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7-1 女主人、ベッドで下僕に練習させられる ~小説「女主人と下僕」~敗戦奴隷に堕ちた若者の出世艶譚~


ディミトリは天蓋付きのベッドに、同じくベッドに腰掛けたマーヤを、後ろから、腕の中に抱くようにして座っていた。

つるつるとした絹のネグリジェに包まれた、かすかな甘い女の匂いがする柔らかい身体、吸いつくようなもちもちとした光る白肌が、自分にくったりと身体を預け、囁き声で自分に一所懸命甘えてくる。

その時、ディミトリの脳裏には昨晩ザレン爺から聞き知った「処女のほぐし方」の話が浮かんでいた。その話は、ディミトリはいままで聞いたこともない、常識外れなほどに丁寧すぎるやり方で、また、経験の浅いうえに精力旺盛なディミトリにはかなり無理のある作業だった。だからディミトリは

(そんな事が本当に効果があるのかよ?そもそも、そんなことは自分には無理だろう、どこかで理性が飛んで端折るに決まってるだろうな)

と思いながらザレンの話を話半分に聞いていたが、いま、この、けなげなマーヤを見て、ディミトリの意志は固まった。

(ザレン様の話がどこまで本当かは知らねえが、とにかく物は試しだ。1から10までその通りに丁寧にやって差し上げるんだ...きついが....最初が肝心だ。自分の小指が千切れるまで噛んででも、正気を保って、やり切って、この人を、上級市民の坊ちゃんどもなんかには見向きもしなくなるほどに、俺にめろめろにさせてやる。この人を一生、俺の虜にしてやるんだ。)

ディミトリはマーヤに言った。

「まずは安心して。今日は痛みを伴うようなことはなにひとつ致しません。いや...夫婦同然の事はやりますが...子供を授かる行為のぎりぎり直前までです。今日は厳密な意味では、処女は散らさない」

「え?直前?」

「出来るだけ痛い思いはしてほしくないんで...今日は貴女をほぐすところまでです」

「ほぐす?」

「処女を散らす時になるべく痛くないようにするために少しずつ慣らすってことさ。ん、まあ、そこは解らなくていい。とにかく、今日は最後までなにひとつ痛くはないはずだって言いたいんでさぁ。もし、ちょっとでも痛かったら、それは俺が下手くそなだけです。直ぐ痛くなく出来ますから、恥ずかしがらずに口ではっきり言ってくだせえ。他にも、強く、とか優しく、とか、もっと右、とか左、とか」

「えっ...!わたくしの口から、言うんですって?」

マーヤは真っ赤になった。

(へええ、爺の言う通りだ。若い娘ってのはこんなことぐらいで恥ずかしがるのか!俺が昔ガキの頃に無理やり襲われるようにして経験させられた、村一番のどいんらんのいかれ年増とは、えらい違いだぜ...いや、俺の唯一の比較対象が完全にヤバいのかもしれんが...)

「そっか、若い女性ははじめての床入りではいきなりそんなこと言いづらい...んだな?ま、気持ちは解る。だが、俺と寝る時は恥ずかしがらないでなんでもかんでも話してもらいたい。...よっしゃ、じゃあこうしよう。この可愛いお手手をお借りしますから、まずは練習しましょう」

「…練習...?」

「思った事を口に出す練習だよ」

ザレン爺は、”まず何より、第一に、女にベッドで喋ることへの抵抗を棄てさせろ”、とディミトリに教え、抵抗を棄てさせるためにこんな方法をディミトリに教えたのだ。

ディミトリもそれはもっともだと感じたし、ディミトリは女にベッドで自己主張されることなんかに、もういまさらなんの抵抗もなかった。なにしろディミトリの唯一の経験は、どぎつい自己主張の塊の、村一番のどいんらんの年増ただひとりであったから。

ディミトリは、ベッドに腰かけたまま、腕の中のマーヤの片手を取って手の甲に口づけした。真っ白なきめ細かい手の甲に、ディミトリの、やや厚みのある弾力がある唇が押し付けられる。

「んっ」

「痛いときに、よがってるみたいな声をだして嘘ついてごまかしちゃ絶対いけませんぜ。”痛い” って必ずちゃんと口に出して言うんだ。そうでないと、俺もうれしくねえよ?」

ディミトリは、時々そっとマーヤを抱きしめたり、軽く肩に口づけしたりしながら、マーヤの腕を取り、その白い掌を裏返して、浅黒い人差し指で、マーヤの中指の先から手首を通ってつい、となぞった。

「ぁ!」

ほんのり頬を染めたマーヤが、かすかに眉を寄せた。

「ん?くすぐったいかい?それともちったあ感じましたかい?」

「ひどいわ!そんなこと!く、口に出せとおっしゃるの?」

「もちろんさ。ぜんぶ、いちいち、すべてはっきりと口に出してください、と、そう申し上げておりますぜ。よっぽどの女たらしなら別だろうが、俺みたいな経験も浅い不器用な男じゃ、女にいいか悪いか教えて貰わにゃあ、次の一手が出せねえんだ。くすぐったかったら強く、感じてたら弱くと、調整していかなきゃならねえからよ。どうしてもどうしても恥ずかしかったら、気持ちいいって台詞だけはまあ無理して言わなくていい。ただなあ…言ってくれた方が本当は貴女がいい思いを出来るし…俺も本当はその台詞こそぜひとも、ぜひとも、聞きたいけど…ま、だが、とにかくそれより何より、”痛い”ってのと、”くすぐった過ぎる”、ってのだけは、何が何でも必ずちゃんと言うんだ。...解ったかい?」

「...は、はい...」

マーヤは恥ずかしさで消え入りそうな声であったがなんとか同意した。

「練習を続けますよ?」

そういいながらディミトリはマーヤの二の腕の一番柔らかそうな場所を軽くただ歯を当てる程度に優しく噛んだ。

「ぁぁんッ...」

とても小さいかすれ声だったが、マーヤは薄スミレ色のネグリジェごしに身体を、やわらかい双丘をふるるんと震わせて、咽び泣きのような、あまい悲鳴を上げた。

その咽び泣きの声を聞いてディミトリも実は体の芯が痺れるほど興奮したが、必死で抑えながら、かすれ声で続ける。

「ん...その声の感じはいまは痛くなかったってことですか...ね?...じゃあこれはどうだ」

ディミトリは同じ場所を噛んで咥えたままゆ...っくりと少しづつ圧を掛けていく。

「...い、痛い!です...」

「そうだ。それでいい。だがそんなギリギリまで我慢しちゃダメです、ちょっとだけでも痛ければ直ぐ仰いなさい。貴女を傷つけたくないのはもちろんだし...今痛がった瞬間に、せっかくあったまった身体がスゥーと醒めましたでしょう...?違うかな?痛いのをちょっとでも我慢したら、気持ちよさも逃げちまうんですよ。だから、必ず、お伝え下せえ」

「は、はい」

「もう一度ゆっくり噛むよ?今度はすぐいうんだぜ?」

「い、痛!」

「そう…お上手です、マーヤ様」

「は、恥ずかしい…です!こんな…!ひたすらぺちゃくちゃ喋り続けろってこと?」

「もちろん!!仰る通りでございます」

ディミトリはちょっとにやついて答えた。

「床ではとにかくずっと黙って居ればいいのかと思ってましたのに...!」

「ごめんな?…俺がこんな童貞同然の若造じゃなくて百戦錬磨の女ったらしだったら、おめえさんが黙っててもなんとかざっくりとは解ってやれたんだが…」

「そ、それはそれで、すごく嫌…」

「だがこの方式なら、初めての日より夫婦になって1000日目の方がどんどん、どんどんと...気持ちよくなってきて...おめえさんは床に入るのが大好きになってくるって寸法です、だからどうか…俺のために我慢してお教え下さいませんか」

「え?わたくしのためではなく、ディミトリ様のため?」

「そう」

「...?」

キョトンと不思議そうな顔でじっとディミトリを見つめるマーヤを見てディミトリは返事せずにただ小さく微笑して黙ってマーヤの頬を撫でた。

(男は女をただ抱いてすっきりすれば満足ってもんじゃねえんだ。男ってのは、俺がこの人を気が狂うほどの喜びに震わせたんだぞ、この女をどの男よりも圧倒的に喜び狂わせ、女の身体の奥底に見えない俺のしるしを打ち込んでどの男よりも忘れられない一番の男になってやったぞ、と確信した時、一番ぞくぞくするんだ。要するに、男というのは、敗戦奴隷の首輪なんかついていなくても、自分の悦びを犠牲にしてでも女を悦ばせることにこそ痺れるという、妙な倒錯者であり、生まれながらの哀れな奉仕者でしかない存在なんだ。俺たち男というのは、永遠の、女の下僕よ。...知ってるかい?...男によっては、女を悦ばせることがかなわないとなると、やけを起こして女を虐め、せめてどんな男よりも自分がこの女を苦しませ、執着させ、憎まれたんだぞ、ってことで、誇りを得ようとする奴すらいるんだぜ?...まあ...マーヤ様には、こんな男心、永遠にわっかんねえだろうけどな。)

頬を撫でられたマーヤが、びくっと震えて、後ろから抱き寄せられたまま、潤んだ瞳で身体を後ろにねじってディミトリの方に振り向き、自分から顎を上げて唇をディミトリの顔側に寄せていく。ディミトリもそれを受けるようにマーヤの顔に覆いかぶさる。が、ディミトリはぎりぎりのところでそれ以上は動くのを止めた。

「自分から俺の方を向いてくれたんだ...嬉しいよ...ちょっと唇が動いてる...気のせいか、ぱくぱくと物欲しげだ...どうしたのかい?マーヤ様はなんか俺にして欲しい事でもあるのかい...?」

マーヤはディミトリに唇を寄せたまま泣きそうな表情をした。

「ひどいわ!どうして?!そんないじわるするの?...お、お嫌なんですか...?」

「違う、違うよ、嫌なわけねえだろう。な、さっきも説明したろ?ただ、ちゃんと姫様の口からはっきりと聞きてえんだよ、本音の、やらッしいお気持ちをよ。俺はね、いまだにマーヤ様が俺なんぞにこんな事してくれるなんてどうしても、どうしても、信じられねえんだ。だから俺に何をしてほしいのか、何度でも、何度でも、ハッキリ、仰ってほしいんだ、床では恥ずかしがる気持ちなんか全部棄てて欲しいんだ。解ってくれよ...俺だったらどんなやらしいこと言われたって大丈夫だぜ?この俺が喜びこそすれ、嫌がったりびびったりすることはありえねえよ?な、安心して言ってくれよ…これも練習さ。...どうしてもだめかい...?言ってくれねぇかなあ...。言ってくれると嬉しいんだけどなあ...?ほうれ、俺なんかに...マーヤ様は、何をして欲しいんですかい?」

マーヤは消え入りそうな声で言った。

「...ディミトリ様に...口づけして欲しいの...」

「嬉しいぜ...」

ディミトリはわざと触れるだけの淡い口づけを一度だけ返した。

「...これで満足かな...それとも...?思ったことは何でもかんでも言ってくれって、さっきから申し上げてるじゃありませんか...ん...?もっと...どうしてほしいのかい...?」

マーヤは真っ赤になって消え入りそうな震える声で答える。

「もっと…その…こないだみたいに…口づけして…」

ディミトリはそんなマーヤを食い入るように見つめながらとぼける。

「解ッからねえなぁ…もっと具体的に言ってくれないと解らねえよ…。いくらなんでも、わたくしめの方からはさすがにこれ以上勝手にご無礼を働く訳にはいかねえですからねぇ…?ん?ほうれ…思い切って、仰いなせえよ?どんなふうに口づけをして欲しいんですかい?ズバッと仰ってくだせえよ...わたくしと致しましては、ご命令さえ頂けリャァ、どんなことでも喜んでやって差し上げたいんですがねぇ…?ん...?そんな小声でもぐもぐ言われてもなにも聞こえねえなぁ…お返事はまだかな...?困ったなあ...いや実は俺こそマーヤ様の唇に食らいつきたくてじりじりしてんだけどなぁ...?まだまだおあずけですかい...?せつねえなあ...?マーヤ様のご命令をお受けしてえんだけどなあ...?ほうれ、仰ってくだせえよ...?」

とぼけながらもディミトリの目もぎらぎら輝き、声もかすれ震えて来た。

マーヤはほとんど半泣きで目をうるうるさせてまっかになって身をよじらせて聞こえるか聞こえないかの小声で答えた。

「…ほ、本当は、わたくし、この間お帰りの際にして頂いたような、わ、わたくしの唇の間にディミトリ様の舌が、ぐりぐり、入って、くるぐらいの、口づけを、でも、ま、前より優しい力で、ゆっくりと、そっと、し、して欲し…」

その瞬間、ディミトリは思わず一瞬目をぎゅっと瞑って首を振り下ろすようにして、下に向かってケダモノじみた荒い溜息を吐いた。

ディミトリはマーヤを焦らしに焦らすつもりでいたのだが、結局はこれ以上の我慢ができず、マーヤの言葉を最後まで聞く余裕も失って、マーヤに繰り返し、繰り返し、喰らいつくような口づけを返したのだった。

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昔々ロシアっぽい架空の国=ゾーヤ帝国の混血羊飼い少年=ディミトリは徴兵されすぐ敵の捕虜となりフランスっぽい架空の敵国=ランスで敗戦奴隷に堕…

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