東大生が東大を訴えてみた【第0回】(4/17追記)
下駄です。
4月から農学部に進学しました。これでまた留年できますね。
東大を訴える
今回は東大を相手に裁判を起こしてみようと思います。
なんで訴えるんかい! という疑問にはあとで詳しく答えますが、簡単に言うと大学が送ったメールを見せてくださいねという裁判です。
ここでは、法律知識ゼロの理系大学生が裁判を起こしたらどうなるのか? そもそも裁判ってどうやってやるのか? について検証し、読者の皆さんの教養にプラスになればということで、連載していきます。
第1日目
霞が関ちほー
というわけで、とりあえず裁判所がある霞が関にやってきました。
内幸町駅から10分くらい歩くと「裁判所」と書いてある建物がありました。ここに違いありません。
手荷物検査を受けて入館します。
「申し立て手続き案内」と書かれた部屋に行き、「こういう裁判を起こしたいんだけど」と説明します。
事務官「あ、『行政事件』は地裁に行ってくださいね~」
はて、ここではない?
今回の被告は国立大学法人東京大学です。国立大学法人は行政庁なので、東大の行為の適法性について争う場合、民事訴訟の中でも「行政事件」にあたります。
行政事件の第一審は地方裁判所で行うことと定められていました。間違えて簡易裁判所の方に来てしまったようです。
地裁は隣の建物ですが、簡裁と地下でつながっているため、手荷物検査をもう一度受ける必要はありませんでした。
地裁の地下には食堂がありました。役所あるあるですね。市区町村役場を塗っているオタクはたくさんいますが、役所の食堂を全部回るというのも面白そうだし新規性がありそうです。
気になる値段は東大の学食と同じかちょっと安いくらいでした。量を見てみないとなんとも言えませんが。
営業時間は1100-1400。ぎりぎり間に合いませんでした。
そういえば普通に食堂の写真撮ってたけど、これって裁判所の敷地内だから本当はダメかもしれません。裁判所職員にもあすけんを使う権利を!
さて気を取り直して申し立てに行きます。
民事訴訟の申し立ては「民事訟廷事務室事件係」というところで行います。地裁の14階です。そういうのって普通は1階にありそうなもんだけど。
簡裁の受付もそうでしたが、待ち時間ゼロで受付できました。
事務官「『取消訴訟』ですね。『訴額』は1件につき160万円です。」
「取消訴訟」とは、行政処分を取り消すことを求める裁判です。
今回は筆者の「メール見せて」という請求に対して東大が「お前には見せないよ」と言ってきています。法人文書不開示決定通知書というのが送られてきました。この不開示決定が「行政処分」なので、裁判で強制的に開示させようとするのは取消訴訟にあたります。
「訴額」とは「訴えをもって主張する経済的利益」のことです。これによって裁判の手数料が変わってきます。
民事訴訟では財産権上の争いが基本的に想定されているようです。ブルジョワ法の下では、財産の私的所有を筆者のような”ならず者”から保護することが国家の第一義的な任務なので、当然っちゃあ当然です。
しかし、今回は「行政処分の取消」を主張しています。財産権上ではない争いについては、一律で160万円扱いになるようです。
今回は2件の処分取消を主張しているので、訴額は320万円ということになります。
訴額320万円の手数料は……2万1000円?! 高っか!!!
筆者は永遠の14歳なので財布には1万4000円しか入っていません。クレカの引き落とし直後なので、口座にもあるか怪しいところ……。
事務官「あ~、それから被告が法人ですから、『資格証明書』を持ってきてください。」
「資格証明書」は何者だ? 全く知らない言葉が出てきました。
事務官「法人の代表者がわからないと訴訟を申し立てることができません。法務局でもらってきてください。」
「資格証明書」とは法人の代表者や所在地が登記されている文書のようです。
いやいや。国立大学法人の代表者は総長でしょ? 藤井輝夫総長。
うーん、なるほどね? 裁判所では当たり前のこともいちいち証明する必要があるわけですね。ここは従いましょう。
というわけで裁判所をあとにして法務局に向かいます。簡裁に間違えて入った時点から数えて30分くらいで終わりました。何も終わってないけど。
霞が関には法務局が無え!
最寄りの法務局は……九段下の東京法務局です。
なんで霞が関にないの? バカなの?
昼飯は神保町のボンディで食べました。
邪神ちゃんドロップキックの聖地です。ビーフカレー1600円。邪神ちゃん結構いいもん食ってんなオイ。
東京法務局はボンディから歩いて10分かからないくらいでした。
資格証明書は3階の窓口でもらいます。
証明書発行請求機という端末が並んでおり、そこで法人の名前や法人番号から請求して、窓口で受け取るという流れです。
発行も一瞬ででき、手数料の収入印紙を買っている間にもう呼び出されていました。
渡された資格証明書がこちら。
「代表者事項証明書」と「履歴事項全部証明書」とが選べましたが、載っている情報としては履歴事項全部証明書の方が完全上位互換なので、そちらにしておきました。
国立大学法人化が行われた2004年の4月一日が法人設立となっています。
うだうだしていたらもう16時です。
訴状を書いて17時までに提出するのは間に合わないので、今回の闘争はここまで。
なぜ東大を訴えるのか
そもそもなぜ東大を訴えるのか?
始まりは2022年まで遡ります。
筆者のもとに理学部の親友からタレコミがありました。内容は、総務部総務課危機管理チームが理学部に送信し、理学部が学生に転送したメール。
「例年10月に本学に出没する自称アイヌ系団体」とまるでヒグマのような扱いのこの団体、実は危険な団体では全くありません。
ピリカ全国実は、東大・京大・北大などが過去に違法に収集したアイヌ民族の遺骨をコタン=郷里に返すよう求めている団体です。アイヌ民族の当事者と和人から成ります。筆者も常々お世話になっていますが、皆さん温厚な方々です。危機管理チームの描き方は全くもって不当・不適当です。
そもそも、当時も違法だった墓暴きで持ってきた遺骨を今だに返していない東京大学の方が危険な団体です。明治時代の人権感覚をそのまま引きずっているゾンビ帝国大学です。
余談ですが、ピリカ全国実とは別団体ですが「東大遺骨返還プロジェクト」という学生団体もあります。遺骨問題などに興味がある方はぜひご連絡ください。
というわけで、この誹謗中傷メールの出どころをはっきりさせるため、国立大学法人東京大学に対し「法人文書開示請求」を行いました。
「文書開示請求」は国民の「知る権利」の制度的保障としてあるもので、請求により行政庁が保有する文書を開示させることができます。
国立大学法人の場合は、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」の対象となります。
今回は「総務部総務課危機管理チームが送受信したメール『アイヌ系団体』に関するもの」の開示請求をかけてみました。
その結果がこちら。
「該当する文書は保有しておらず不存在」という回答でした。おかしいですね。
気を取り直して「理学系研究科総務課総務担当が受信したメール 2022年9月26日に総務部より送信され、学生に転送したメール その他アイヌに関するもの過去3年分」の開示請求をかけてみました。
その結果がこちら。
「関連する事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、法第5条第4号柱書に該当するため不開示」と言ってきました。
「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」第5条第4号は以下のとおりとなっています。
イは国家機密や外交機密、ロは警察の捜査秘密、ハはなんかそういうの、ニは裁判の証拠になりそうな秘密、ホは未発表の研究などの秘密、ヘトもなんかそういうの、です。
……どれにも該当しなくね?
というわけで筆者は「この裁判、もろたで藤井! 」状態になっています。
(4/17追記)
「柱書」はイ~トのことではなく、
の部分のことでした。
今回は「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」に該当するというのが危機管理チームの主張だと考えられます。
行政訴訟では処分の適法性、つまり「訴えられるようなことはしてませんよ」ということの立証責任は行政側にあるので、その部分をどう立証してくるのか楽しみですね。
(4/17追記終わり)
さらに通知書の封筒にはもう1枚紙が入っていました。
「9月1日付け不開示決定を取消し、下記のとおり『不開示とした部分とその理由』について修正しました」とあります。アイエエエ!
おさらいです。9月1日付け不開示決定では、「不存在」と言っていました。
今回はこれが「不開示」に修正されています。
つまりこれは、「すまん、メールないって言ったけどやっぱあったわ!w サーセンww (まあお前には見せんけどwww )」という意味らしいです。
最初の請求では請求者をナメて文書を隠したが、理学部への請求を受け「こいつ、あのときのメールの存在を知ってるのでは? 」と慌てて修正したようです。
危機管理チームは嘘をついていた。
ふざけるな。
おこです。激おこぷんぷん丸です。
裁判所にも問答無用できてもらいます。
ところで、(不)開示決定に不服がある場合は、いきなり取消訴訟を起こさずに、「行政不服審査法」にもとづき審査請求を行うという方法もあります。
しかし、遺骨問題は総務部が抱えていることからもわかるとおり、総長室案件になっています。また大学横断的な案件なので、文部科学省も関わっています。不服審査をしたとしても実質的に得るものはないと考え、ここは飛ばしましたが、この判断がベストかどうかは正直わかりません。
というわけで冒頭に戻ります。
次回予告
次回は実際に訴状を提出します。お楽しみに。
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