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「美輪様の千里眼」

わたしの住んでいる市には小振りながらも素敵なホールがある。
落語家さんや演歌歌手の方、渋いアーティストなどが講演会やライブを開催するので、市民としては嬉しく思っている。
今から20年前のこと。
美輪明宏さんが音楽会を開かれるということで、これはチケットを取って観に行くしかなかろう、よし。オーラを浴びよう、あやかろう。
努力の結果、会場の丁度真ん中ぐらいの席が取れた。
何を着ていったら良いのか、考えに考えた結果、失礼の無いようちょっとシックな黒のワンピースを着て自転車でホールに向かった。
ホールに足を踏み入れたら、わたしの母の世代かなと思われるご婦人達がオホホ(わたしにはそう聴こえた)オホホと談笑していた。
あれ?わたし場違いかな?
でも、美輪様が唄うなら鑑賞したいのだもの。
パンフレットを購入して自分の席に座り、開演の時を待った。
見事に若者はおらず、みなマダム、お金持ちそうなファッションに身を包んでいるご婦人に囲まれてわたしは肩身が狭かった。周りがなんだかきらびやかであるなぁ。
舞台に美輪様が現れた瞬間鳥肌が立った、これがオーラの波形なのか。
唄とお芝居とで魅了してくる美輪様。独りで舞台に立っていても滅茶苦茶大きく感じられた、存在感の大きさよ。
途中、美輪様が観客に向かって話しかけてくださった。
「最近の若い人はカラス族と言って黒い服ばかりを着ているけれど、若い人にこそ明るい装いをしていただきたいものです。」(というようなことを話された。)
美輪様、ひょっとしてわたしに仰ってる?
ピンクの洋服とか着てくれば良かったのか?持ってないよ〜!あー、しくじった!!洋服選択ミス!会心の一撃!
わたしは美輪様の千里眼に驚いた。
眼があったように感じたが、それは妄想か?
舞台上で美輪様は優しく微笑み、神々しかった。優雅でドレスも華やかで美しかった。
心の中でじたばたしながらも、よしこれからは明るい色の洋服も着てみようと決めた。
あの美輪様のお話を20年たった今も覚えている。もう若くはないかもしれないが面白いカラフルな服を着れるのは美輪様のおかげである。
ありがたや〜。

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