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ひとさじ

 あのね、嬉しかったんだ。嬉しいって思えたことが、すっごく嬉しかった。私、涙が出ちゃうくらい嬉しいって、心の底から思えてるんだなあ、って。

 ずっとずっと、ちょっと苦味が強すぎるコーヒーを飲み続けているようだったけど、ほんとうに、少しだけ、ひとさじのお砂糖を混ぜてくれたみたいな気持ち。でもさ、私ブラックコーヒーも好きなんだよね。なんでこの例えをしちゃったんだろ。

 今月はね、なんとか保った人間のガワを、自分の近くに手繰り寄せたいなって思いながら生きていたんだよ。わりとぺしゃんこになってた心が、なんでか好きだけじゃ満たせなくて、それがすっごい辛かったんだ。
 明日はさ、毎日やってくるわけ。昨日の自分に、「なんてお前は出来ないやつなんだ」って悪態吐いて、でも今日の自分も、明日の自分に嫌われそうだな、って思いながら過ごして、でも少しでもそこから抜け出したくて。今の私に必要なことは、好きじゃ足りなくて、でもなんでか分かんなくて。

 でも、最後の最後で分かったんだけど、今の私に必要だったのは、多分言葉だったんだと思う。今月、少し前に、少し上向きになれたとき、そこにはいつも言葉があった。自分の今を言葉にできたとき、優しくて手触り感のある言葉を届けてもらったとき、そしてようやく好きな人の言葉を見れたとき。やたらと本を読みたい気持ちになったのも、そういうことなんだろう。
 だから、最後、自分自身も言葉にして今月を締めてみようと思う。