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雨降る午後に

昨日の深夜から振り続く雨は、今もパラパラという音を鳴らしている。

「コーヒーでも飲まない?」
智徳が私に聞いて来た。ああ、そうだな。
「うん、ちょっと休憩しようか。」
下を向き続けていたためにズレてしまった眼鏡を直し、私は本をパタンと閉じた。

智徳と私は、結婚して五年経つ夫婦だ。
性格も趣味嗜好も正反対な私たちだったが、何故か大きな喧嘩もなく五年一緒にいる。
馬が合う、というやつなのだろうか。

台所から、甘くて苦いコーヒーの香りがして来た。
「ねぇ、お菓子食べない?」
頂き物のチョコレートがあったのを思い出した私は、マグカップを運んでこようとする智徳に呼びかけた。
「お菓子!」
まるで小学生の子どものように、くりっと目を見開き、頬を緩ませる、智徳。
「要るに決まってるでしょ。」

私たちは、何がおかしいのかもわからず、ただケラケラ笑いながら、お菓子とコーヒーをリビングに運んだ。

いつも通りの、何の変哲もないけど、幸せな午後。

外では、まだ雨が降り続いている。

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