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アマガエルセラピー 06

縄張りと寅さんカエル

 保護したカエルがそのまま楽園にいつく定着率は半分程度です。すぐにいなくなってしまうのが3割。いなくなっても餌をもらいにときどき帰ってくる、放浪者のようなタイプが2割います。ほぼオスなので、たぶん縄張りが関係しているのでしょう。寅さんカエルと呼んでいます。

 チビガエルの時期を過ぎると、オス同士でつるむことがなくなり、最低1メートル以上離れて決まった居場所を確保します。日中はそこでのんびり休んでいますが、自分の縄張りに侵入者がいないか目を光らせているようです。手に乗ったオスを別のオスのそばに近づけると、磁石が反発するようにどちらも嫌がります。

 ベランダのサイズ上、縄張り的にオス4匹がマックスで、同時にそれ以上いたことはありません。寅さんカエルになるのは縄張り争いに負けた弱いオスだと、てっきり最初は思っていました。しかし次第に、どこでも生きていける強くて優しいオスが自ら身を引くのだと思うようになりました。弱っている新入りと入れ替わるように、元気になった子が出て行くケースがよくあるからです。

 一方、縄張りに無頓着なメスはストレスも少なく、自由気ままに活動します。オスもメスが近くにいるのは全然気にしません。ずっと一緒にいるカップルもどきもいます。メスのほうがおしなべて体格がいいので、オスを従えている感じに見えます。アマガエルに生まれ変わるなら、断然メスを希望です。

 春先に生まれたオスは夏の終わりから、あごの下にある鳴き袋を風船のようにふくらませて、けたたましく鳴くようになります。雨が降る前にかぎらず、鳴きたいときに鳴きます。本番でライバルに負けないように発声練習をしているのでしょう。鳴くのはオスだけなので、性別を取り違えていたのが判明することもあります。わかっているようでわかっていないことに気づかされます。

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