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虫嫌いが田舎暮らしをするために


虫が苦手です。
地方へ移住します。

虫が苦手です。
家庭菜園をやりたいです。

矛盾していると言われそうです。
虫嫌いに田舎暮らしは無理ですか?

横浜のマンションから山形の一戸建てへ。
ポツンと一軒家ではなくとも、確実に今よりは虫さんたちとお近づきになるだろう。

そういえば先週、桜が満開の爽やかな朝にカメムシを洗濯してしまったのだけど、あれも多分、週末に行った山形から連れて帰ってきちゃったんだと思う。 

だって横浜では今カメムシ見ないもの。こっちでは、私が設定する「カメムシ警戒期間」は11月だ。あの時期は洗濯物を取り込む時に細心の注意が必要だけど、今(桜の時期)は警戒期間外だ。

そして、山形に行ったときに見たんだもの。うちのベランダで見るちっちゃくて緑のやつとは違う、もっと大きくて黒くて風格のあるカメムシを。

洗濯機の底に残っていたシルエット(あえてメガネで凝視することはしなかった)も、まさにそれだったんだもの。

(ちなみにそれを見つけるまでもなく洗濯機のフタを開けた瞬間に、自分が何をしてしまったかはわかります)

以前の私なら半狂乱だ。1ヶ月くらいはカメムシの夢を見るに違いない。

でも今回は半狂乱にならなかった。(4分の1狂乱くらいにはなった)


その理由のひとつは、満開の桜が全部チャラにしてくれたということ。


もうひとつは、私の虫さんたちに対する目が少しずつ変わってきているのだと思う。

今までは(まあ今でもまだ)部屋に虫が出ようものなら、その侵入経路を徹底的に洗い出し、対策を打つような生活をしていた。

その一方で、自然と切り離された都会の生活(本当は切り離されているのではなく自然を見ようとしないだけ)に違和感や危機感を感じていた。
なんという矛盾。なんという身勝手。

でも「虫が怖い」のは、それが家の中にいるからだと思うのだ。そこにいるべきじゃないからびっくりするし困るのであって、いるべきところにいたら驚かない。

リビングにセミがいたら心臓止まりそうになるけど、街路樹でセミが鳴いてたって「7日間頑張れよ」とか「ああ、もうツクツクボウシか」と思うだけ。

自然界にいるものが「クリーンであるべき自分のテリトリー」にいるから、怖い。

メキシコに住んでいたときはよくそういうことが起きた。いろんな生き物が家の中に出没した。便器の中にヤモリ(だかイモリだか)の家族がいた時は家中パニックになったけど、それは出会いの場所が家のトイレという、まさに「自分のテリトリー」だったからであって、出会いが自然の中なら私はヤモリは怖くないしカエルもさわれる。

いるべきところにいるなら、あまり怖くない。

逆に、そこにいてくれなきゃ困るものなんだ。感謝すべきものなんだ。
最近そう思うようになった。


移住後の家庭菜園実現に向け、YouTubeで自然農についての動画を見ている。「そーやん」さんのチャンネルはとてもわかりやすく、学びも多い。ありがたい。

その中で「害虫大量発生の本当の意味とは何か」を解説する動画があった。

ある白菜に大量発生したアブラムシ。なぜこの白菜だけについているのか。
それは、ここにだけ栄養が偏っているから。ここが栄養過多だから。
基本は自然農の畑だけど、そこだけ牛糞堆肥が入っていた。窒素過多。アブラムシはその窒素で作られるアミノ酸が大好き。その白菜は堆肥の力でハイスピードで育ったけど、アブラムシが大量発生した。また、それを食べるテントウムシも来る。

さあ、アブラムシを駆除しなければ!ということではない。
実はアブラムシは大事な作業をしてくれている。
それは畑の中で集中し過ぎた栄養を、周りに分配するという仕事。

水が高いところから低いところへ流れるように、栄養も高いところから低いところへ。エントロピー増大の法則。

全体のバランスを整え、全体を豊かにする。そのためにアブラムシはしっかり働いてくれている。

自然農では、野菜を育てながら土を育てる。野菜という一部を見るのではなく、畑という全体を見る。畑の地力こそが資産。
虫を退治するだけでは根本解決にはならない。


生命の一部だけを見ることの危険さ。

レイチェル・カーソン「沈黙の春」や
福岡伸一先生の「動的平衡」をはじめ数々のご著書。
今まで読んできたこととしっかり重なる。

様々な方の知見を分けていただけることは本当にありがたい。こうした学びのおかげで、私の虫さんたちに対する目も少しずつ変わってきたのだと思う。感謝。


とはいえ、やっぱり家の中ではあまりお会いしたくないのだが。

畑でミミズやアブラムシに会ったときは「よう、今日もご苦労さま」と言えるようになる気がしている。
多分、ビビりながらだけど。

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