1-3 こどもの恋人ごっこ ~小説「女主人と下僕」~敗戦奴隷に堕ちた若者の出世艶譚~
このようにマーヤは身分にこだわらない女だった。いやむしろ、ひょっとすると亡命の時にでもなにかあったのか、自分自身も元貴族でありながら、マーヤはなぜか、身分制度というものを、むしろ憎みわざと反発しているような所すらあった。
どうもマーヤは身分をわざと飛び越えたような振る舞いをよくする。
そうなると、敗戦奴隷の出身でありながら、性質は穏やかで働き者、町一番のザレン茶舗の、しかも本店の売り場を、実質取り仕切っている、そんな店長代理のディミトリがマーヤに気に入られないわけがない。