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星々の昔話 ~エピソード1~

●宇宙。彼方に太陽系が見える。
紅い星「あら、あなた新顔ですわね。生前は何を?」
蒼い星「どうもこんにちは。いやぁ、お恥ずかしい。うだつの上がらない政治家をしておりました」
紅い星「まあ、政治家の先生!偉いのねぇ」
蒼い星「いや、最初はそうだったかも知れませんがね…」
紅い星「と言うと?」
蒼い星「最初はいきがってましたよ。腐敗したこの国を変えてやる!とね。…。しかし、何度も選挙に落ち、選挙に落ち、を繰り返して…」
紅い星「それは苦労されたのね…」
蒼い星「いや、とうとうそんな現状に耐えられなくなって、腐敗した与党にすり寄りましたよ」
紅い星「まあ!」
蒼い星「そこで僕はごますりと嘘を重ね、その功か、そこそこのポストを任されるようになりました。しかし結局は汚職によって、干されましてね…」
紅い星「あら!」
蒼い星「その間もなくですかね。ガンも見つかって…。そしてここに至ります」
紅い星「それはご苦労されたのね…。でも私も同じようなものです」
蒼い星「あなたは生前何を?」
紅い星「フランスのバレリーナでした。革命が起きる前の」
蒼い星「それは素晴らしい!」
紅い星「当時のバレリーナは今と違いまして、卑しかったのよ…。パトロンに媚びと体を売って、舞台に立っていました」
蒼い星「それは…」
紅い星「それを上手くやって、売れっ子になった私でしたが、仲間内から嫉妬をかいましてね…。ある日、階段から突き落とされて、治らぬ怪我を負いました」
蒼い星「なんと…!」
紅い星「バレリーナとして、使い物にならなくなった私は、パトロンの愛人になりましたわ。それでものたれ死ななかっただけ、まし」
蒼い星「それは、お辛い人生でしたね…」
紅い星「お互い様ですわね…。でも貴方には見えないかしら?あなたは今、とっても美しい星よ。まるで深い海みたい…」
蒼い星「本当ですか!?そういうあなたも綺麗な星ですよ!まるで輝くルビーのようだ!」
紅い星「本当ですの?嬉しいわ!自分では自分が見れないものですから…」
蒼い星「それは僕もです。なんで汚れきった自分が美しく見えるんだろう?」
紅い星「さあ?あなたの心根を表してるのかも…」
蒼い星「そうでしょうか…。地球からでも、僕たちは美しく見えているでしょうかね?」
紅い星「きっとそうでしょう。小さくともね…」

#シナリオ
#小説
#イラスト

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