脳卒中の診方から味方になるために



PTとして患者さんを担当する上で避けて通れないのが脳卒中の患者さんです

脳は複雑で良く分からない

どこにどうアプローチしたら良いのか分からない

このような苦手意識を持つ若いセラピストは多いのではないでしょうか


今回はそんな皆さんに少しでも脳卒中に対するイメージを変えてもらえるように僕の臨床経験とすぐに導入できる知識・技術を話したいと思います。


脳卒中の診かたをマスターして脳卒中の味方になりましょう!


なぜ脳卒中をみるのが苦手なのか


脳卒中に対して抱く苦手意識は

どこからみたらいいか分からない

何をみたらいいか分からない

機能障害をどう考えたらいいのか分からない

といった不透明な感じの印象を持っているからだと思います


僕も臨床に出た頃は同じようにどうしたらいいのかと悩んでいました

学生時代も実習では整形外科の患者さんしか担当したことなかったので余計に苦手意識が強かったです

そんな苦手を克服するために、まずは「分からない」を一つずつ解決していきましょう


まずは障害学のおさらいで

以前に書いたnoteでもお話ししましたが

ICIDH、今回もこれを使用しますので知らない方や分からない方はもう一度復習しましょう!

疾患により構造的、機能的な損失が起こります。これを機能障害(impairment)と言います。PT、OTの治療対象となる部分です。

機能障害により引き起こされる動作レベルでの障害を能力低下(disability)と言います。

機能障害、能力低下によって自宅退院困難やADLの狭小化などその人に起こる社会的な制限を社会的不利(handicap)と言います。

まずはこの障害モデルを頭にいれて以下の記事を読んでください。


脳の構造と機能を理解しよう


なぜ脳はこのような形をしているかご存知ですか?

脳は元々胎児から発育する過程の中では一本の太い神経線維です。イメージとしては子供の日に食べるちまきみたいな感じです(笑)

発生学では脳は外胚葉ですが頭蓋骨は中胚葉です。先に頭蓋骨が形成されその後、脳となる部分がどんどん細長く伸びてきます。

ちまきのような脳はやがて頭蓋骨にぶつかると次第に折れ曲がってくるっと円を描くように形作られます。これを脳屈と言います。

その為脳は渦巻きのような形をしているのです。

余談はこの辺にして

脳には体部位局在といわれ、各部位で異なった機能を有しているといわれています

各部位と大まかな機能は下記を参照してください。脳卒中になると損傷を受けた部位の機能が不全に陥ります。


脳卒中をみる時に重要なのはどの部位が損傷することでどのような機能障害が起こるかをイメージできるかです。


評価を進めていきましょう


では実際に脳卒中の患者を受け持ったとしましょう。ここでは急性期での話をさせてください

気を付けることは3つです

患者さんの状態を把握(病態把握、リスク管理)

機能障害の程度を把握

可能な理学療法を優先順位を決めて選択する


脳卒中に限らずすべての患者さんに言えることではありますが特にリスク管理や理学療法の選択にはある程度の経験と知識を要します。


まず患者さんの状態把握ですが

発症日と経緯

Drによる処置、治療の確認

入院前のADL

全身状態

これらは事前に情報収集しておきましょう。

発症日は現時点で病態が安定しているのか、もしくは不安定で進行しているのかを判断する為です。経緯を知るのはリスク管理につながります。

経緯というのはどのような原因で脳卒中に至ったかです。

これをみると分かるように脳卒中とは脳で起こる血管の病気です。ですから循環動態と密接な関係を持っています。高血圧が背景にあるならば血圧管理が必要ですし、不整脈が背景にあるならば心電図、心拍数の管理は必須です。

Drの処置は降圧剤や抗血小板薬の使用状況、開頭減圧術などをされていれば術後の禁忌事項の確認などが必要です。

入院前のADLは予後予測に必要です。元々寝たきりや車イス生活の方が脳卒中を契機に歩行できるようになることは難しいですし健常者の方でも脳卒中の度合いによってどこまで動作が自立するのか予測することが重要です。

発症後の全身状態は特に気を付ける必要があります。脳卒中後は交感神経が優位になりそれだけで血圧、心拍数が上昇します。無理な早期離床や運動療法の実施は病態をより悪化させる恐れがありますので注意が必要です。

次に機能障害の程度を把握しましょう

まず機能障害には疾患から直接起こる一次性の機能障害と、一次性機能障害に沿って起こる二次性の機能障害があります。PTの治療対象となるのは二次性の機能障害です。

これらを参考に担当患者さんではどの機能障害があるのか検査します。検査する上で注意しないといけないのはこの機能障害には階層性があることです。

要は意識が朦朧としている人に感覚検査をしても精査できませんし、高次脳機能障害なのか意識障害なのか精神障害なのか判別することは困難です。

そういった時は可能な範囲で検査を進め、病態の改善に合わせて随時検査をしていきましょう。ポイントとしてはどの検査も毎日同じ質問をすることです。それによって日による変化を知ることができます。

運動麻痺が如何に回復してきているかを見抜けるかが重要です。Brunnstromの運動検査による回復段階を参考にしてどこまで麻痺が改善しているかを常に把握しましょう。

検査と同様に治療も選択して今出来ることを優先してする必要があります。

問題点=機能障害を挙げる上で優先順位を決めなければいけませんが

基本的には

生命の危機

高次な問題

運動機能

の順で問題点をあげます。ですから優先して行うべき治療は全身調整運動になります。全身状態が安定しなければ何もできませんからね。

ベッドアップなどを使い、背臥位から徐々に長坐位に進めていきます。術後や病態が不安定な状態では10°、15°刻みでベッドを挙げていきましょう。

中止基準は主治医の指示、なければアンダーソンの基準を活用しましょう。

合わせて関節可動域運動、意識がある程度清明であれば運動麻痺の回復に合わせて神経筋再教育を行っていきます。

運動機能の改善が治療目的ですがPTの目的は基本的動作の改善です。

動作分析は重要です。特に脳卒中患者は機能障害の程度によっては健常者と同様の動作をすることができません。むしろその方が多いと思います。

動作分析のポイントは3つです。

支持基底面と重心の関係

重力と反力の関係

連続性の欠如

支持基底面内に重心がなければ姿勢は安定しません。逆に重心が一度でも基底面から外れなければ動作は起こりません。ですから患者さんにまず重心を固定する機能と重心を移動させる機能があるかを分析しましょう。

重力と反力をいかに効率よく利用できているかで動作の実用性が決まります。重力に負けてしまえば動作は寝返りも起き上がりも出来ませんし反力を使えなければすぐに疲労を起こしてしまいます。

動作とは運動の連続です。ですから止めてしまっては動作は起きません。動作が途中で止まってしまうということはそこで機能障害が連続性を断っている可能性が高いのです。

このように

動作観察・分析→検査・測定→機能障害に対し治療→再検査→動作観察・分析

と繰り返し評価を進めて患者さんを自立させていきましょう。


予後予測をするときのポイント


脳卒中に限らずどの疾患でもそうですが予後予測は患者さんの今後を決める上でとても重要です。

予後予測を見誤ると患者さんに負担を強いることになりますし、逆に生活を制限してしまう恐れがあります。

予後予測をする上でのポイントは以下の3つです

病態からの予測

麻痺の回復過程からの予測

ADLからの予測

これらを判断材料にして予後予測を行っていきましょう。

まず病態に関しては以下の表を参照してください

基本的には高齢、全身状態が不安定になればなる程予後は悪化します。同様に症状も遷延するようならば予後は悪化すると考えてください。

麻痺の回復過程は一般的に2週間以内に腱反射が最大まで亢進しきれば麻痺は完全回復するといわれています。同時に筋のトーヌスもhyperな状態にあるのが望ましいです。逆に腱反射が亢進していても筋トーヌスがhypoな状態は予後が悪いといわれています。

麻痺の回復は腱反射の出現、連合反応の出現、共同運動patternの出現、分離運動の出現というように回復していきます。

意識障害や高次脳機能障害が重度でなければ麻痺の回復は発症後3カ月までにおおよそ90%以上の回復は完成します。2週間以内に分離運動が一部でも出現していれば独歩の獲得も現実的になってくるでしょう。

ADLからの予後予測は様々な報告が出ていますが二木の予後予測がオーソドックスであると思います。

その他FIM(機能的自立度評価表)の点数が65点が在宅復帰のボーダーラインともいわれています。もちろん患者さんによってボーダーは多少増減することを考慮してください。


まとめ


ここまで脳卒中について色々述べてきましたが大事なことはどのような疾患んの患者さんでも変わりません。

動作や疾患から想起される機能障害を検査・測定で検証して治療対象を明確にする。適応となる治療プログラムを立案し実践、定期的な再評価を行い患者さんを社会復帰に導く

それがPT、OTの職務です

ざっくりと簡単にまとめたものなので分からない所や訂正すべき点もあるとは思いますが良ければ参考にしてみて下さい。

脳卒中の味方になりましょう!!

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