自販機偏愛歌

自動販売機が好きだ。
まず、だれともコミュニケーションする必要がない。
町のいたる所にあるし、夜は光る。
深夜でも明朝でも変わらず営業してくれる。
ラインナップは多種多様。Cランクから星5までガチャ要素もあって射幸心を煽り立てる。
それになんとハズレなし!排出率は100%だ!

味も種類もブランドも様々、値段はお手頃。
知らない味を見かけたら心が躍る。
それに同じやつでも値段が違ったりする。
コレクション要素がすごい。自分だけの地図が作れる。

そして心に決めた『相棒』を、なけなしの小銭で購入。きみのために20軒ハシゴしたよ。

そして手のひらで感じる温かさ、あるいは冷たさ。
ガラス瓶の輝き。重さ。
ペットボトルの質感。透明感。もたらす涼しさ。
缶の滑らかさ。磨き上げられた加工技術と金属細工。

硝子製の壜がその辺に投げ捨てられている。
ここが天国じゃなきゃなんだって言うんだ。

むかしのひと

小賢しげに書かれたアピールの文章。
成分カロリー塩分糖分。そしてカフェイン。

飽きるまで眺めよう。飽きたら味わおう。
ねじる。回す。あるいは引き抜く。
鼻に近づけて香る。舌にのせ味を確かめる。
思い出の味と比べる。浸ったら、次はどちらを思い手にするか選ぶのだ。

そして僕は満足し、また次の自販機を探し求める。
そして明日も歩くのだ。