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フェドセーエフさんのコンサートを聴きに行ってきた

1月のある日、noteのおすすめに出てきた記事を読んでいました。
おすすめの記事を読んだ後、このnoteの他にどんな記事を書いているのかな?と思い、いろいろ見ていました。
いろいろ見ているうちに、フェドセーエフさんの名前が出てきたので、その記事も読んでみました。
なんと、2023年11月の来日公演を体調不良によりキャンセルしていたことを知りました。

最悪の日露関係の中でも、フェドセーエフさんは、日本が大好きで、日本の公演も予定してくれていて、いいなと思っていましたが、91歳のお身体には、飛行機での長時間移動がかなり厳しい状況になっているのだなと思いました。

モスクワでの演奏会でいつだったかは、舞台袖から指揮台まで一人で歩くのが大変で、そばに誰かがついてきたときもありました。

11月の日本公演がキャンセルになったと知り、12月下旬にあったコンサートはどうだったかな?と思い、検索すると、演奏会のビデオが出てきて、椅子に座って指揮を振ったことが分かり、少し安心しました。

しかし、91歳のフェドセーエフさん。聴きに行ける時に、聴きに行こうと思いました。
それで、今後のコンサート予定を見ていたら、4月13日(土)13時からプログラムはすべてスヴィリードフというのを見つけました。
4月なら、雪も融けているし、チャイコフスキーコンサートホールなら、地下鉄駅の目の前で行きやすいし、夜でなく昼間というものすごくいい条件でのスヴィリードフのプログラム。
これは、行くしかないと思いました。
それで、一番高い席のチケットを買いました。高いといっても、3000ルーブルなので、5040円ほどのチケットです。

3月にコンサートホールで最悪のテロ事件が起き、その後、出かけるのを控えていました。そして、4月のコンサート。大丈夫かな?とちょっと心配になりましたが、ある日、ボリス・ベレゾフスキーさんのコンサートのライブ配信が来て、無事にコンサートが行われているのを見て、大丈夫だと思いました。
事件があった後は、徹底的に対策をするのがロシアなので、今が一番安全かもしれません。

開演時刻は14時だと思って、手帳に書き込んでいましたが、公演が近くなり、ピンコードをどうするのかな?と、チケットを買ったときのメールを印刷したものを見ていたら、開演時刻が13時と気づきました。気づいてよかったです。

前日にもリマインダーのメールが届き、そのときに、もう一度ピンコードもお知らせもきました。

そして、4月13日(土)。
午前中にもまた、リマインダーのメールが来て、「30分前から会場で待っています。客席に入れるのは、3回ベルが鳴った後です。」と書いてありました。
それで、そういえば、ロシアのコンサートは、客席が開くのが遅く、開いたら、すぐに座って、しばらくすると、始まるというのを思い出しました。客席に入れるまでは、だいたい立っていることになるので、少しゆっくり行ってもいいなと思いました。
リマインダーメールの至れりつくせりがすごかったです。

30分以上前からロビーへの入場は始まっていました。家を出た時は、暖かかったのに、地下鉄に乗っているうちに、体が冷え、ホールについても寒かったので、薄い上着をクロークに預けず、着たままにしました。

ピンコードを指定されたターミナルで発行してもらい、入場しました。

まずは、プログラムを入手しようと、売り子のお姉さんのところに行き、値段を訊きました。150ルーブル(約247円)と言われ、そんなに安いの?と思い、迷わず購入しました。プログラムを見たら、『時よ、前進』が入っていました。『吹雪』は覚えていたけれども、忘れていたので、何と素晴らしいプログラムだと思い、チケットを買って、テロ後でも聴きに来て良かったと思いました。さらに、スヴィリードフの日記と手紙の朗読もあるということで、楽しみになってきました。

ロビーではCDが売られています。スヴィリードフのCDがあればと思ったけれども、なさそうだったし、1枚3500ルーブル(約5750円)とかしていたので、何も買いませんでした。以前は、ロシアのCDは安かったのに、びっくりする値段です。
ソビエト時代に発行されたフェドセーエフさんの本も3900ルーブル(約6406円)で売られていました。これも買えないので、その場でレーニン図書館にあるかどうかを調べました。レーニン図書館に所蔵されていることが分かったので、図書館で見ます。

そうしているうちに、3回ベルがなり、開演15分前に客席に入れました。
プログラムを読んでいたら、あっという間に開演時刻になりました。

隣の席は、幼稚園児くらいの男の子を連れた家族でした。

1曲目は、『春のカンタータ』より『鐘と笛』。演奏と一緒に朗読でした。音楽も聴きたいけど、ロシア語もかぶさるし、さらに、ロシア語で何を言っている?と気になり、忙しかったです。
こんな感じで、音楽に朗読をかぶせたままずっとだと嫌だなあと思いました。

演奏された曲の動画を貼ります。CDの動画で、4月13日のライブではありません。


2曲目は、『時よ、前進』より『チャストゥーシュカ』です。これは、ピアノの部分を練習しているので、ピアニストに注目しました。ソビエト時代から演奏している人です。その人の演奏を生で聴けただけで、感動しました。フェドセーエフさんは、91歳なので、昔の録音に比べてテンポはゆっくりでした。


3曲目は、『エセーニン』より『冬の歌』の一部でした。合唱はなしです。
この曲の途中だったと思います。私の前の列の2つの空席に若者のカップルが遅れてきました。男性の方は、野球帽をかぶったまま演奏を聴いていました。開演前に、「写真、ビデオ、録音は、演奏会が終わるまでしないでください。」とアナウンスがあり、私もしっかり聴きとれたので、写真を撮りませんでした。周りも写真を撮る人がいなくて、なんか、落ち着いて演奏を聴けました。ところが、遅れてきたカップルはそのアナウンスを聞いていないから、スマホで写真を撮っていました。


4曲目は、『時よ、前進』より『夜』でした。


5曲目は、『小さい3つの部分の絵』でした。スヴィリードフの音で、聴いているだけで、心が穏やかになります。鐘の音が、またいいんです。
これも、生で聴けて、感無量でした。


2曲目の管楽器の重厚な感じは、生で聴く方が断然いいです。


3曲目は、ピアノの音がかなり聞こえるので、ピアノの方ばかり見ていました。
いつも録音や動画で聴いていたこの曲を生で、しかも、ソビエト時代からピアノを弾いている人の演奏で聴けたので、感無量でした。

朗読では、スヴィリードフの息子さんが岡山から出した手紙に対する返事が読み上げられました。
家に帰ってから手紙を見ると、スヴィリードフさんが書いた通りの文面を読み上げたのではなく、少し単語の順番を入れ替えたり、省略したりしたものでした。

6曲目は、『時よ、前進』より、『ウラルの曲』でした。


7曲目は、『時よ、前進!』より、『時よ、前進!』です。
これは、CDやYouTubeでは何度も聴いたことがあるし、ピアノの部分は練習しているけれども、生で聴くのは初めてでした。しかも、フェドセーエフさんの指揮で、ソビエト時代から演奏をしているピアニストとスネアドラムの演奏です。
スネアドラムの奏者は、この曲のときだけ、ピアノの横に行きました。ピアノの隣にスネアドラムを置いたので、響きは、今までと違いました。私の席は、平土間で全体的に音の良しあしは分かりにくいところだったけれども。

スヴィリードフさんが、ダーチャへ行く前に1時間で作曲した曲です。


そして、休憩になりました。トイレに行き、帰りに、楽屋口の扉を確認しました。扉には、カードキーをかざすものがあったので、これは、終演後に楽屋に行くのは無理だと思いました。

オーケストラが舞台に入場してきているタイミングで、開演に遅れてきた若者のカップルが戻ってきました。その前に、2人の席のところに、1部にはいなかったおばちゃんが座っていると思いました。
なぜ?と不思議でした。
若者が、彼女に「席は何番だった?」と訊いています。
彼女が「〇番だよ。」というと、若者が、おばちゃんに向かって、「そこは、俺の席だ。」と言いました。
私も、心の中で、そうだ。若者の席だ。若者頑張れと思いました。私がロシア語が流ちょうであれば、援護射撃をしたかったくらいです。
しかし、おばちゃんは、「ここは、私の席だ。」と言います。嘘つけ。さっき、あんたはいなかったでしょと心の中で思いました。若者頑張れ。
すると、すぐに、ホールの職員がとんできました。ホールの職員にチケットを見せる若者。嘘をつくおばちゃん。ホールの職員におばちゃんの席は、「あっちだ。」と言われて、やっと動いたおばちゃん。図々しいおばちゃんでした。
平土間席で、高い席だから、指定されたところでないところに移動する人がいなくていいと思いましたが、休憩後に目の前でこういうことがありました。

気を取り直して、2部は、『吹雪』です。
ピアノに編曲されたものをすべて練習しているので、音楽は頭に入っています。

1曲目は、『トロイカ』。
映画では、雪原をトロイカが走る時に流れる曲です。
この撮影は、ウラジーミル州で行われていて、私がロシアで生活する覚悟を決めた雪原です。
どこまでも雪原が続き、隣の集落までそんじょそこらの距離ではありません。なかなか会えない距離で、日本と距離感覚が全然違うところです。
そして、フェドセーエフさんは、この『吹雪』の演奏をたくさんしているので、指揮を振るのもものすごく生き生きしています。
ピアノと違って、オーケストラの演奏はやっぱりいいなと思いました。


2曲目は、『ワルツ』。
91歳のフェドセーエフさんなので、テンポは昔に比べてゆっくりでした。でも、何か安定していていいなと思いました。


3曲目は、『春と秋』です。プログラムの解説を読んでいて、秋は、1日で作曲したようです。


4曲目は、『ロマンス』です。
ピアノの演奏がかなりあるので、ピアノにくぎ付けでした。そして、この曲を聴きながら、そういえば、大学の時の先生のレッスンで、この曲を弾いていたら、先生のご両親が2階から1階のレッスン室に降りてきて、聴いて下さったのを思い出しました。たしか、お父様の方が先に降りてきて、聴いていて、その後、お父様を探して、お母様が降りてきて、聴いて下さったと思います。そのときに、お母様が「涙が出てくるね。」と話していたのを思い出しました。
先生のご両親に聴いていただいたのはこの時が最後です。その後、お父様は1年後に亡くなり、お母様は、現在100歳ですが、耳が聴こえません。
コンマスのソロの部分がありますが、私が好きだったコンマスの演奏ではないので、そこは、やはり残念です。もちろん、今のコンマスも上手ですが、前のコンマスの独特の音が私は好きでした。


5曲目は、『牧歌』です。
映画では、スズダリで撮影していて、私が好きな町の景色が印象的です。演奏を聴いていたら、その情景が目に浮かびました。


6曲目は、『戦争マーチ』です。
ナポレオン戦争から、兵隊が戻ってきたときに流れる時の音楽です。
私の席からは、スネアドラムの姿が見えなくて残念でしたが、音をしっかり聴きました。フェドセーエフさんのお姿をしっかり見ようと思い、スネアドラムが見えるかどうかを忘れていました。


7曲目は、『結婚式』です。
これも映画のシーンが思い浮かびます。


8曲目は、『ワルツ(エコー)』です。
私が好きだったコンマスは、2020年8月に亡くなってしまったので、現在のコンマスが弾きました。やっぱり前のコンマスの音の方が私は好きです。


9曲目は、『冬の道』です。
映画では、エンディングで流れますが、やはり雪原をトロイカが走っていくところです。

やはりスヴィリードフの演奏はフェドセーエフさんの指揮が一番です。

スタンディングオーベーションになりました。

アンコールは、チャイコフスキーの『白鳥の湖』から『スペインの踊り』です。
このときのフェドセーエフさんは、楽譜を見ず、椅子にも座らず、立って、指揮を振りました。
躍動感あふれる素晴らしい演奏でした。

休憩中に見た楽屋口方面の出口から出てみました。すると、すでに、少し人だかりができていました。
休憩中に見かけたアジア人女性もいます。日本人かな?と思いましたが、連れの男性がいて、その人と中国語で話していたので、中国人だと分かりました。
楽屋口のドアが開き、待っていた人たちがぞろぞろ入っていきました。中国人の次になると、アジア人が続き、印象に残りにくくなる気がしたから、あえて、ロシア人に先に行ってもらいました。
舞台袖からの景色を写真に撮り、

その後、スネアドラム奏者を見かけました。声をかければよかったけれども、フェドセーエフさんに会いに行く列を見失わないように、スネアドラム奏者に話しかけませんでした。
楽屋の前に先ほどの人たちが集まり、ドアが開くのを待っていました。
ドアが開いて、順番に中に入って、行きました。中国人となるべく離れるように、順番を調整し、中国人のあとロシア人を2人挟んだところに並びました。
中国人たちは、CDをたくさん持ってきて、サインを求めていました。フェドセーエフさんは、もう手が震えているので、サインをたくさんしてもらうのは申し訳ないと思うし、私はすでにサインを持っているからお願いはしませんでした。

中国人が終わった後に、マネージャーさんなのか、女性が上着を着せました。

その後、ロシア人たちは、握手をしながら、感想を伝えていました。

私の番になったので、ロシア語で「こんにちは」と言いました。
すると、フェドセーエフさんは、立ち上がりました。やっとこさ歩いているので、他の人の時は、ずっと座って対応していたのに、私の顔を見たら、立ち上がりました。
そして、日本語で「こんにちは」と言いました。
素晴らしい演奏だったから、お礼を言いたくて、楽屋に行き、この時は、なぜかスラスラとロシア語が出てきました。
そして、「6月に日本でコンサートをするよ。」と教えていただきました。
写真を一緒に撮ってもらいました。上着を着ているので、シャツの時よりも断然いい感じになっています。
ものすごくきれいに撮ってもらいました。

1月に読んだnoteがきっかけで演奏会に行きましたが、素晴らしい演奏を聴くことができ、お礼も伝えることができ、本当に良かったです。

そして、スヴィリードフの研究を早くすすめたいです。

家に帰ってきて、フェドセーエフさんの日本公演の情報を調べたら、2025年6月にN響と共演します。

2025年6月7日(土) 午後7時開演 NHKホール


2025年6月8日(日) 午後2時開演 NHKホール





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