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アマガエルセラピー 07

怒りのヘッドバット

 普段はほのぼのとしているカエルも、ときたま怒ることがあります。先に手が出るタイプみたいで、カッとなる相手にいきなりヘッドバットを食らわせたりします。

 初めて見たときは反射的に「仲よくしなきゃダメでしょ!」と注意しましたが、それから何度も出くわすことになり、もう慣れっこです。実は何を隠そう、修羅場の原因を作る張本人なので。しかも、わざとそうして一連の流れを面白がる悪趣味な私です。

 よく一緒にいるカップルもどきのDV的なドラマ。たいてい気性が激しいのがオスで、メスはおっとりしています。カエルにとって餌をもらう順番は死活問題なのでしょう。オス、メスの順なら波風は立ちませんが、最初にメスにあげると、オスは「それ、オレがもらうぶんだろ!」といわんばかりに、怒りのヘッドバットを炸裂。メスは大慌てで後ろに飛び跳ねて逃げる羽目になります。

 何度か食らって学習したメスは、次第に警戒するようになります。給餌を察知したら、あらかじめ安全な距離を確保したり、餌を口に入れるやいなや隣の枝に飛び移って攻撃をかわしたり。カエルは賢いなあ、としみじみ思う瞬間です。オスと違って自分の番が来るのを静かに待てるし、やはり一回り大きなメスのほうが大人な対応です。オスを子ども扱いしているのが見受けられます。

 そんなカップルもどきですが、餌の時間以外は仲よしです。くっついて休むかわいい姿を撮らせてもらったり、きたるべき本番の予行演習なのか、メスの上にオスが乗っかっていることがあります。オスはロデオ張りに得意げで、メスも嫌がってはいません。でもたぶん、この2匹が本物のカップルになる可能性はかぎりなく少ないでしょう。

 これまでカップルもどきが同時にいなくなったことはありません。たいていメスが最初に田んぼに呼ばれます。カエルの世界も初恋同士はなかなか結ばれないようです。

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