健太フーズの日々3

「麻記、バイトするんだって?」
ニヤニヤしながら旦那が近づいてきた。
「うん、健太フーズでちょっと、ね。」

旦那はこんな時、いつも耳ざとい。

「ねぇねぇ、どんな所か偵察してきてあげようか?」
「えーっ。やめときなよ。怪しい人だと思われちゃうよ。」
「大丈夫!ちょっと見に行くだけだから。それに、俺の会社でも求人募集してて、どんな風に募集かけてるのか見てみたいんだ。」

こうなると、旦那を止めるのは難しい。
結局家計用の財布を渡して、晩御飯になりそうなものを買ってきてもらう事にする。

いそいそと出ていく主人。私は苦笑いで見送った。

心配してくれてるのかな。でも、ちょっと心配しすぎだよね…それでも、ありがとう。

その夜、私たちはハンバーガーをかじりながら、テレビのグルメ番組を見た。
あんなの、食べたいね。
うん、今度食べに行こう。
今度っていつ?
バイトの給料がはいったらね。

…他愛もない会話が、夜の闇に溶けていく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?