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京アニの不自然な過剰さ【リズと青い鳥】

飲み会での会話

「百合には男向けと女向けがある」
(きっとこの用語はもっと広く、深く考察を進めるにしたがってもっと妥当な言葉に置き換わっていくことだろう。現時点での雑な二項分類を許してほしい。)

「男向けとは?エロいことだ。どエロいことだ。女キャラはエロい。理由は平易。論理は単純。二人いれば二倍エロい。つまり最強というわけだ。」

「それに対して女向け百合とは?(改めて聞くと変な言葉だな)関係性だ。どろどろ、メンヘラ、激重、鬱屈、嫉妬、才能、願い、継続、永遠、成長、束縛、自己矛盾。そういったとにかくめんどくさいやつらがめんどくさい関係をめんどくさく紡いでいこうとする姿を見て悶える、それが女向け百合厨なのだ。(やっぱこの言葉使いたくねぇなぁ…)」


この会話をして、気が付いた。なぜ今まで「百合好きだよ」とかヘタ面でぬかしやがる連中と俺が会話の合わなかったのかを。

あいつらは百合に何も求めちゃいなかった。口を開けばTwitterで100億回見たような定型文を恥もなく大声で喚き散らし、アニメを見れば尊い尊いと大声ぎゃあぎゃあしたり顔の独りよがり。「オレサマは”あの”オタクサマなんだぞ!!」とでもいうような見るに堪えない穢い部分のコレクティブ。さんざ悪口を並べ立てたが、至極簡単にまとめると”百合の間に挟まる男を絶対に許さない”と言いつつアタマに(俺以外の)がついてることがバレバレ駄々洩れ言行不一致非常事態宣言野郎のことだ。オツムにオムツとアルミホイルでも巻いといてくれ。
俺は許せない。こいつらが、だ。自分で新しい表現を作り称えることもしないで何が尊いだ。他人の言葉で褒めるなよ。それはお前の呪文じゃない。なにがリコリコだ。水星だ。ぼっち・ざ・ろっくだ。お前らはアニメのスクリーンを見てなどいない。手元の小さな板の画面で知能お揃いのオナカマさんとブヒブッヒしとけよ。安易にウケ狙いでルイズコピペを貼るな。俺は初めてそれを見たとき感動したんだ。人は感情で伝説になれる。先人の叫びをてめぇが汚すな。そのテキストは劣化せずとも腐敗した。てめぇらが汚したんだ。


俺はリズ鳥を見て、京アニという言葉を理解した。京アニという、みんなが使っている言葉。それを俺の世界にようやく迎え入れることが出来た。
みぞれ。彼女を描く為。そのためだけに存在していた概念だ。俺は知らなかった。京アニ?ああ炎上したよね。この言葉を友達に言ったとき、俺は殴られた。あいつの顔も感情も忘れられない。とりあえず、まずいことを言ったことは理解した。世の中には言ってはいけない言葉、というのもあるらしい。それも理解した。不謹慎という言葉に出会ったのはその時だったのかもしれない。ネタにもならない黒歴史。ふざけてた、なんて?本当はこんなこと、今でだって語るべきじゃなかったのだが。それ以来、京アニという言葉は俺の中で触れてはいけないものとして閉じられていた。

京アニの描く絵が、雰囲気が、透明感が苦手だった。映画みたいな、だなんて言わせたいんだろ?って感じ。わざとらしい過剰さが苦手だった。何を見てても絵が目に障る。絵が、構図が、シーンカットがもってまわった才能の押し付けのようで。それらは全てノイズに映った。何を描きたいんだ?物語を踏み台にして制作が主人公になる傲慢さが嫌いだった。京アニが放火されて怒るやつがいる異質さが嫌いだった。逆恨みかな?嫌いだった。

だが、”それ”はその限りではない。


「リズの青い鳥」

それを見た。自分が間違っていたのかもしれない。
みぞれ。そのはかなさ。少女。感情を知らない少女。感情を持ってる少女。感情を隠せない少女。感情のわからない少女。
彼女を描く。その世界はそのためのもので。
合っている。そのためにある。京アニ。これのためだったのだね。
もう言葉を尽くしても、尽きても、彼女は文字には宿らなかっただろう。だが、そこにはいた。完全で究極の世界だ。彼女のための物語で、彼女のための京アニで、彼女のためのアニメーションで、彼女のためのこの世界だった。
すべてがそのためにあったと言いたい。京アニ。
細い線、髪の色、目線、視線、しぐさ、姿勢、ゆらゆら、ふわふわ?でもぽわぽわではなくて。触れたら融ける。夏の日にギリギリとけてないアイスコーヒーの氷?線の細い綿あめ?例えられない。あこがれの人がいて。隠してなくて。知られてるけど目立ってはなくて。その関係でいいと思っていて。変えたい?逃がせない?自覚はある。もちろんバレてる。でもずるいから。ずるいんだよ。この関係に言葉はむしろ暴力だ。完璧はすでにそこにある。そう、京アニだ。俺たちはこうして、遠慮なく壁になれる。壁になって、その世界を見守れる。俺たちはその世界に存在していない。ああ、また非存在に感謝するものが増えた。何もしなくても、彼女たちは前に進む。互いを必要としない方向へ。だがそれは自然ではなく、不自然を通って、やはり自然なのだろう。存在しなくてよかった。

うぐぐ。これがリズ鳥を見た俺の感想。これ以上はもう出てこないや。


結論、京アニが苦手なやつほど見ろ!


・すぺしゃるさんくす!