

鑓水給水所は、東京都水道局の水道施設です。峠のてっぺんのように、周囲と比べて標高の高い場所に、給水所が設置されていることが多いです。水道は、高いところに給水所があれば、特に加圧しなくても自然流下で水を供給できるので、水道の安定供給には便利な立地になります。

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鑓水給水所の横から見た、北野台の住宅地。

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碁盤の目のように整然と建ち並んだ戸建て住宅地。奥のほうには、別な尾根や高いビルも見えています。多摩地域の丘陵地帯は、開発されている場所とそうでない場所が隣り合っていることが少なくありません。

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北野台バス停。丘の上の団地に広いバス転回場があります。どこか「終点まで来ました」感があるのは、丘のてっぺんにあることと、宅地開発されてから50年くらいが経過したからでしょうか。

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中山中学校のグラウンド。森に囲まれた丘の上の運動場。ここだけ見ていると、かなり山奥に来た気がします。

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1段低い位置にある、中山小学校。

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谷底を流れる小さな水路。昔ながらの用水路の雰囲気を色濃く残します。谷戸の川は、このように「農業用水路」と名を変えて谷を流れていたのでしょう。

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ただ小型水路が流れているだけではなく、暗渠排水もあります。田園風景だけでなく、宅地ともなっている谷底。暮らしを守る水害対策も整備されているようです。

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谷底からまっすぐ登っていく急階段を発見。白山神社の参道ということです。

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想像していた以上にすごーく長くて立派な階段が続いていました。

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白山神社の由来を記した看板。創立年代は不詳だそうですが、1600年代に再建されるなど、非常に長い歴史を有する神社だそうです。

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中山村に昔あった長隆寺の礎石だとか。平安時代に建てられたといわれているようです。

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白山神社改築記念碑。1613年に再建されるなど、古い歴史を有する神社ですが、昭和30年代に荒廃していたのを、北野台を開発した西武鉄道が昭和41年頃に土地を買い取り、買い取ったお金で神社を再建したという記念碑です。こういう石碑を見ていると、「街に歴史あり」と思います。

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隣には、昔の拝殿改修記念碑がありました。

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古い年月を刻んだ石碑。昔からの信仰の場所だったのですね。

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坂の上から再び中山の谷に向かって下がっていきます。坂の途中にもこの付近には宅地があります。民家の庭などに鳥居が多いのが、この地区の古い民家の特徴だと思います。

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坂の途中に土取り場のような場所を発見。表層は茶色っぽいローム層のような地質で、その下は砂層でしょうか。これほど谷戸の丘陵地に崖のように地層が露頭しているところは多くありません。貴重な地層がのぞけるスポットです。

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再び谷底へ。この地域の用水路は、頂部にコンクリートの梁で補強されているのが標準形でしょうか。

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水路に細い道に畑地。その傍らに石仏。水路には時折水門があります。耕作と利水、信仰が混じった昔の生活を残す風景。多摩ニュータウンから徒歩で行ける範囲にあるとは想像できません。

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農道の脇の用水路に架かる橋。故郷の京都市の外れのほうも、田んぼばかりの地域だったので、このような風景は見慣れたものでした。

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用水路に水門、小さな橋、石積み擁壁、ブロック塀。土木施設をいろいろと探索していますが、土木の世界の原点は、農耕の営みを支える小さな土木施設たちのような気がしてなりません。このような施設は、少しずつ技術革新しつつも、代々技術継承されて維持されてきたと思われます。そう考えると、昔の土木技術はやはりかなりの技術力を持っていたと思います。

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最近は耕作地の宅地化や工場など別の用途に使われることが多く、用水路は忘れられた存在になりがちですが、今も人知れず流れる用水路がありました。

【終わりに】
北野台の団地を起点に、中山地区の谷戸をめぐる散策をしました。大規模に開発された団地と、昔と変わらない耕地、少しずつ進んでいく宅地化。宅地の造成をきっかけに再生された昔ながらの神社。それらを支える土木構造物。歩いて散策すると、今まで見えていなかった風景を再発見することができます。

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